NFL の国歌斉唱中の不起立運動は「黒人に対する不当差別への抗議」から「反トランプ」に変遷した時点で価値が損なわれた

 一部の NFL 選手が試合前の国歌斉唱を拒んでいることをトランプ大統領が批判したことで、NFL が選手側の肩を持ち、対立が深まっていると NHK が伝えています。

 当初は「黒人に対する白人警察官の不当な対応への抗議」からスタートした活動でしたが、現在では「反トランプのツール」を化しています。最早、抗議活動としての価値はゼロであると言えるでしょう。

 

 NFLでは、一部の選手が警察官による黒人への暴行事件や人種差別への抗議として、試合前の国歌斉唱で起立せずにひざをつく動きが広がっていて、トランプ大統領は「国に対する侮辱行為だ」と非難したうえで、「選手たちを解雇すべきだ」などと主張し、24日には「NFLのオーナーは何らかの行動を取るべきだ」と述べました。

 この日、各地で行われた試合では、トランプ大統領への抗議を示すため200人以上の選手が起立を拒んだほか、起立した選手やオーナーたちも互いに腕を組んで連帯を示しました。さらに、合わせて3チームの選手たちは国歌斉唱の間、ロッカールームなどにとどまりフィールドに姿を現しませんでした。

 

 

1:発端はコリン・キャパニックの抗議パフォーマンス

 問題の発端となったのは「白人警察官の黒人への対応が問題視された事件が頻発した」からです。丸腰・無抵抗で警察官の指示に従っていたにもかかわらず、乱暴な扱いをしていたケースが明るみに出たのですから、抗議活動が起きることは当然です。

 横暴な振る舞いをする一部の白人警察官への抗議としてキャパニック選手(当時サンフランシスコ・49ers)が国歌斉唱を拒否するという “抗議の意志” を示しました。

 アメリカでは国歌斉唱中は「起立・脱帽し、胸に手をあてる」という原則です。これに対し、キャパニック選手は「ベンチに座ったまま」という形の抗議を始め、最終的には「ひざをつく(Knee Down)」という形に落ち着きました。

 この動きに賛同し、同調者が NFL 以外にも広がったという状況なのです。

 

2:当のキャパニックはどの NFL チームとも契約していないという現実

 抗議活動を始めたコリン・キャパニック選手ですが、2017/18 シーズンが始まったにもかかわらず、所属チームがない状況です。(2017年9月26日現在)

 キャパニック選手はチームの攻撃を組み立てる QB (クオーターバック)で、過去にスーパーボールを制した経験を持っています。NFL は全32チームで、各チームが「先発」と「控え」の2人ずつを抱えており、QB は64選手分の契約が存在するのです。

 2016/17 シーズン終了後にキャパニック選手はオプトアウト(Opt Out)を行使し、49ers との契約を打ち切ったのですが、どのチームとの契約が合意に達することはありませんでした。「控え」としても契約できなかったのですから、問題は根深いと言えるでしょう。

 

3:キャパニックへの連帯は示すも、安全圏から同調しているにすぎない

 「黒人に対する不当差別への抗議」だった段階は共感を示す人が多かったでしょう。しかし、「反トランプであることを示す抗議活動」となった時点で「本来の目的」から逸脱してしまっています。

 NFL や一部の NFL 選手はキャパニック選手への連帯を示しています。しかし、安全圏から同調しているにすぎません。キャパニック選手の抗議活動に賛同するのであれば、QB としての契約が提示されて良いはずだからです。

 トップ QB としての待遇は用意できなくても、「控え QB としての契約」は提示できるはずです。そうしたこともなく、「キャパニック選手との契約のために年俸ダウンを受け入れても良い」という選手も現れないのですから、“その程度の抗議活動” と言えるでしょう。

 要するに、リベラル派のファン層にゴマをすっているに過ぎないパフォーマンスなのです。

 トランプ大統領の姿勢に反対するのであれば、NFL チームに所属していなくてもできることです。スポーツに政治を持ち込む必要はありませんし、国旗・国歌に敬意を払いながら国家首脳を批判することは両立できるのです。これを履き違えているリベラルが騒いでいるだけと言えるのではないでしょうか。