打てない、四球を選べない巨人が低迷するのは当然の結果である

 シーズン前に FA で3選手を獲得した巨人軍は顰蹙を買ったに等しい状況でしたが、球団ワーストの連敗記録を作った現状では積極的な補強に動くことを決断したフロント陣の判断は正しかったと言えるでしょう。

 しかし、ドラフトや FA、トレードで獲得した選手が期待通りに活躍するのかは別の問題です。“スターの原石” である選手の才能を伸ばすことができる環境を整えることも同じぐらい重要であるはずだからです。

 

 巨人が低迷している大きな理由は「打線が全く振るわない」という点でしょう。6月12日時点でのセ・リーグ6球団のチーム別成績を見ると、それが浮き彫りになっています。

表1:セ・リーグの四死球数(2017年6月12日時点)
チーム 試合 打率
(得点圏)
四球
死球
平均
四死球
得点
広島 61 .277
( .297)
221
(15)
3.87 322
阪神 58 .241
( .263)
238
(24)
4.52 245
DeNA 60 .246
( .261)
169
(20)
3.15 231
中日 61 .247
( .233)
154
(16)
2.79 192
巨人 59 .235
( .248)
167
(13)
3.05 179
ヤクルト 59 .242
( .233)
212
(26)
4.03 196

 

 首位に立つ広島はリーグ首位のチーム打率(.277)と得点圏打率(.297)を記録しています。また、四死球の数も1試合平均4個弱(3.87)を記録しており、ヒットなどで出塁した選手がチャンスメイクし、それをタイムリーで迎え入れることができていると言えるでしょう。

 阪神と DeNA は打線の力は同等ですが、四死球の数に差があり、より多くの選手を出塁させている阪神の方が得点力があります。また、投手力は12球団唯一の2点台(2.97)であり、これが首位の広島に食らいつく原動力なっています。

 

 さて、巨人の実状は貧打に苦しむ中日と変わりません。チーム打率および四死球の数がリーグワーストか肉薄した数字であり、得点力が極めて弱い状況です。

 阪神や中日の場合は、甲子園やナゴヤドームという広い球場を本拠地としているため、打力が多少弱まることは想定内のことです。しかし、“狭い” 東京ドームを本拠地とする巨人が貧打にあえぐことは中日以上に深刻と言えるでしょう。

表2:巨人軍主力選手の打撃成績(2017年6月12日時点)
選手名 試合 打率 HR 打点 出塁率
長打率
捕:小林 55 (53) .174
(.195)
0 8 .256
.194
一:阿部 55 (51) .247
(.309)
8 35 .308
.397
二:中井 47 (42) .213
(.115)
3 7 .276
.300
三:マギー 59 (59) .309
(.305)
6 28 .370
.486
遊:坂本 58 (57) .315
(.304)
6 26 .388
.463
左:石川 52 (43) .258
(.286)
3 11 .301
.387
中:立岡 47 (44) .221
(.333)
0 10 .254
.271
右:長野 52 (44) .236
(.188)
2 12 .307
.348

 主力選手として十分と言える活躍をしているのは坂本、マギーの2選手だけ。得点圏での阿部選手は怖いものの、一塁が空いていれば勝負を避ければ失点は最小限に抑えられる状況なのです。

 これでは苦戦することが当たり前です。

 

 主力選手が不調であるなら、控え選手にチャンスを与えることが一般的です。しかし、巨人の場合はチャンスを得た選手が結果が残せず、泥沼に陥っている状況です。

表3:巨人軍控え選手の打撃成績(2017年6月12日時点)
選手名 試合 打率 HR 打点 出塁率
長打率
内:村田 37 (16) .250
(.192)
4 14 .316
.425
内:クルーズ 9 (9) .156
(.286)
0 3 .152
.188
外:亀井 42 (8) .190
(.381)
0 11 .246
.259
外:陽岱鋼 6 (6) .261
(.250)
0 2 .320
.302

 セカンドのクルーズ選手は打率1割台と本調子からは程遠く、村田選手は阿部選手と似た数字を残していますが、得点圏打率で雲泥の差がある状況です。また、亀井選手は代打で効果的な仕事をするものの、先発として起用した際に調子を維持できずと苦しんでいます。

 負傷から復帰した陽岱鋼選手が外野のレギュラー陣が残している成績を上回っていることが唯一の朗報と言えるでしょう。「打率3割前後+出塁率3割5分超」が求められる選手であり、これが達成できるとチームの起爆剤になると思われます。

 

 チームとして打てない上に四球も選べない状況は完全に悪循環に陥っていると言えるでしょう。『打つ』方に比重を置くのであれば、確実性の高い選手を揃えなければなりません。

 “ミートの天才” と称された高橋監督のように初球から狙ったとしても、それだけの技術を習得できていない選手が実践すれば、相手にアウトを簡単に献上する結果が極めて高くなってしまうのです。

 『打つ』だけがすべてではなく、『出塁する(=アウトにならない)』ことは打つことと同じぐらい重要なことなのです。チームとして明確な方向性を打ち出した上でプロジェクトとして取り組まなければ、低迷期から暗黒期に突入することも十分にあり得ると言えるのではないでしょうか。