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大学は生活保護家庭の子への学費支援がないだけだ、問題をすり替えるな

 駒崎弘樹氏が「生活保護家庭の子は大学行っちゃダメ問題」と命名し、国会で取り上げられたことを記事に書いています。

 しかし、これは議論のすり替えに過ぎません。なぜなら、生活保護の家庭で育った子供でも大学進学はできるからです。

 最大のポイントは「高校ではあった学費支援が大学や専門学校ではないこと」なのです。この原則を崩すと、現行の教育制度そのものが崩壊することになるでしょう。

 

“世帯分離” を使うことで、生活保護世帯の子供も大学進学が可能

 生活保護を受給している世帯の子供は原則として大学進学はできません。しかし、“世帯分離” という方法を利用することで進学は可能になります。

 これは『生活保護を受給する親』と『子供本人が世帯主』に分割する方法です。

 イメージとしては「二世帯住宅」です。同じ建物内で生活しているが、世帯そのものは別であり、生活保護による制約から逃れられるという “抜け道的な方法” なのです。

 

 合法的に認められているため、『年金受給をする親』と『生活保護を受給する子』という形で世帯分離をすることも可能なのです。

 この “抜け道” に対し、駒崎氏は「生活水準が苦しくなり、本業に身が入らない」と批判しています。ですが、これは的外れです。なぜなら、生活保護による受給額を都合よく無視しているからです。

 

月額30万円弱の生活保護から6万円の減額で生活が困窮するの?

 駒崎氏は生活保護を受給している世帯がどのぐらいの額を手にしているのかを知る必要があるでしょう。

 朝日新聞が2013年に報じた大阪在住の女性(41)に対する生活保護は月額29万円です。長女(14)と長男(11)の3人暮らしですが、大学進学を見据えた貯蓄を行うには十分すぎる額と断言できるでしょう。

画像:朝日新聞が報じた生活保護の一例

 国立大学の授業料は年間54万円。月5万円の貯金を続けることで、1年間の学費を溜めることは可能になります。

 家計の支出で大きな比重を占める住宅費に頭を悩ませる必要はなく、医療費・税金などでも優遇される立場にあるのです。この条件で、「大学進学の資金がない」と主張するのは浪費家の側面が強いと批判されることになるでしょう。

 

 月30万円を使い切ることが当たり前になったいた生活保護受給世帯からすれば、それが25万円前後に下がることは生活が苦しくなる印象を抱くことでしょう。

 しかし、世間一般からは『裕福な立場』にいた世帯が『一般的な水準』に戻っただけとしか感じません。朝日新聞のように高給取りからすれば、同情に値するかもしれません。

 ですが、社会人経験を持つ人々からは「普通の水準だろ?不満を述べる意味がわからない」と聞く耳を持たない反応が帰ってくるはずです。

 

生活保護で大学に通えると、別の問題も浮上する

 駒崎氏の意見に賛同する人々は「大学無償化」に賛成する人々が中心になっていると言えるでしょう。なぜなら、生活保護を受給している世帯の子供が大学に通うことによるメリットを最大限に享受できるからです。

 生活保護には『教育扶助』という項目があります。高校の学費はこの項目でカバーされるのですが、大学進学が認められると大学の学費も『教育扶助』でカバーされるようになる可能性があるのです。

 国公立大学の学費は学部が異なっても一律という体系が適用されていますが、私立大学を見れば、それが “配慮” であることは一目瞭然です。

 

 国立大の学費の倍近くを要する私立大学の理系学部の学費を『教育扶助』でカバーするのでしょうか。ゼロの数が違う私立の医学部・薬学部をカバーする理由を説明できるのでしょうか。

 論理的な説明はできないでしょう。ですが、「教育の場を提供する」という人道的な見地に基づく配慮という形でゴリ押しをするはずです。

 その結果、生活保護を受給していない世帯が “世帯分離” を行い、子供を『生活保護受給世帯』として『教育扶助制度』を逆手に取り、大学の学費をタダにしようと目論むケースが相次ぐようになるでしょう。

 タダで大学に通える合法的な “抜け道” が用意されていれば、悪びれるなく『権利』を行使する人が現れることは想定済でなければなりません。この部分の懸念点を潰しておかなければ、生活保護受給世帯への風当たりは一層強くなるはずです。

 

大学の学費分に見合ったリターンを得られないなら、進学すべきでない

 大学進学によって、生涯所得が高卒より多くなるなら、進学する意味はあるでしょう。ですが、奨学金制度があるのですから、その役割は十分に果たしています。

 大学卒業後の将来の所得で大学の学費が返済できるなら、進学する意義は大きいと判断できます。もし、返済に困るというのであれば、そもそも進学する意味がなかったのです。

 「大学に進学すれば、バラ色の将来が待っている」と考えるのは問題です。“就職氷河期” に見舞われれば、一流大学に在学中の学生でも厳しい立場に置かれてしまうのです。夢を見ることは自由ですが、現実と折り合いを付ける必要があることを教えることも大人の責任でしょう。

 国が学費を負担してくれるようになれば、その功労者には大学教員としてのポジションが用意されることでしょう。講義で過去に活動した武勇伝を語り、高給を得られることが現実に考えられるのですから、そうした活動に邁進する活動家が多く現れるでしょう。

 優秀な学生であれば、「資金繰りに詰まるとヤバい」と理解し、事前に対策を講じる能力はあるはずです。「生活が苦しいから配慮すべき」という安易な考えは大きな問題があると言えるのではないでしょうか。