インドと中国、睨み合いが続いていたブータン・ドクラム高地から撤退
インドと中国による睨み合いが続いていたブータン・ドクラム高地から「両軍が部隊の撤退を始めた」とインド政府が発表したことを NHK が報じています。
緊張関係が高まっていただけに、当面の軍事衝突は回避された形となります。しかし、根本的な解決には至っておらず、“特殊な事情” によるものと考えられるため、問題が再発する可能性はあると見ておくべきでしょう。
中国とブータンの係争地でことし6月、中国が進める道路建設を阻止するため、ブータンと関係が緊密なインドが軍を展開し、2か月以上にわたり中国とインドの両軍のにらみ合いが続いていました。
この問題について28日、インド外務省が声明を出し、外交チャンネルを使って互いの見解や懸念を伝えるなど協議をした結果、両軍が撤退することで合意し、すでに撤退をはじめていると明らかにしました。
中国とインドの政府関係者は両軍のにらみ合いが始まったあとも1962年の中印国境紛争を引き合いに出して互いにけん制し、両国のメディアも対立をあおる報道を続け、緊張が高まっていました。
インドと中国の緊張関係は今に始まったことではありません。国境を接する国同士では領土問題を抱えることはそれほど珍しくないため、地図で位置関係を確認しておくことが大事になります。
1:衝突が起きたのはブータン・ドクラム高地
インドと中国の “睨み合い” が起きたのは「ブータンと中国が領土問題を抱えている地区」です。(下図の星で示したエリア)
中国がブータンが領有権を主張するエリアを通過する形で道路の建設をしようとしたため、ブータンがインド側に支援を求め、「インド対中国」の構図ができあがりました。
インドが派兵した理由は「インド主要部とアッサム地方など北東部をつなぐ “シリグリ回廊” を分断される恐れがあるから」です。中国が道路建設を進め、ブータン西部の国境沿いを南進することはインドとの国境線を力で変更することの要因になるほどのものだからです。
2:BRICS 会議の存在
睨み合いを続けてきたインドと中国が急転直下で矛を収めたのは BRICS 会議が9月3日に予定されていたことも理由としてあげられるでしょう。
中国・北京で BRICS 会議が行われる予定で、中国とインドはどちらも会議で存在感を発揮する立場です。もし、インドが(国境沿いでの睨み合いを理由に)会議を欠席となれば、メンツが丸つぶれになるのは習近平・総書記です。
メンツ的な理由や降雪地帯で冬季まで睨み合いが続くと両国ともに軍事的な負担が増加するため、このタイミングで手打ちになったとものと思われます。
3:各地で挑発を続ける中国の姿勢を強く非難することがリベラルの仕事である
中国は各地で挑発を続け、力を背景に国境線を書き換えようとしています。
- ブータン・ドクラム高地(対 インド、ブータン)
- 南シナ海(対 フィリピン、ベトナムなど)
- 東シナ海(対 日本)
複数の地域で軍事的な挑発を続ける中国に自制を促せないのであれば、リベラルとしての価値はないと言えるでしょう。「権力を監視する」と勇ましく宣言するマスコミこそ、社説などを通して中国の軍事的膨張に対し、厳しい指摘をしなければならないのです。
河野太郎外相が「大国としての振る舞いを身につけるべき」と述べたことをマスコミができるかが注目点と言えるでしょう。中国の拡大路線に批判ができないのであれば、リベラルの看板を下さなければならないと言えるのではないでしょうか。