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「ドーピング撲滅にあらゆる方策を」という主張には賛同するが、その予算は誰が出す?

スポーツ

 朝日新聞は2月15日付の社説で「ドーピング 撲滅にあらゆる方策を」と主張しています。

 この意見にはほとんどの人が賛同するでしょう。しかし、現実にはドーピングチェックに要する費用は誰が捻出するのか等の問題が横たわっていることも事実です。

 また、検査機関が的確に運営されているかの前提部分に対する監視も不可欠であることを見落としてはならないことなのです。

 

 近年は「競技終了後」だけではなく、ふだんの抜き打ち検査もしばしば行われる。薬物に汚染された選手が大会に出場すること自体を防ぐためだ。

 このため対象選手は競技団体を通じて向こう3カ月間の滞在場所を報告し、検査を受けられる時間帯を1時間指定する義務を負う。負担は大きいが、潔白を証明し、競技の尊厳を守るために甘受してもらいたい。

 (中略)

 選手のプロ化で生計や将来が競技結果に左右されることが進めば、薬物への誘惑が増える恐れがある。日本オリンピック委員会や日本アンチ・ドーピング機構は、これまで以上に教育と啓発に力を注いでほしい。

 

 

 自転車ロードレースを観戦している人々からすれば、朝日新聞が紹介した対策は氷山の一角に過ぎないとの印象を持つでしょう。

 競技終了後のドーピングコントロールは優勝者を中心に日常的に行われ、今後3ヶ月の居場所報告も義務化された上に “バイオロジカルパスポート” も導入済みだからです。

 ただ、ドーピング対策による問題も実際に生じており、「競技の尊厳を守るために問題部分に目をつぶれ」という主張は通用しないことを自覚していなければなりません。実際に生じている問題点を指摘することにしましょう。

 

ケース1:検査機関の行動がクソだった

 ドーピング対策で検査を行う機関がまともに機能していなければ意味のないことです。ロシアの国家ぐるみと言われるドーピングも、検査機関がグルだったことが問題の1つです。

 また、スペインでは2013年に「ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝をしたアメリカ人のクリス・ホーナーが抜き打ちドーピング検査を免れた」とスペインのアンチドーピング機構がメディアに自らの手柄をリークしたのですが、実際はアンチドーピング機構による信じがたいミスだったことが発覚し、大恥をかくこととなりました。

  • 優勝を確実にしたクリス・ホーナーの家族がスペインを訪れたことで宿泊先のホテル変更を報告
  • アメリカ反ドーピング機構が申請承諾と返答
  • 現地スペインの反ドーピング機構が変更前のホテルに向かう
  • 「クリス・ホーナーが申請されたホテルにいなかった」とスペイン反ドーピング機構がメディアにリーク
  • クリス・ホーナーと所属チームから反論を受ける

 選手は競技の尊厳を守らなければならない立場にいますが、反ドーピング機構は選手の尊厳を守らないといけない立場にあるのです。ドーピングをしていないクリーンな選手をクロと名指しすることは論外ですし、検査機関が適切に機能しているかをチェックすることは不可欠と言えるでしょう。

 

ケース2:疑惑をかけられた選手にクリーンだと証明させるのは酷

 これは山岳地帯で生まれ育った選手の数値が高すぎるといった点など、人体で解明されきっていない点で疑惑をかけられると選手生命そのものが脅かされるケースが発生します。

 コロンビアのセルジオ・エナオが疑惑を持たれたのですが、この際はチームスカイという資金力を持ったチームに在籍していたこともあり、大学との共同チームで数ヶ月に渡る追跡調査の結果シロと判断されました。特殊なケースであることは確かですが、選手が負担を強いられる現状は問題があると言えるでしょう。

 実際に反ドーピング対策の欠陥が浮き彫りになったのはロマン・クロイツィゲルのケースです。

 「過去の血液データ変動値がおかしい」と反ドーピング機構から指摘され、シロと証明できなければレース出場を自粛せよと圧力をかけられた件がありました。

 最終的には潔白であることが証明されたのですが、ドーピングをした科学的根拠が皆無の状況でも疑惑として指摘した時点で選手生命を大きく脅かすことができてしまうという悪しき前例が作られてしまったことは非常に大きな問題だと言えるでしょう。

 

コストである反ドーピング費用を誰が負担するのか

 ドーピング問題のほとんどは費用負担の問題に帰結します。検査費用がなければ、ドーピングが行われているかの確認すらできません。

 そのため、誰が検査費用を負担するのかは大きな問題となるでしょう。ドーピングに手を染めていない選手は「検査に協力するだけで十分」と考えるでしょうし、プライバシーが損なわれている現状以上の負担を強いることはできません。

 そのため、現実的な解決策としてマスコミが負担することが望ましいと思われます。

 有名スポーツ選手の居場所が3ヶ月先まで詳細に判明しているのです。それをメディアにリーグする不届き者が現れる可能性を考慮すると、支払い義務を負うべきです。

 スポーツ選手への取材やドーピング問題に対して講釈を述べることで儲けを得ている立場にあるのですから、取材対象の尊厳を守るという点で貢献の責務を果たさなければなりません。

 

 JOCが対象とするのはエリートがメインです。マス層に圧倒的な影響力を持つマスコミこそ、「ドーピングは決して許されない行為だ」と一般層に訴えかけることで将来のオリンピック・パラリンピック選手などの親世代に対する啓蒙活動を行わなければならないのです。

 まずは高校野球というキラーコンテンツを持つ朝日新聞がそうしたアクションを起こす先頭に立つべきなのではないでしょうか。