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民間人校長でコケた大阪市、今度は無料でプログラミング教育を行う事業者を募る

 大阪市が小学校からのプログラミング教育を無料で行ってくれる事業者を募集(PDF)し、ネット上から顰蹙を買っています。

 「ブラック労働ではない」と大阪市は火消しに追われていますが、ほとんどの事業者は応募することはないでしょう。なぜなら、売名行為ぐらいしか見込めるリターンがないからです。

 

 大阪市が批判を受けている理由は次の2点が主要因です。

  • 経費の負担
    • 事業を実施する経費はすべて事業者の負担
    • 教育委員会が保有する機器・環境は無料利用可
    • 大阪市は経費を一切負担しない
  • 損害賠償
    • 事業者が大阪市が保有する建物・備品等を破損した場合は賠償責任を負う
    • 原状回復を行った場合は免責される

 

 これほど、ムシの良い契約はないと言えるでしょう。大阪市にとっては旨味しかありませんが、事業者側にとってのメリットがほぼ皆無になっているからです。

 

 では、具体的な問題点を指摘することにしましょう。

 プログラミングを行うためには『プログラムを入力する機器』が不可欠です。教育委員会が大阪市の小学校に通う全生徒分の機器を用意すれば良いのですが、「準備が間に合わない」と言われたり、「用意すると約束したスペックを満たしていない」となれば代替機を用意する必要性が生じます。

 大阪市はそうした経費を一切負担しないと宣言しているのですから、事業者が自腹を強いられることになります。

 また、事業者が貸与した機器で授業を行っていた際に小学生が機器を破損・損傷した場合の損害賠償が定義されていません。「小学生から賠償金を取るのか」と批判する “教育バカ” が出てくることは十分に想定できるのですから、大阪市の代わりに賠償責任を負うと定義しておくことは不可避と言えるでしょう。

 

 おそらく、大阪市が目論んだのは日本IBMが東京・三鷹市で行ったケースでしょう。

 2001年1月、東京都三鷹市教育委員会とパートナーシップを組み、三鷹市内の4つの小学校においてパイロット・プロジェクトを実施。その成果を踏まえ、2002年4月から2年間にわたり「三鷹市学校・家庭・地域連携教育プロジェクト」を実施、同市立の全小中学校22校に展開しました。プロジェクト終了後も社員・定年退職者のボランティアが授業支援などのボランティア活動を継続しています。

 社会貢献の業績が欲しい外資系企業が行ったプロジェクトであり、「これと同じことを大阪市と組んでやりたい」と考える企業はあるはずだという考えで事業協力者を募集したのだと思われます。

 ただし、日本IBMは “プログラミング教育を売る側の企業” であることを忘れてはなりません。三鷹市とのパートナーシップ協定は自社製品を販売するためのデータ収集という側面があり、販促費として会社側がコストを費やす意味があったのです。

 では、事業者側が費用を持ち出してまで大阪市と組むことによるメリットは何があると言えるのでしょうか。

 

 「正当な対価を支払うこと」に対し、世間から批判されることはありません。

 始めに総事業費を提示した上で事業者を募るべきでしょう。コストを下げたいのであれば、Khan Academy などネット上で無料公開されている初期プログラミングの教材をベースにカリキュラムを作るなど方法は多数存在するからです。

 パクリや流用を防ぐために、授業概要をオープンにしてネット上で公開するといった形を採用するなどアイデア次第で批判を起こさずに済むはずです。大阪市にその感覚があるかによって、今後の炎上状況が変わってくるものと思われます。