能年玲奈の騒動はレプロ(所属事務所)が成長の速度を見誤ったことが最大の原因だ
NHKの朝ドラ『あまちゃん』で主役を務めた能年玲奈さんが所属事務所から “干された” 状態となり、表舞台から消えている状態にあります。
「所属事務所(レプロ)との確執が問題」と週刊誌に報じられていますが、確執を生み出した原因は「所属事務所が能年玲奈さんの成長するスピードを見誤ったことにある」と言えるはずです。
能年玲奈に “第2の新垣結衣” として期待したレプロ
おそらく、能年さんの所属事務所(レプロ)が期待した成長曲線は新垣結衣さんが辿ったものだったはずです。マイペースで透明感のあり、雑誌『ニコラ』のモデル出身であるという共通点を持っていたからです。
新垣結衣 | 能年玲奈 |
---|---|
1988年6月11日生 | 1993年7月13日生 |
・ニコモ(13歳〜) | ・ニコモ(13歳〜) |
・ポッキー(2006年:18歳) ・十六茶 ・ロート製薬 ・NTT東日本 ・KOSE ・キヤノンなど |
・カルピス(2012年) ・KOSE ・キヤノン ・かんぽ生命など |
・ドラゴン桜(2005年) ・恋空(2007年) ・リーガルハイ(2012年) ・掟上今日子の備忘録(2015年) ・逃げるは恥だが役に立つ |
・あまちゃん(2013年:19歳) |
大手企業のCMに多数出演し、広告モデルや女優として活躍する新垣結衣さんは芸能人として成功例であり、レプロの稼ぎ頭の1人と言えるでしょう。
レプロとしては「新垣結衣さんのようになってくれれば御の字」と思っていたのですが、能年玲奈さんは事務所が思い描いたシナリオとは大きく異なる成長曲線を描くこととなりました。この件に対する対応を誤ったことで騒動が起きることになったと言えるでしょう。
「新垣結衣を超える成長はない」と見ていたレプロの誤算
時代が少し違うとは言え、新垣結衣さんと能年玲奈さんはほぼ同じスタート位置から女優としてのキャリアが始まりました。しかし、成長曲線が全く異なる結果となったのです。
Rk | 新垣結衣 | 能年玲奈 |
---|---|---|
C | ・『ドラゴン桜』に出演 ・ポッキーのCMで注目株 ・『恋空』で主役 |
・カルピスのCM ・『あまちゃん』で主演 |
B | ・十六茶/ロート/NTT東/KOSE/キヤノンなどのCM ・『パパとムスメの7日間』 ・『リーガル・ハイ』 |
↓ |
A | ・十六茶/明治/チキンラーメン/KOSE/などのCM ・『掟上今日子の備忘録』 ・『逃げるは恥だが役に立つ』 |
・かんぽ生命のCM |
『C』をスタート地点としますと、新垣さんはポッキーのCMや『ドラゴン桜』の出演で、“Cクラスの中にいる注目株” となり、ドラマやCMへの出演を経て『B』になったと言えるでしょう。その後も『B』のカテゴリで実績を積み、『B+』から『A』へと格が上がり、今では『A+』か『A+に限りなく近いA』であることに間違いありません。
要するに、芸能界のステップを1段ずつ上がって来た新垣結衣さんと比較すると、能年玲奈さんの成長の度合いがいかに急激であったかが如実に示されています。
能年さんも『C』からスタートしたのですが、カルピスのCMでは大きなブレイクはありませんでした。しかし、朝ドラの『あまちゃん』に主演したことで一気に “トップ女優” として世間に認知されたのです。
この急成長は所属事務所(レプロ)にとって完全に計算外だったと言えるでしょう。なぜなら、対応が後手に回ってしまっているからです。
急成長する女優は事務所にとって頭痛の種
段階を経て徐々に成長する女優は良いのですが、一気に急成長する女優は所属事務所にとって “頭痛の原因” となる可能性があります。
なぜなら、「仕事量と報酬が見合っていないことが明らかになるから」です。
能年玲奈さんの場合、『あまちゃん』出演後の “女優としての価値” は新垣結衣さんと同格以上(『B+』もしくは『A』)と見なされていたはずです。しかし、現状の『C』基準での待遇を引き延ばそうとすれば、反発を招くことになって当然と言えるでしょう。
芸能界のビジネスモデルが「売れた芸能人の稼ぎ所属事務所がプールし、(まだ売れていない)他の芸能人の給与や投資、事務所の経費に使う」というものであっても、所属事務所がギャラを取ることが容認される限度があるのです。
能年玲奈への投資分(と一緒に生活をしていた芸能人の分)を稼ぐことに目が眩んだレプロ
田崎健太氏が『週刊現代』に記載した記事がウェブに転載されており、そこからレプロの企業としてのマズい対応が伺い知ることができます。
「数千万円分は投資したので、投資分を回収する権利がある」と述べていますが、“トップ女優” がCMやドラマに出演することで十分に稼ぐことができる額です。また、仮に能年さんを “トップ女優待遇” にしていたとしても、1年間で事務所の投資分を十分に回収できたでしょう。
しかし、レプロには「能年玲奈がブレイクしたのは25年間かけて事務所の実績を築き上げてきたから」という自負が強烈にあり、「朝ドラでトップ女優としての地位を確立させた」という現実を受け入れられていないように思われます。
もし、レプロが主張するように実績がモノを言うのであれば、『まれ』で主役を務めていたのは清水富美加さんになっていたのではないでしょうか。
所属事務所のアシスト力がどれだけ強力であっても、オーディションの場で結果を出すことが求められるのは本人であるからです。
インセンティブの支払い期日を平気で破る所属事務所を信頼しろと主張するレプロ
「信頼関係のないタレントには仕事を回せない」とレプロは述べていますが、ボーナスの支払い期日を守らない所属事務所を信頼するタレントがいるでしょうか。
「具体的提案をしましたが、月額報酬の増額を含め一切拒否されました。レプロが払ったと言っている『あまちゃん』のときのボーナスについては、我々は関わっていませんが、それは本来の額の一部にすぎない。
しかも、支払いを約束していたボーナスの残額は支払われておらず、約定時期を大幅に超過してようやく支払われたのです」
「支払い時期が決まっていない」という理由でもなく、約束時期を大幅に超過している時点で民事的に問題のあることと言えるでしょう。
レプロは支払いが約束されたボーナスを出し渋るクライアントからの仕事のオファーに所属タレントを出すでしょうか。おそらく、「信頼できない」という理由で拒否するでしょう。能年玲奈さんがレプロに対して抱いている不信感もそれと同じものではないかと思われます。
レプロはどう対処すべきだったのか
レプロが対処すべきだった点の1つは「能年玲奈さんが朝ドラ主演を勝ち取った段階で経費精算の方法を変更する」というものです。
ハードワークで知られる朝ドラで「経費精算が追いつかない実態が明るみに出た」ことは所属事務所の落ち度と言えるでしょう。“本業” に時間が取られることは当たり前のこと。
それが事前に分かり切っているのですから、「コーポレートカードでの経費精算にすること」や「マネージャーが代わりに経費精算を行う」など対処方法は存在したはずです。しかし、それができていないのですから、リソース管理はかなり下手だと言われる水準です。
また、『あまちゃん』で “トップ女優” の仲間入りをした能年玲奈さんに対し、速やかに昇給オファーをするべきでした。
インセンティブの支払いを拒み、所属事務所の経費精算処理が完了するまでは実費の持ち出しで、昇給要求にも応じない。レプロの姿勢は「出て行ってくれ」というような契約条件を提示しながら、「育ててやった恩を返せ」と言っていることと同じです。これでは関係が破綻して当然でしょう。
一発屋になる懸念があるなら、それを踏まえて給与水準が将来的に下がる要件を定義した新契約をオファーすれば良かったのです。“従来の価値観” に固執しすぎた結果、所属事務所側のマズい対応に焦点が当たり、批判が起きる結果になったと言えるのではないでしょうか。