伊藤詩織氏の主張が無理筋なのは野党超党派が「捜査経緯」を問題視していることが証明している

 立法府に属する一部の議員が堂々と司法に圧力をかけ始めています。

 朝日新聞によりますと、「伊藤詩織氏がレイプ被害を主張した件に対し、捜査経緯を国会で厳しく検証すべき」と主張する『超党派の会』が会合を開いたとのことです。

 検察審査会で「不起訴事案」となった事実を無視しているいることは大きな問題です。野党議員による『超党派の会』の言い分を認めるのであれば、冤罪がなくなることはないと言えるでしょう。

 

 ジャーナリストの伊藤詩織さんが訴えているレイプ被害への捜査や、検察審査会のあり方を検証する国会議員による「超党派の会」が21日、発足した。初会合では警察庁と法務省の担当者に経緯の説明を求めたが、「不起訴事案」などとして答弁を控えた。

 (中略)

 国会内で開かれた初会合には民進、立憲民主、希望、共産、日本維新の会、自由、社民、沖縄の風の野党各党・会派から約20議員が出席。呼びかけ人の森ゆうこ参院議員(自由)は「逮捕状が発付されたにもかかわらず、直前で取りやめになった。国会が厳しく検証すべきではないかという意見が寄せられている」と話した。(南彰)

 

 逮捕状が発布されても、逮捕が見合わせとなるケースは存在します。

 『逮捕』はあくまでも容疑の段階であり、その後の裁判で「有罪」とならなければ、前科にはなりません。したがって、「推定無罪の原則」が報道には求められているのです。

 今回の件は「検察審査会で不起訴事案」と結論づけられました。つまり、逮捕していたとしても、不起訴(=無罪)となっていたのです。「逮捕状が発布されていたのだから、逮捕しているべきだった」と主張する声があるのは “別の理由” が存在しているからと言えるでしょう。

 

1:検察審査会の仕組み

 まず、検察審査会の仕組みを確認しておく必要があるでしょう。検察審査会は「犯罪の被害にあった人や犯罪を告訴・告発した人から申立て」があった際に動きます。

 その際、審査員は以下のように選ばれます。

  • 20歳以上で選挙人名簿に掲載されている人物が『検察審査員』としての資格を有する
  • 1つの検察審査会で400名が『検察審査員候補者名簿』に掲載
    • 郡ごとに100名を選出
    • 選出方法は「市町村の選挙管理委員会が『選挙人名簿』からくじで選ぶ」
  • 『検察審査員候補者名簿』から『検察審査員』と『補充員』を選出
    • 選出方法はくじ引き
    • 選出人数はどちらも11名
    • 任期は6ヶ月だが、第1郡から第4郡まであり、任期が異なる

 『選挙人名簿』から無作為に選ばれた100名の中から、さらにくじ引きで11名が検察審査員として選ばれる方式が採用されているのです。“無関係な素人” という立場から『申立て』を精査し、判断を下す形なのですから、中立的な視点から判断していると言えるでしょう。

 

2:「検察審査会のあり方」に文句をつける野党議員

 伊藤詩織氏が申立てた件で、検察審査会は「不起訴相当」との判断を下しました。これは『申立て』の内容に根拠が乏しければ、当然の判断です。

 「不起訴不当」とするなら、さらなる調査を行うべきと主張するための根拠が必要不可欠です。それが見当たらなければ、「不起訴相当」とならなければなりません。

 野党議員は「検察審査会のあり方」に文句を述べていますが、「申立てがあった案件はすべて再調査を実施せよ」と言うのでしょうか。捜査には予算がかかりますし、嫌疑不十分だった案件を再び捜査する根拠がない中で強行することは人権侵害に該当することでしょう。

 また、検察審査員の選出方法を見直すことや議論内容をオープンにすることは外部からの圧力を招くことを意味します。裁判員制度で「よろしく」と声かけ事案が起きたために騒動になったことを忘れているのではないでしょうか。

 

3:伊藤詩織氏による人権侵害で片棒を担ぐ議員一覧

 伊藤詩織氏が “推定有罪” の主張をマスコミの前で行った件で、一部の野党議員が「逮捕状執行停止問題」として検証を行ったことをアピールしています。菊田真紀子議員によりますと、以下の議員が呼びかけ人とのことです。

画像:菊田真紀子議員のツイート
  • 阿部 知子(立憲民主党:衆・神奈川12区)
  • 石井 苗子(維新の会:参・比例)
  • 糸数 慶子(沖縄の風:参・沖縄)
  • 神本 美恵子(民進党:参・比例)
  • 菊田 真紀子(無所属の会:衆・新潟4区)
  • 田村 智子(共産党:参・比例)
  • 福島 みずほ(社民党:参・比例)
  • 柚木 道義(希望の党:衆・比例中国)
  • 森 ゆうこ(自由党:参・新潟)

 

4:「逮捕状の執行が停止されたこと」を問題視する野党議員らの思惑

 上述した呼びかけ人を始めとする野党議員の対応はピントがズレています。今回の件で「逮捕状の執行が停止されたこと」を問題視するのであれば、守るべき対象は加害者とされた男性の人権でなければならないからです。

 世間一般の代表である “素人” の『検察審査会』が「不起訴相当」と下した事案で、逮捕状が認められたことを問題視するなら理解できます。

 しかし、『超党派の会』を作った野党議員の動きは「なぜ、逮捕状があるのに逮捕しなかったのか」と加害者とされる男性を攻撃しようとするものです。要するに、「この男性を社会的に抹殺したい」という伊藤詩織氏の動機に忖度し、同調した野党議員の活動と言えるでしょう。

 逮捕のニュースはゴールデンやプライムと呼ばれる時間帯で盛んに報じられます。しかし、その数日から1週間後に「検察は〇〇の件で逮捕された男性(または女性)を不起訴としました。なお、不起訴の理由は明かされていません」というニュースは日付の変わる時間帯のフラッシュニュースでしか流されないのです。

 「逮捕=有罪」の社会イメージがある以上、逮捕されたというニュースが流れるだけで社会的に抹殺されることを意味しているのです。「無罪である人物を逮捕しなかったのはおかしい」と主張する野党議員の発言は弾圧以外の何物ではありません。

 

 野党のこのような振る舞いは無実の人々全員を陥れることが可能となる極めて危険なものです。新たなターゲットとして糾弾される人が出てきた時点でかなりの手遅れとなってしまうのですから、この時点で厳しい批判を野党に向ける必要があると言えるのではないでしょうか。