積水ハウスが再生可能エネルギーの普及に本気になら、数字上の消費電力分はすぐに切り替えられるはずだ

 大手住宅メーカーの積水ハウスが「事業活動で使う電気をすべて再生可能エネルギーで賄う」ことを目指すグループに加入したと日経新聞が伝えています。

 技術的には送電網を設置しない限り、不可能なことです。しかし、「 “積水ハイムが事業で消費する電力量” と “再生可能エネルギーで発電した電力量” を月額でイコールにすること」は可能です。おそらく、こちらを目指すのでしょう。

 ただ、その方針であれば、いますぐ実現させなければ詐欺と批判を招くことになるでしょう。

 

 積水ハウスは20日、事業活動で使う電気の全量を再生可能エネルギーで賄うことを目指す世界の企業連合「RE100」に加盟したと発表した。2030年に消費電力の半分、40年までに全量を再エネで賄う。同社が販売した住宅に設置する太陽光発電の電気を購入することで実現させる。

 (中略)

 積水ハウスが建設した戸建てや集合住宅などに設置した太陽光発電の発電能力は、合計65万キロワットにのぼる。そのうち3分の1程度を調達できれば、同社が事業活動で使う電力の全量を賄えるとみている。

 19年以降、固定価格買い取り制度(FIT)による売電期間が終わる住宅用の太陽光発電設備が順次出てくる。積水ハウスはそれらの住宅から、電気を買うことで再エネ比率を高める考え。同社が施工・販売した住宅の所有者に呼びかける。

 

 

1:既存の送電網を使用するかぎり、再生可能エネルギーだけを利用できる術はない

 電気は需要と供給のバランスが維持されることが大前提です。太陽光などの再生可能エネルギーは発電手法の1つであり、火力・水力・原子力・再生エネなどで発電された電気が『総合パッケージ』という形で消費者に届けられているのです。

 つまり、既存の送電網を利用する限り、使えるのは『総合パッケージの電力』であり、特定の発電手法で作られた電気ではないのです。

 もし、太陽光発電など特定の発電手法による電力で 100% を賄うのであれば、既存の送電網から切り離すことが大前提となります。“太陽光発電のための送電網” を新設したり、自給自足で電力供給を行うなどの投資が必要なのです。

 積水ハウスは上述部分への投資をする予定はない訳ですから、数字上でバランスを取ると宣言したのでしょう。ただ、これは “ええ格好しい” の典型的なパターンに陥っています。

 

2:なぜ、積水ハウスは現時点での自社の消費電力を再生可能エネルギーの価格で支払わないのか?

 おそらく、積水ハウスは次の2つをイコールにしようする経営計画を立てているのでしょう。

  • 積水ハウスが事業活動で1ヶ月に消費する電力量
  • “積水ハウスが販売した住宅に設置された太陽光パネル” が発電した電力から積水ハウスが買い集めた1ヶ月の電力量

 これなら、世間に向け「弊社は環境を考えるエコな企業です」と宣伝することができます。しかし、見落としている点があります。

 再生可能エネルギーの普及に訴えるなら、現時点で自社が消費している電力量を再生可能エネルギーの単価に基づき、電気料金を支払うべきです。なぜ、積水ハウスはそれをしないのでしょうか。

 価値があるなら、再生可能エネルギーに「高額な値札」が付いていても支払うことでしょう。現状では、FIT で割高な太陽光発電の負担をすべての電力消費者に押し付け、自分たちは既存電力網から安価な電気を利用しているということと変わらないのです。

 反原発派や再生可能エネルギーに携わる企業ほど、率先して割高な電気代を負担する必要があるはずです。

 

3:電気代ぐらい気前良く支払うべきだ

 積水ハウスの消費電力は20万 kW ほどでしょう。これは日経新聞に「65万 kW の3分の1程度を調達できれば、事業活動を行う上での全電力を賄える」とあるからです。

 再生可能エネルギーの普及に携わる企業は自分たちが事業で消費する電力量は FIT を通した価格を自ら買い取り、相殺すべきです。それをしないのであれば、“利ざや” を得ているに過ぎません。

  • FIT で使って、高値で売電
    → 請求書は全電力消費者へ
  • 自分たちは電力会社から通常価格で買電

 これが再生可能エネルギー界隈の実態なのです。太陽は請求書を送ってきませんが、太陽光発電を営む業者から高額が請求書が強制的に送りつけられて来ているのです。

 これを是正する経営方針を打ち出し、実行してこそ、本当に環境に配慮した企業と言えるでしょう。

 積水ハウスは自らが消費する電力分については自らは売却した家庭用の太陽光パネルでの買取価格である「1kWh あたり30円」から算出した電気料金を電力会社に支払うことで “本気度” を打ち出すべきと言えるのではないでしょうか。