沖縄向け奨学金は政府がやるのではなく、沖縄振興予算を使って沖縄県がやるべき問題だ

 時事通信によりますと、沖縄振興審議会で鶴保大臣が「沖縄向けの奨学金の創設を検討する」と明らかにしたとのことです。

 しかし、この問題は政府がやることではく、沖縄県が取り組むべきものです。年間3000億円という振興予算を手にしておきながら対策を拱いているのは沖縄であり、政府が “配慮” したところで問題の解決にはならないからです。

 

 鶴保庸介沖縄担当相は31日の沖縄振興審議会で、沖縄県の学生を対象とする奨学金創設を検討する考えを明らかにした。

 鶴保氏は「全国の取り組みに加え、沖縄独自の奨学金の創設を考えている」と表明。文部科学省が今年度から始めた給付型奨学金とは別に、沖縄県出身の学生に特化した奨学金が念頭にあるとみられる。出席していた同県の翁長雄志知事はこの後、記者団に「期待している」と語った。

 

 

沖縄出身者に給付型奨学金を配布したとしよう、彼らは卒業後に沖縄で就職するのか?

 「貧困から抜け出すために、進学率をあげよう」という話はメディアが積極的に展開していることもあり、良く耳にするでしょう。

 沖縄出身者向けに給付型奨学金を配布するのであれば、その先のことを考える必要があります。『大学卒』の資格を手に入れた “稼げる人材” は沖縄で就職するでしょうか。この問いがすべてです。

 首都圏、中京圏、近畿圏、福岡など沖縄県外の大学に進学した学生は給与水準が高い本土で就職してしまうでしょう。優秀な人材であれば、尚更です。

 獣医師を要請する学科を持たない四国は獣医学部に進学する学生向けに奨学金を出すなど人材確保に奔走していますが、それでも満足に確保できていないことが明るみに出ています。自分たちで必要な人材を育成し、雇用先まで用意できなければ、優秀な人材を引き寄せることはできないのです。

 

“優秀な人材” が沖縄県外に流出すれば、『子供の貧困』は増える

 『子供の貧困』を解消したいのであれば、“優秀な人材” を育てるよりも、地域に雇用先を作ることを優先しなければなりません。

 なぜなら、“優秀な人材” は流出することを念頭に置いておく必要があるからです。成績を残す人材には良い条件でのヘッドハンティングは付き物であり、出身地のために “丁稚奉公” をするような価値観を持っている方が例外的と見ておくべきです。

 仕事のできる人材から県外で就職先を見つけることになれば、県内には「他県では就職できない能力に劣る人物」の割合が高くなります。業務遂行能力と給与は比例関係にありますので、これが『子供の貧困』の温床となっているのです。

 

年間3000億円もある地域振興予算をなぜ教育投資に回さない

 沖縄の貧困問題で1番責任が大きいのは翁長知事でしょう。「期待している」と他人事のように語っていることは論外です。

 原資は十分すぎるほどにあるのですから、反基地活動に熱を上げる前に貧困問題に取り組み、結果を出さなければなりません。「観光業が好調、基地は負担」などと語る前に、アメリカ軍で雇用されている県民をより良い条件で引き抜くための産業基盤を築くことに奔走すべきなのです。

 年間3000億円もフリーハンドで使える予算の中から、50億円を沖縄出身者向けの給付型奨学金に、50億円を沖縄県発の企業を育成・支援するためのエンジェル投資家用の資金として使うこともできるはずです。

 国から特区認定を得て、大学と組み、シリコンバレーのような形態を目指すべきなのです。世界最高の人材を招聘するだけの資金が(国からもらえる立場に)あり、成果を出せば、招いた人物の業績にもなるというメリットを活用していない時点でやる気がないのでしょう。

 

 しかし、能力がない人にハードルを乗り越えることを期待することはできません。“被害者ビジネス” に特化し、ゴネ得を狙うことも立派なビジネスですから、その道を選択すると沖縄が決めたのであれば、それを尊重する必要があります。

 『ゆすり・たかり路線』を採るのであれば、『子供の貧困』は重要なカードです。むしろ、もっと惨めな状態でマスコミ的に “使い勝手の良い貧乏人” を演じてもらわなければなりません。

 沖縄が県内経済を発達させ、自ら汗をかく自治体であるのかが浮き彫りになる案件と言えるでしょう。どういった判断をするのかが注目されていることを翁長知事や沖縄メディアは知るべきなのではないでしょうか。