密入国を手引きすることが不問となるなら、人身売買の温床を生むことにもなる

 AFP通信が「移民を助けるのは善行か、それとも犯罪か」と問いかける記事を発信しています。

 “移民” を助けることを犯罪と見なす人はいないでしょう。問題となっているのは “密入国をした移民希望者” を国内に手引きしたからです。

 密入国という犯罪行為をしている時点で法による裁きを受けなければなりません。それを助長する行為も同様に罰せなければ、法治国家としての体をなしていないと宣言するに等しいことと言えるでしょう。

 

 男性はイタリアとの国境近くでオリーブ農園を営むセドリック・エルー(Cedric Herrou)被告(37)。フランスの警察の目を盗んで国境から車で移民たちを運び、宿泊場所を提供してきた。地元ではちょっとした英雄だが、現在は罪に問われる身だ。

 地元ではエルー被告のほかに、2人が同じく移民を違法に助けたとして裁判が開かれている。これらの移民は頼りない船に乗って地中海(Mediterranean Sea)を横断し、欧州に渡って来た。エルー被告の農園は検問を逃れて密入国を試みる移民の絶好の通過ルートになっていたという。

 

 『密入国の手引き』が罪に問われる理由は「人身売買の温床になること」と「国内に引き入れた人物の生活保証を行政に押し付けるから」の2点が主なものでしょう。

 フランスで裁判となっているケースではエルー被告が “移民” の生活を保証すれば問題とはならなかったでしょう。しかし、彼の行為は “移民” をフランスに入国させ、“移民” によって生じるコストの請求書を国民全体に回そうとしているのです。

 

密入国者と “移民” と呼ぶほど、合法的な移民・外国人の立場は悪化する

 難民問題での欧州メディアが犯した最大の罪は「密入国者を移民」と表現したことでしょう。「滞在資格を持つ移民」と「密入国者」をひとまとめにし、同じ扱いにしたのです。

 これは『反移民』のスタンスを採る人々にとって、攻撃する格好の理由になります。「移民の中に犯罪者」が紛れ込んでいるという事実を指摘できるからです。そして、そのような声を起きるとメディアは「差別思想が蔓延している」と嘆くことでしょう。

 ですが、原因を作ったのは密入国という犯罪をした人物を “移民” と呼び、庇護を呼びかけたマスコミなのです。法律を破る人物を平然と擁護する姿勢が共感を呼ぶことはないと自覚しなければなりません。

 

予算を生活力のない外国人に費やす理由を説明できるのか

 国が “自国中心主義” を採ることにNOを主張するのであれば、民間で資金を募り、運営して支援すれば良いことです。1月4日付の社説で朝日新聞は次のように主張しています。

 ギリシャの島では、命をかけて海を渡ってきた難民に島民たちが手を差し伸べた。ドイツでは今も多くの市民がホストファミリーとして難民を迎え入れている。強靱(きょうじん)な善意が息づく市民社会が国を超えたネットワークを築けば、自国中心主義への歯止めになりうる。

 自称・難民を受け入れたいなら住民が自力で支援の手を差し伸べれば良い話です。行政が自国民を生活を後回しにしてまで、生活力のない外国人を優先する必要性はないのです。

 密入国をした外国人を手厚く歓迎する理由はどこにあるのでしょうか。ギリシャの島は難民にとっての最終到達地ではないため、旅行客と同じ扱いを受けるでしょう。ドイツの事例では “ホストファミリー” ですから、生活の保証までは行いません。

 行政から生活費を受けることとなり、国の財政を圧迫する要因の1つになることは明らかです。それでも、難民を受け入れるメリットがあると主張し、有権者に受け入れられた政治家は現状では皆無なのです。

 

滞在資格を持たない外国人ですら、国外退去させることは容易ではない

 国内に入り込んだ外国人を法に基づき強制的に国外退去させることは簡単なことではありません。なぜなら、抵抗勢力が国内外に存在するからです。

  • 国内:「人道上の理由から強制退去に反対」と支援団体が裁判を起こす
  • 国外:出身国が「受け入れの拒絶」を示す
  • 国外:メディアが「非人道的な国家」とバッシングを行う

 要するに、当事者ではない無責任な人道主義者が「人権を尊重しろ」と声高に叫び、それを称賛する無責任なマスコミがいるのです。

 移民・難民の受け入れを要求するメディアがそうした立場の人々を『記者など』で雇用し、自らの仕事ぶりを紹介するインタビュー記事を掲載した報道機関があったでしょうか。

 残念ながら、「皆無」と断言さぜるを得ません。もし、そうした立場からマスコミで職を得た人物がいるなら、真正面から反移民・反難民を訴える主張が「間違いを含んだ危ないものである」と指摘できるからです。大部分が受け入れ国の社会保障制度にタダ乗りしていることが実態であり、批判が生まれる温床となっているのです。

 

 密入国者を手引きしたことによる弊害は社会保障のタダ乗りだけではありません。ベルリンで発生したトラックテロのような事件を起こす危険の高い犯罪者がノーチェックで国内に入り込める訳ですし、売春や密輸などの違法行為で稼ぎを目論むワルに手を貸していることと同じなのです。

 法律が時代のニーズに合致していないなら、改正を訴えることが定石です。問題がある規則であるなら、過半数を超える賛成を得て、改善されることでしょう。

 「多数派の賛同を得られないから違法行為に手を染め、開き直りを見せている」と見られる行為は中長期的に大きなマイナスとなることを自覚しておく必要があるのではないでしょうか。