関西電力の管内で発生した大規模停電を機に、発送電分離に向けた動きを本格化させるべき

 23日の午前6時すぎから大阪府北部の広いエリアで大規模停電が発生したと読売新聞が報じています。

 原因は送電線からの漏電が有力視されていますが、復旧までに11時間を要しています。発電部門で “電力会社いじめ” の標的とされている関西電力が送電網の管理までする現状では送電部門に経営資源を割り当てることは難しいでしょう。

 発送電分離を検討する時期に差し掛かっていると言えるのではないでしょうか。

 

 関西電力によると、最大約3万4340戸に上り、約11時間後に全面復旧したが、この間、病院が診療を停止したり、信号が停止したりするなど市民生活に大きな影響が出た。

 (中略)

 関電は、ケーブルに水が浸透し、内部の絶縁体が劣化する「水トリー」と呼ばれる現象が起きた可能性があるとしている。関電の管内では、過去10年間に水トリーが原因でケーブルが破損したことによる停電が、2013年と16年に計2件起きているという。

 穴が見つかったケーブルは、1995年に敷設され、6年に1回、定期点検を実施。16年9月に目視点検した際は、「異常なし」と判断していた。

 

 

1:大手電力会社に “おんぶに抱っこ” は是正すべき

 大手電力会社は「新電力が発電しきれなかった分の穴埋め」を行うことに加え、「送電網の管理」も行っています。これは明らかにアンフェアと言えるでしょう。

 新電力は予定した発電量を達成できなかったとしても、何の損害も生まれません。しかし、送電網を持つ大手電力会社は別です。需要と供給のバランスが崩れると送電網に負荷がかかり、設備が故障によって使えなくなるという損害を受けるのです。

 その損失を電力会社の資本を使って管理・修繕する責任がある訳ですから、新電力に送電網を利用することに対する料金請求が行くことは当然と言えるはずです。

 既存の大手電力会社の発電部門と送電部門を分離し、送電部門は公的な色合いを強める形で運営することが理想です。それが本当の意味での「電力自由化」が達成されることにつながるからです。

 

2:「送電網の維持・管理にコストがかかっている」とマスコミは報じなければならない

 関西電力で発生した大停電は昨年10月に東京電力で起きた地下施設での火災と似た部分があると言えるでしょう。

 どちらも劣化がトラブルの原因として最有力であり、東京電力では敷設から35年以上、関西電力では22年とそれなりの年数が経過しているからです。もちろん、両社とも点検作業は行っていますが、目視で判断できるのは表面上の劣化だけです。

 総延長は1000キロ単位でしょうし、そのすべてを綿密に検査するにはかなりの予算が必要となるのです。これを「大手電力会社だから」という理由で押し付けるのは間違いですし、発電事業者全体で等しく負担することが公平と言えるでしょう。

 その際、「送電網の管理費」を「発電部門の穴埋め」に利用するという疑念が生じますことが予想されます。この場合は発送電分離を分離することで、送電部門での運営費が適切に使われているのかをチェックが容易になるため、発送電分離を推進する根拠となるのです。

 

3:発電会社に発電量を事前申告させ、違反した場合は免許剥奪とすべき

 発送電分離の方向性としては、「発電会社ごとに発電量を事前申告させる」ということを義務化すべきです。電力は需要と供給とバランスを取る必要があるため、好きなだけ発電が認められるという無責任な体制が維持されていることが問題なのです。

 現状は “しわ寄せ” が大手電力会社が被る形となっていますが、経営体力が奪われていることは明確です。経営破綻が起きてから是正に乗り出すようでは遅すぎると言えるでしょう。以下のように『発電』と『送電』を分けることが必要と言えるはずです。

  • 発電会社
    • 基本は民間企業
    • 発電手法は各企業ごとの裁量
    • 電力契約者の1時間ごとの需要電力量に対する供給責任を負う
  • 送電会社
    • 公営企業的な位置付け
    • 電力の需要予測に基づく配電を行う
    • 送電網の維持・管理に対する責任を持つ

 大手電力会社が持つ送電・配電部門を『送電会社』という形で独立し、発電部門は別会社とすべきでしょう。そうすることで、新電力にも発電に対する責任の所在が明確になり、バックアップ電源に対する設備投資を大手電力会社に押し付けられる不公平が解消されるからです

 バックアップ用の発電力を確保せずに運用し、事前に申告した発電量を供給できない電力会社は免許を剥奪することで市場から退場させるか、他電力が急遽補填した電力分の電気料金は「1kWh あたり100円」と定義しておけば良いでしょう。

 

 電力利用者が求めていることは「お得な電力料金で、安定した電力供給」です。世間が発送電分離を求めたのですから、発電会社には手頃な料金設定を求め、送電会社には安定した電力供給体制の維持・管理を求めるべきでしょう。

 そのためには『送電会社』を公的企業の色合いを強め、安い電力を安定して発電できる会社から多くの電力を買い取る体制を作ることが求められていると言えるのではないでしょうか。