メルケル首相の与党 CDU が第1党の座を守るも、連立相手が見当たらず政権運営は困難な状況へ
ドイツで行われた連邦議会選挙はメルケル首相率いる与党 CDU (キリスト教民主同盟)が第1党になったと NHK が報じています。
メルケル首相の続投は決定したのですが、CDU の議席数は過半数には届かない状況です。選挙前まで大連立を組んでいたドイツ社会民主党(SPD)が「連立を解消する」と宣言しており、どういった形で組閣するのかが焦点になるでしょう。
24日投票が行われたドイツの連邦議会選挙は、メルケル首相の与党が第1党となることが確実になり、メルケル首相は4期目の政権を維持することに強い自信を示しましたが、前回に比べて議席を大きく減らす見通しとなり、今後の連立交渉は難航も予想されます。
方向性の異なる2大政党が大連立を組めば、互いに譲歩する結果となり、支持者離れを起こすリスクがあります。CDU および SPD はともに議席数を落としており、党勢の立て直しが必須と言えるでしょう。
メルケル首相にとって、最初の課題は「連立政権のパートナー選び」です。大連立の相手であった SPD は「野党として活動する」と宣言しており、連邦議会の議席数で過半数を超える協力体制を構築できるかが鍵となるためです。
1:2017年ドイツ連邦議会選挙の議席数
2017年に行われたドイツ連邦議会選挙の結果、議席数は下表のように配分されることとなりました。
政党名 | 議席数 | 得票率 |
---|---|---|
キリスト教民主同盟 (CDU) | 200 ( -55 ) |
33.3% |
キリスト教社会同盟 (CSU) | 46 ( -10 ) |
|
ドイツ社会民主党 (SPD) | 153 ( -40 ) |
20.4% |
ドイツのための選択肢 (AfD) | 94 ( +94 ) |
13.0% |
自由民主党 (FDP) | 80 ( +80 ) |
10.7% |
左翼党 (Linke) | 69 ( +5 ) |
9.1% |
緑の党 (Grune) | 67 ( +4 ) |
9.0% |
ドイツ議会の法定議席数は598ですが、選挙の結果によって上回ることが発生します。2013年の議会選挙では630となり、今回2017年の選挙では709となりました。
ただ、それでも与党の座に就いていた2大政党が議席数を落としたことに変わりありません。CDU / CSU は得票率が 40% 強から 30% 強に、SPD は 25% から 20% へと数字を落としてしまったからです。
2:メルケル首相の連立相手は限られる
問題となるのは第1党となったメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)がどの政党と連立を組むかということです。
キリスト教社会同盟(CSU)はバイエルン州に本拠地を置く CDU の姉妹政党であり、方向性は同じです。しかし、CSU だけでは議会過半数に届かないため、連立相手を探さなければならないのですが、相手がいない状況なのです。
SPD |
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---|---|
AfD |
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FDP |
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左翼党 |
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緑の党 |
|
メルケル首相が率いる CDU/CSU が連立を組める政党は『自由民主党(FDP)』と『緑の党』しか存在しない状況です。ただ、政策方針の違いから連立協定を組むことが簡単ではないことは明らかです。
ここで政権発足に手間取るようだと、最悪の場合は「選挙やり直し」も現実にあると言えるでしょう。
3:ドイツの動きが鈍くなる可能性大
ドイツは国内情勢だけでなく、EU に対する絶大な影響力を持っています。しかし、EU 政策に大きな変化を加えることができるだけの基盤を作れなかった訳ですから、現状維持路線が濃厚と言えるでしょう。
中道右派が獲得した得票率は CDU/CSU が 30% 強、FDP が 10%。これは前回の議会選挙(2013年)で CDU/CSU が 獲得した 40% 強と同じです。
つまり、中道右派の支持率に大きな変化はなかったものの、“極右” とマスコミに位置付けられている AfD が 13% と全体的に右傾化が進行しているのです。
メルケル首相の難民対策が「口先だけ」であることがこれまでの政策で示された訳ですから、CDU/CSU を敬遠する形で AfD や FDP が中道右派の受け皿として勢力を拡大することになったのでしょう。特に、バイエルン州で議席を大きく減らした CSU が CDU にどのような注文を付けるのかに注目する必要があると言えるのではないでしょうか。