『電波オークション』を導入すれば、野田聖子総務相が自民党総裁になる道も開けるだろう

 政府が『電波オークション』の導入を検討していると産経新聞が伝えています。

 「電波の割り当てがブラックボックスとなっており、国民の財産である電波が有効に活用されていない」との指摘がすでに行われている状況です。『電波オークション』の導入が正式決定となれば、野田総務相の手柄となるでしょう。総裁選に向けた実績作りができるのかが注目点と言えるはずです。

 

 政府が電波の周波数帯の利用権を競争入札にかける「電波オークション」の導入を検討していることが11日、分かった。特定のテレビ局や通信事業者などに割り当てられた「電波利権」に切り込むことで、電波利用料金の収入増や割り当て選考の透明性確保を図る。政府の規制改革推進会議も同日、公共用電波の民間開放の拡大を議論していくことを決めた。

 

 “電波利権” と言えば、テレビ局が最もオイシイ思いをしていると言えるでしょう。なぜなら、470〜710 MHz と大きな帯域幅を持ち、支払っている電波料が携帯通信会社と比較して極端に低いからです。

 テレビ局は限られた資源でもある「電波を使ってない」など有効活用していない状況です。使用していない帯域は国に返上させる、または電波利用料を高くするなどの対策を講じることが不可欠と言えるでしょう。

 

1:総務省による電波行政が抱える問題

 総務省が主導してきた電波行政が行き詰まりつつあることは自民党・行政改革推進本部が指摘しています。スマホの普及などで「電波ニーズ」が急拡大し続けている現状があるからです。

 ニーズが飛躍的に高まる状況が予想される中で有効な対策が打たれていないことは問題と言えるでしょう。河野太郎・行政改革推進本部長、平将明本部長代理、小林史明議員らが以下のような提言を2017年5月に行っているのです。

  • ブラックボックス状態の透明化、第三者機関による監査
  • 公共用周波数を政府の資産として管理・有効活用
  • 民間開放の目標設定
  • 利用料設定など、民間開放のインセンティブの制度化
  • 周波数割当行政の体制見直し

 周波数の割り当てが効率的でなく、再編する必要性があると指摘されています。アメリカでは軍など利用機関と目的が公表されていることと比較すると、割り当て情報が非公表であることは「問題あり」と言えるでしょう。

 また、割り当てられた帯域を使っていないのであれば、ペナルティーを科すことや帯域の返上させる制度も必要でしょう。なぜなら、有効活用されていないことのツケは見えない形で国民全体が支払うことになるからです。

 

2:なぜ、テレビ局は “電波利権” の権化として批判されるのか

 “電波利権” として名前が出るのはテレビ局です。電波を利用する携帯通信会社との比較をすれば、当然の結論と言えるでしょう。

画像:総務省が発表している電波の利用状況

 携帯通信会社は “プラチナ” と呼ばれる帯域を割り当てられていますが、利用料の総額は各社とも100億円超を支払っています。一方のテレビ局は 200 MHz を超える帯域を占めているにもかかわらず、50億円にも満たない電波利用料しか払っていないのです。

  テレビ局 携帯通信会社
主な帯域 470〜710 MHz 718〜960 MHz
利用料
(年間)
  • NHK:約21億円
  • 日テレ:約5億円
  • テレ朝:約4億円
  • TBS:約4億円
  • フジ:約4億円
  • ドコモ:約201億円
  • KDDI:約131億円
  • SB:約165億円

 しかも、保持している帯域をフルに利用していない訳ですから、ムダとなっています。

 もし、テレビ局が利用していない帯域(例えば、600 MHz)を返上すれば、その帯域を使いたいという携帯通信会社が現れるでしょう。それによって、携帯通信会社間の競争が発生し、料金値下げなどの形で利用者に還元されることが期待できるのです。

 それを阻害しているのですから、テレビ局は批判されて当然と言えるでしょう。

 

3:電波利用料を携帯通信会社水準とした上で、新規割り当てには『電波オークション』を導入すべき

 産経新聞が報じた『電波オークション』ですが、これが効果を発揮するのは「新たに電波の帯域を割り当てる時」です。すでに割り当てが完了している帯域をオークションにかけることはできません。なぜなら、財産権の侵害になってしまうからです。

 そのため、プロセスとしては以下のものが期待されることになります。

  1. 「電波の割り当て」のブラックボックスを解消
  2. 公共用周波数を有効活用できるよう再編計画を策定
  3. 電波利用料を引き上げ、“塩漬け” になっている帯域を回収
  4. インセンティブ・オークションなどで「元の所有者」にも恩恵を与える形で民間に解放

 電波をどう使うかは利用権を持つ組織が決定することでしょう。しかし、タダ同然で権利を持ち続け、有効活用していないことは問題です。「使いたい」と希望する業界が現行で支払っている金額とほぼ同額を支払うべきです。

 それが嫌と言うのであれば、手放すべきです。その際、インセンティブ・オークションという形で「元の所有者」にも、売却額の一部(10〜20%)が割り当てられれば、十分なはずです。

 「電波を使っている訳ではない、でも利用料の値上げには反対、持っている電波の利用権は渡さない」という態度のテレビ局がネットなどから嫌われるのは当然です。政府は公共の財産である電波をムダ使いしているテレビ局に対し、厳しい姿勢で臨むべきと言えるのではないでしょうか。