共同通信:イギリス公文書で明らかになった天安門事件の犠牲者数を “過去の推定値” で報じる
イギリスの公文書が公開され、1989年に中国で起きた天安門事件の犠牲者数が明らかになりました。ただ、共同通信が犠牲者数を意図的に少なく報じており、虚偽報道を振りまく事態が起きています。
■ 共同通信が報じた内容
共同通信は12月23日付で以下の記事を配信しました。
【広州共同】23日付の香港紙、明報は、中国当局が学生らの民主化運動を武力弾圧した1989年6月の天安門事件で、英国の研究部門が北京での死者数は千~3千人と見積もっていたと報じた。機密解除された89年の英公文書の内容として伝えた。
この記事に対するツッコミどころは「イギリスの公文書が機密解除されたニュースであるのに、中国の影響が強い香港紙の “孫引き” 記事として報じている」という点でしょう。
なぜなら、実際に公表された公文書から確認できる数値と大きくかけ離れているからです。
■ 事実
1:天安門事件の犠牲者数は1万人
イギリスの公文書に記載されている天安門事件の犠牲者数は1万人です。これは AFP 通信や BBC が報じており、報道機関であれば情報源を確認することは極めて容易と言えるでしょう。
1989年に中国の首都・北京の天安門広場(Tiananmen Square)で民主化運動が軍によって武力弾圧された「天安門事件」の死者が、少なくとも1万人に上るとする英国の公文書が新たに公開された。
公開されたのは英国の外交機密電報で、陰惨な天安門事件の詳細をつづっている。天安門事件から28年以上を経て公にされた電報をAFPが英国立公文書館で確認した。
AFP はイギリス国立公文書館で資料の確認を行っているのです。この点において、共同通信とは信用度が全く異なると言うことが可能なのです。
2:「犠牲者数が 1000〜3000 人」というのは何なのか?
共同通信が報じた「天安門事件の犠牲者数が 1000〜3000 人」と言う主張はイギリスの公文書が公開される前の段階で推測されていた数字です。
イギリスの公文書の機密が解除されるタイミングで「過去の推定値」をわざわざ “孫引き” という形で共同通信は加盟する報道機関に配信したのです。これは大問題と言えるでしょう。
「過去の推定値」を報じて欲しいという動機があるのは中国共産党ぐらいです。
機密解除されたイギリスの公文書から明らかになった「天安門事件の犠牲者数は1万人」を報じなかったり、「犠牲者数は 1000〜3000 人」と『両論併記』をするメディアは中国共産党に忖度していると断定して問題ないレベルなのです。
「権力を監視することがメディアの役割」と主張するのであれば、世界有数の権力者である中国共産党にとって都合の悪い情報も正確に報じなければなりません。「日頃の主張内容と行動が一致しているか」を見極める試金石になると言えるのではないでしょうか。