労働基準法改正で安倍首相と連合の会長が歩調を合わせ、民進党は蚊帳の外

 安倍首相と連合の神津会長が会談し、連合側が要望する内容を踏まえた労働基準法の改正を行う方針を示したと NHK が伝えています。

 民進党の支持母体(の1つ)である連合が政権側と直接交渉に乗り出したことが特筆事項と言えるでしょう。それだけ民進党の存在意義がない状況であると言えるからです。

 

 安倍総理大臣は連合の神津会長と総理大臣官邸で会談し、神津会長は、改正案は長時間労働を助長しかねないとして、対象となる労働者の健康を確保する措置を強化するための修正を求めました。

 具体的には、使用者に対して年間104日以上の休日の確保を義務化することに加え、仕事を終えてから次の日の仕事を始めるまでに一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル」の確保や臨時の健康診断などを、使用者が選択的に実施すべきだなどとしています。

 連合が安倍政権と会談の場を持ったのは「会社が存続できなれば、社員全員が路頭に迷うことになる」という当たり前の認識を持っているからだと思われます。

 要するに、「会社(=働き口)を存続させる」という点で経営陣や政権と交渉する余地があるのです。経済情勢が悪化すれば、その直撃を受けるのは労働者自身ですし、そのことに無頓着すぎる民進党などの野党が見限られるのは当然と言えるでしょう。

 

適切な休養が確実に与えられることが肝心

 仕事量は日によって異なる職種もあり、繁盛期と閑散期によって勤務状況を上手く調整することが必要となるでしょう。長時間労働が慢性的にならないような勤務体系を作ることが肝心なのです。

 その課題に対し、連合は以下に示す項目などから労使で選択できるようにすべきとの要望を示しています。

  • 年間104日以上の休日の確保(義務化)
  • 勤務間インターバルの確保
  • 2週間の連続休暇
  • 臨時の健康診断を実施

 残業が常態化している企業では「勤務間インターバル」の導入が一石を投じることになるでしょう。

 18時に退社し、翌日の9時に出社した場合、15時間の “インターバル” があります。つまり、「勤務間インターバル:15時間」と設定すると終電間際までの残業をした場合は翌日の勤務開始可能時間が午後遅くとなり、残業体質に歯止めをかけることが期待できるのです。

 

最善の勤務体系を決めるのは労使交渉

 連合が複数の項目からの選択制を要望したのは業種・企業ごとに勤務の実態が異なるからでしょう。パソコンを使って仕事ができてしまう環境では「勤務間インターバル」は効果的ではありませんが、「連続休暇」や「休日の確保」は意味があります。

 逆に仕事を持ち帰れない環境で働く人にとっては「勤務間インターバル」という選択肢は魅力的に映るはずです。

 部門によっても、採用して欲しい項目が異なる訳ですから、労働者のために働く組合が機能していれば良い結果を勝ち取ることができるでしょう。“政権批判” をするための組織なのか、それとも労働者の働く環境を良くするために働く組織なのかを見極めるリトマス紙になると思われます。

 

労働組合の最優先事項は正社員の雇用を守ること

 日本の労働組合が世界と比較して大きく異なるのは「正社員の雇用を守ること」に最優先プライオリティーを置いていることです。

 賃上げという短期的な目標ではなく、雇用を守るという長期的な目標を置いていることが特徴です。そのため、国鉄が痛い目を見たストライキはご法度と位置付けていますし、人員削減のリスクがある人員増加にはあまり積極的ではないのです。

 終身雇用を前提とした労働組合であり、パフォーマンスの低すぎる社員であっても解雇できないという問題はあります。この点に上手く折り合いを付けることができれば、低迷する組織率も上向く “きっかけ” となるでしょう。

 多くの組合員の生活がかかっている訳ですから、給与を増やし、生活コストを下げる政策を進めることに賛同することが連合には求められていると言えるのではないでしょうか。