電気代高騰を招く『原発ゼロ』で選挙に勝てると考える民進党は愚かだ

 民進党の蓮舫代表が党大会で「2030年の原発稼働ゼロ」を目指し、法案を作成する意志を示したと NHK が伝えています。

 労働組合である連合の支援を受ける政党のトップとして異例の見解表明と言えるでしょう。なぜなら、支持層を敵に回すことと等しい姿勢を示したからです。

 

 民進党の蓮舫代表は12日の党大会で、「原発依存からの脱却が前倒しで実現可能になるよう、『原発ゼロ基本法案』を作成していく。原発依存に逆戻りの現政権とは違う未来を描いていこうではないか」と述べました。

 これを受けて、民進党は法案の作成に向けて、今週から党のエネルギー政策に関する調査会で、原発ゼロを実現するための具体策の検討に入ることにしていて、蓮舫代表は法案化を通じて、「2030年代に原発稼働ゼロを目指す」とする従来の目標を前倒ししたい考えです。

 

 民進党の姿勢を応援するのは “脱原発” を掲げる朝日新聞などのマスコミに限定されるでしょう。

 メディア産業は電気代が高騰しても、従業員の生活が苦しくなるような給与水準ではありませんし、ビジネスコストが増大する訳でもないからです。そのため、「原発をゼロにしよう」などと無責任な論陣を張ることができるのです。

 

 一般的な社会人は前提が異なります。労働組合がどれだけ春闘で賃上げを求めようと、電気代の値上げに応じる方が優先されます。これは電気なしで成り立つビジネスがほぼ皆無だからです。

 ビジネスで費やすことができるコストには上限があり、人件費も電気代も同じコストなのです。電気代が低ければ、「その分を人件費に費やすべき」と交渉することもできるでしょう。

 電気代が高騰する中で「人件費も増やせ」と組合が主張しようものなら、相手にすらされないでしょう。(売り上げが伸びない中で)コストだけが増大すれば、会社の経営状況が悪化し、倒産することに直結するからです。

 再生可能エネルギーが高額な価格帯で買い取られ、すべての電力消費者に強制的に負担させられています。これほどアンフェアな仕組みはありません。

 

 原子力発電が運転していなくても、電力供給を賄うことは可能です。ただ、高額な電気代を負担することを受け入れ、温室効果ガスの排出を容認することが条件となるのです。

 この『原発ゼロ』による明らかなマイナス部分を意図的に隠し、“原発事故による問題” だけをクローズアップする民進党や朝日新聞の姿勢も大きな問題があると言えるでしょう。

 「実現性のない計画」で選挙に勝てると考える方が問題なのです。例えば、政府が原子力発電所の運転を止めることは財産権の侵害に該当します。電力会社は原発1基あたり4000億円近い損害を被ることになり、賠償を求めることは十分に想定できます。

 賠償に応じれば、税金から支払うことになり、国民が負担することになります。仮に民主党政権のように電力会社を悪者にすると、電気代で損失を穴埋めすることになると考えられるため、結局は国民に請求書が回されることになるのです。

 

 『原発ゼロ』を掲げるのであれば、原発の運転を止めたことで生じる以下のような問題に対する具体的な対策を提示することが不可欠です。

  • 「ベースロード電源」をどう確保するのか
  • 安定供給が困難な再生可能エネルギーによる発電のバックアップはどうするのか
  • 火力発電は温暖化を招くが、その対策はあるのか
  • 原発を停止したことによる電気代高騰を世論に納得させられるのか
  • 電力会社の資産を毀損することによる賠償をどう支払うのか

 「脱原発」を訴えるのであれば、上記5項目に対する具体的な対策はすでに用意されていることでしょう。法的に利用可能である発電方法を空気で止め続け、高い電気料金を消費者に負担させ続けることはナンセンスなことだからです。

 電気代が倍額になっても大した影響を受けない “現代の貴族階級” にいる人々からは「なぜ、原発を活用すべきという声が世論に存在するのか」ということは到底理解できないと思われます。

 

 シビアなコスト意識を知った上で、具体的な政策に落とし込むことができなければ、選挙に勝つことはできないことをそろそろ学習すべきなのではないでしょうか。