子宮頸がんワクチンを問題視した報道は “フェイクニュース” であり、報じたマスコミは訂正する責務がある

 「子宮頸がんワクチンを接種後に健康被害が相次いだ」と扇情的にマスコミが報じましたが、報道された内容自体が “フェイクニュース” だった疑いが強くなっています。

 問題と根拠とされた研究手法が不適切だっただけでなく、ワクチン接種をしていないにもかかわらず同様の被害を発生していることが厚生労働省の研究班(代表:祖父江友孝・大阪大教授)の調査で明らかになったからです。

 

 調査は、全身の痛みや運動障害などが3カ月以上続き、通学や仕事に影響があるとして、昨年7~12月に受診した12~18歳の子どもの有無を、小児科や神経内科など全国の約1万8千の診療科に尋ねた。

 その結果、接種後に症状を訴えた女性は人口10万人あたり27・8人だったのに対し、接種していない女性では同20・4人だった。接種対象ではない男性でも同20・2人いた。

 

 朝日新聞が報じた内容を表で示すと以下のようになります。

表1:健康被害を訴えた子供(12〜18歳)の数
性別接種歴申告者数(10万人あたり)
男子 対象外 20.2 (= 0.0202%)
女子 27.8 (= 0.0278%)
20.4 (= 0.0204%)

 厚労省の研究班による調査結果で今回明らかになったことは「子宮頸がんワクチンによる健康被害」を訴える人々にとって大きな逆風となることでしょう。

 「通学や就学に支障を来たす」として訴えていたのですが、非接種である女子やワクチン接種の対象外である男子にも同様の症状を訴える人が存在することが明らかになったからです。

 

 健康被害を訴える人々が根拠としてきた信州大学の池田教授による研究結果は「何も証明されていない」と既に否定されています。

 「子宮頸がんワクチンによる副作用が原因」というシナリオは科学的に何も証明されていないことは11月の時点で明らかとなり、ワクチンを非接種である男女にも一定数の割合で “子宮頸がんワクチン接種による副作用” と騒がれた症状が出ているのです。

 この調査を受け、なぜ「子宮頸がんワクチンによる副作用だ」と言い切れるのでしょうか。

 科学的な研究結果も示すこともできず、同様の症状を訴える男女がいるにもかかわらず、「女子のみが対象のワクチンが問題」と決めつけるのは単なるアンチキャンペーンと同じことです。

 

 同情を誘うような形で公平性を欠いた報道を行ったメディアは「子宮頸がんワクチンに対する自社の報道」を見直す必要があるでしょう。科学的な根拠に基づく事実を提示できないなら、“フェイクニュース” と変わりありません。

 「当時は正しかったのだから、訂正の必要性はない」と開き直っているとすれば、ジャーナリストではなく、デマを撒き散らす存在で、報道に携わる資格を剥奪されるべきものです。

 子宮頸がんは日本国内で年間約1万人が発症し、およそ2700人が亡くなっている病なのです。それを防ぐ有効な手段であるワクチン接種を根拠もなく、感情で妨害する姿勢は厳しく追求される対象になり得るものと言えるでしょう。

 「ネット上でデマが広がっていることが問題だ」と寝言を述べる前に、自分たちが行った報道被害を見直さなければなりません。メディアが子宮頸がんワクチン接種を妨害し続ける限り、国内で年間約3000人弱が子宮頸がんで亡くなっていく現状があるのです。

 

 「子宮頸がんで亡くなる年間3000人弱の命より、子宮頸がんワクチンで生じる健康被害の方が深刻であり、優先しなければならない」とメディアが考えるなら、それも1つの意見です。

 根拠を提示できるなら、そうした意見を社会に向けて発信することは大いに意味があるでしょう。ですが、「死人に口なし」という態度で、子宮頸がんの発症リスクを無視し、科学的な根拠に基づかない『ワクチン副作用説』を擁護する報道はデマとして批判されるものであることを自覚すべきではないでしょうか。