訪日外国人旅行者数が過去最高を記録、量から質への転換を始める時期に差し掛かっているのでは?

 「日本を訪れた外国人旅行者数が過去最高を更新した」と国交省が発表したことを NHK が伝えています。

 ただ、量を追い求めるだけは日本経済への効果は限定的です。そのため、「質」に比重を置くための準備を始める時期に差し掛かっていると言えるでしょう。

 

 国土交通省によりますと、去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者は、おととしよりおよそ460万人、率にして19.3%増えて推計で2869万人となり、5年連続で過去最高を更新しました。

 これは、中国やロシアから訪れる観光客向けのビザの発給要件などが緩和されたことや、日本とアジア各国を結ぶLCC=格安航空会社や、クルーズ船の便数が増えたことが主な要因です。

 

 観光客数が増加し続けていることは地域経済に寄与していることでしょう。しかし、良い面ばかりではないことも事実です。生活道路が圧迫されたり、騒音・ゴミのポイ捨てなどといったトラブルが起きる要因にもなるのです。

 コスト分を上回る経済効果がもたらされなければ、観光政策はマイナス面が大きくなると言えるでしょう。

 

1:LCC とクルーズ船の乗客をカウントしている状況

 「量」があることは「様々な人々が訪れている」ことを示しており、悲観的に捉える必要はありません。しかし、“太客” を確保していなければ、値下げ競争に巻き込まれる恐れがあるのです。

 現状は LCC と日本に寄港するクルーズ船の乗客が訪日外国人観光客数を増加させる要因です。

 都市部の鉄道で掲載されている電光掲示板が中国語や韓国語(ハングル)で表記されているのは訪日外国人観光客数の増加に寄与しているからなのでしょう。ただ、東アジア以外の地域から観光客を呼び込みたいのであれば、表示方法自体を見直す必要があります。

 看板や電光掲示板で表記されるのは現地語である日本語と英語の2言語で十分と言えるはずです。それ以外の言語はスマホからアクセスできるネットやパンフレットに留めておくべきでしょう。

 

2:「量」ではなく、「質」の高い旅行者数にこだわるべき

 財布の紐が堅い観光客はあまり地域経済にプラスをもたらすことはないでしょう。「安さ」を最優先するため、地域にお金をほとんど落とさないからです。

 観光客数を重視すると、安さ優先の客も必然的に増加します。それによって、観光地を抱える自治体は収益よりもコストが膨らむという事態に陥るため、結果的には魅力度が低下することにつながるのです。

 そうした状況を招かないようにするには、“お得意様” となってくれる「質」の高い観光客をどれだけ呼び込むことができるかが鍵になります。

 世の中にはスイートルームに宿泊することが当たり前という人々がいるのです。普段は欧米圏で生活をする上級階級に位置する人々に「日本という異なる文化圏」を観光したいと思える魅力をアピールできるかが今後の課題と言えるでしょう。

 

 日本国内では民泊が解禁されたことで「ヤミ民泊」など問題が起き始めています。民泊を提供する側は「利用者が起こした問題だから関係ない」と責任転嫁の姿勢を見せるところもある状況です。

 「量」を優先するあまり、「質」の悪化から目を背けたことで地域住民が観光客を毛嫌いするようになれば、“観光立国” とは呼べないでしょう。「量」から「質」への転換点に差し掛かっており、そうした動きを本格化させるべきと言えるのではないでしょうか。