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「乗客を引きずり降したユナイテッド航空の手続きに問題はない」と考えている経営者は “手痛い代償” を支払うことになるだろう

 離陸前の航空機から乗客を引きずり降すという全体未聞のことを行ったユナイテッド航空が世界中で批判を受けています。

 その一方で、「ユナイテッド航空が乗客を強制的に排除した行為は認められており、法的になんら問題ない」と主張する人もいます。経営的に正しいと考えているようですが、落とし穴が存在しており、代償がとてつもなく大きいものであることを自覚する必要があると言えるでしょう。

 

1:オーバーブッキングは日常的に起きるし、乗務員が “乗客” として搭乗することもある

 航空機産業は輸送ビジネスであり、人を運ぶことで売上・利益を出すビジネスモデルです。キャンセルは機会損失になるため、座席数より多めの予約を受け付けることは一般的です。

 これは “補欠合格” のような形であり、世界中の航空会社で採用されています。

 また、乗務員が “乗客” として、搭乗することもあります。勤務スケジュールの関係で移動する必要がある場合が代表的な事例と言えるでしょう。

 しかし、乗務員は会社に利益をもらたす “上客” ではありません。プライベートでは乗務員価格が適用され、仕事では無料なのですから、“乗客” として輸送している時点で経営的な機会損失を起こしてしまっているのです。

 

2:離陸直前に乗務員を搭乗させる必要性が発覚したことが元凶

 当初は強気だったユナイテッド航空ですが、ムニョス CEO は態度を180度転換し、全面的に責任を取る姿勢を明らかにしたと BBC が伝えています。

 

 次から次へとユナイテッド航空の不手際が示された訳ですから、「対応に問題はない」と主張したところで説得力は皆無です。

  1. 乗客が搭乗手続きを終える
  2. 離陸前にユナイテッド航空の社員4名を搭乗させる必要があることが発覚
  3. 「オーバーブッキング」を理由に振替可能な乗客を募る
  4. 自発的な客が現れなかったことでランダムに選択
  5. 拒否した乗客を力づくで引きずり降ろす
  6. 社内メールで CEO が対応を称賛していたことが発覚する

 致命的なのは「なぜ、問題の起きた3411便が出発する直前になるまで乗務員4名を搭乗させる必要があることに気づいていなかったのか」という点です。

 搭乗手続きが始まるのは出発の1〜2時間前からでしょう。その時点で3411便に社員を乗せる必要性を把握していなかったのであれば、経営自体がそもそも綱渡り状態と言えます。逆に把握していたのであれば、100% ユナイテッド航空の落ち度となるのです。

 

3:インセンティブ以上の不利益を被る乗客は絶対に交渉に応じない

 ユナイテッド航空は「コンピューターがランダムに選んだ乗客4名を対象にした」と主張していますが、結果的にこれが高い代償となりました。

 なぜなら、ランダムに選んでしまうと “航空会社が提示したインセンティブ以上の不利益を被る乗客” が強制的に降ろされる可能性を排除できないからです。4人目として指名された医師はまさにこのケースでした。

 この男性医師は翌日午前に診察を控えていたため、診察できず、患者の容体が悪化すれば訴訟になることは容易に想像できます。医師側が敗ける可能性が極めて高く、多額の賠償金を科されることは火を見るよりも明らかです。そのため、「弁護士に連絡する」という発言が出たのでしょう。

 「患者から訴えられた場合の訴訟はすべてユナイテッド航空が負担する」とのオファーがあれば、この男性医師は応じていたかもしれません。しかし、そのような申し出はなく、「あなたが降りろ、これは規則だ」などと言われて素直に従う “物分りが良い乗客” ばかりではないのです。

 

4:「乗客を強制的に降ろす手続きに問題」がなくても、“降ろさなければならない理由” に過失があれば、集中砲火を浴びることとなる

 ユナイテッド航空の対応に理解を示す一部の人々は「乗客を強制的に降ろす手続きには何ら問題ない」と考えているのでしょう。ただし、忘れてはならないことは「なぜ、乗客を離陸前の飛行機から強制的に降ろさなければならない状況になったのか」という点です。

 明日勤務する予定の乗務員を急遽搭乗させる必要性が生じたとしても、チェックインや搭乗手続きが進行中の段階で対処に乗り出していれば、ここまで大問題になることはなかったでしょう。

 謝礼をケチった挙句、力で強制的に排除すれば、反感を招くことは当然です。また、「コンピューターで “ランダム” に選んだ」という説明を素直に信じる人はピュアで騙されやすい傾向にあります。

 サッカーのリーグ戦の日程を決める際にコンピューターが “ランダム” に対戦カードを決めますが、「地域のイベントと重複することを避ける」などの例外は組み込まれています。そのため、狙い撃ちするは可能であり、意図的に対象から外すことも可能であることは覚えておいて損はないと言えるでしょう。

 

 “PR 戦略の問題” としてユナイテッド航空は取り組むべきと主張する人々は単に逆張りをしているだけでしょう。PR 戦略で経営が維持できるのであれば、そのように主張する経済誌や経済専門紙が出版不況とは無関係で好調を維持しているはずなのですから。