日経新聞本社火事で男性が亡くなった事件、 “何らかの問題” があったことは確実だ

 年の瀬が迫った12月21日に日経新聞の本社で火災があり、男性が1人亡くなるという事件がありました。

 NHK によりますと、28日に亡くなった男性の身元が判明。都内にある日経新聞専売店の経営者だったとのことであり、何らかの問題があったことは確実と言えるでしょう。

 

 亡くなったのは練馬区にある日本経済新聞社の専売店の56歳の元経営者だったことが警視庁への取材でわかりました。

 (中略)

 日本経済新聞社によりますと男性からの申し出で先月中旬に新聞の販売契約を解除していましたが、トラブルは把握していないということです。

 

 日経新聞は「トラブルは把握していない」とコメントしていますが、“何らかの問題” があったことは確実と言えるはずです。なぜなら、日経新聞の販売部数が先月(=2017年11月)に激変しているからです。

 

1:日経新聞の販売部数が尋常でない落ち込みを見せた2017年11月

 斜陽産業となっている新聞業界はほとんどの大手新聞が販売部数を減らし続けています。しかし、日経新聞だけは約270万部の販売部数を維持している状況だったのです。

 2016年12月時点での日経新聞の販売部数は272万6210部。今年1月から6月までの平均販売部数も271万8263部と横ばいを保っており、2% 前後の減少を続ける読売新聞や朝日新聞とは一線を画していたのです。

 しかし、2017年11月に異変が起こります。

表1:新聞販売部数の推移
  読売新聞 日経新聞
2017年
1〜6月平均
8,830,415 2,718,263
2017年7月 8,771,695 2,700,562
2017年8月 8,748,281 2,699,514
2017年9月 8,713,985 2,702,584
2017年10月 8,734,925 2,695,255
2017年11月 8,765,366 2,456,555

 それまで約270万部だった販売部数が約245万部にまで激減しているのです。-9.07% とわずか1月で 10% 弱も販売部数を落とすことはあまりに異様であると言わざるを得ません。

 

2:大口顧客を失ったか、押し紙に耐えれなくなったのか

 専売店の経営が立ち行かず、店を閉鎖するケースは日常的に起きることが想定できます。ただ、1つの専売店が閉鎖しただけで300万部近い販売部数を誇る新聞社の販売部数が 10% 弱も下落することは起こり得ないでしょう。

 販売店の経営が行き詰まる主な理由として考えられるのは「大口顧客の喪失」や「押し紙で経営状況が悪化」です。

 紙の新聞で得られる情報の価値が低下していることは否定しようのない事実です。したがって、販売店や専売店が厳しい経営環境にあるのはどの新聞でも同じですし、そこに上記の2点が加われば “泣きっ面に蜂” という事態が起きるのです。

 ただ、日経新聞本社で起きた今回の事件は “押し紙問題” に起因する可能性の方が高いと思われます。なぜなら、「大口顧客の喪失」は新聞社と販売店・専売店の両者にマイナスが生じますが、「押し紙」は販売店や専売店だけに損害が生じるからです。

 

 新聞業界の大きな闇である “押し紙問題” を取材する度胸のあるジャーナリストと、それを掲載に踏み切る決断力を持ったデスクがいるメディアがどこなのかが明らかにある問題だと言えるのではないでしょうか。