日本では高層マンションより木造住宅密集地域での火災の方を注意すべきだ
イギリス・ロンドンの高層住宅で発生した火災は防火対策の不備が被害拡大を招いたと見られています。
日本では『消防法』による規制対象となる建築物に該当しますが、読売新聞によりますと都内の高層マンションの約8割が消防法違反を指摘されていたとのことです。大きな被害が出るリスクがあるだけに違反は速やかに是正されるよう指導すべきと言えるでしょう。
昨年1年間に東京消防庁の立ち入り検査を受けた東京都内の高層マンション576棟のうち約8割(463棟)が、消防法違反を指摘されていたことが同庁への取材でわかった。
違反の大半は避難訓練を取り仕切る防火管理者の不在と消防設備の未点検だった。ロンドンの24階建て住宅で起きた火災では多数の死傷者が出ており、専門家からは国内の防火策徹底を求める声が上がっている。
ロンドンの火災は「リノベーション時に外壁に追加された可燃性の断熱材が火の周りを早くした」と指摘されています。また、スプリンクラーが設置されていなかったなど消火する手段がなかったことも問題と言われています。
日本では防火・消火の規則を定めた『消防法』や燃えにくい設計がルール付けられる『建築基準法』があります。規則に従って建築され、きちんと運用されている建築物は安心できると言えるでしょう。
ただ、基準が存在したとしても、それが守られていなければ意味がありません。「防火管理者の不在」はそれほど大きな影響を生まないでしょう。しかし、「消防設備の未点検」はリスクが大きすぎます。
火災が発生した際に消防設備が作動しなければ、火事が収まることを祈るしか方法がなくなってしまうからです。
消防設備の点検を行うかの判断は『防火管理者』が担っているとも考えられるため、火災リスクを軽減するためにも組織のトップ(もしくはオーナー)がその役割を担うべきとと言えるでしょう。
日本で高層マンションの建設ブームが起きているのは最近のことで、建築上の欠陥があるとは考えられません。むしろ、燃えやすい木造建築物が密集する地域の方が火災による大きなリスクがあります。
なぜなら、木造住宅密集地は道路自体が狭いため、緊急用車両(救急車・消防車)が侵入することは非常に困難です。
そのため、火災が起きると、地区まるごとが延焼することは十分にあるのです。風が強い気象条件であれば、新潟・糸魚川市で発生した大火災のような事態が起きる可能性があるのです。
高層マンションの防火対策を見直すのであれば、木造住宅密集地における防火対策も見直す必要があると言えるはずです。
可燃性の高い材質を使うことは高層マンションでは法で厳しく制限されています。そのため、法を遵守されているかを確認し、適切に運営されているかを再確認することが有効な防火対策と言えるでしょう。その一方で “野放し” に近い状態である木造住宅密集地への対策に本腰を入れなければならないのではないでしょうか。