労働時間が青天井になっている状況を野放しにする野党に長時間労働問題を語る資格はない

 国会で『働き方改革』が論点の1つとなっています。

 野党は「現行ルールからの変更」に否定的ですが、この姿勢は評価できるものではありません。なぜなら、“現行ルール” には放置しておくべきではない問題があるからです。

 

1:伊佐進一議員(公明党)が指摘する現行ルールの問題点

 公明党の伊佐進一議員が自身のツイッターで「残業規制に対する法定化の狙い」を次のように説明しています。

画像:伊佐進一議員(公明党)がツイートした内容

 “現行ルール” にはいくつかの問題点があります。これらの問題点を放置・黙認することは労働者が不利益を被ることになるのです。

  • 大臣告示による『限度時間』は存在
    → ただし、法的拘束力はない
  • 『特別条項』を締結すれば、『限度時間』の上限を超えることは可能
  • 『特別条項』における上限時間の存在はない

 つまり、労使交渉で『特別条項』を定めてしまえば、時間外労働に対する制約を青天井にできるという問題点があるのです。

 

 

2:ポンコツ社員は現状維持を望み、若手を中心とした大多数の社員がしわ寄せを受ける

 「労働組合が残業時間の上限を外すような『特別条項』を経営側と結ぶのか」と疑問に思う人が多いでしょう。ですが、実際には締結します。

 なぜなら、本業で結果が残せない人物は「正社員という自らの立場を守るため」に、組合活動に注力せざるを得ないという状況に陥っているからです。その結果、『特別条項』を経営側と積極的に結びたいという動機が存在するのです。

 現状は『時間給』がベースになっている企業が多いでしょう。そうした企業に務める “ポンコツ社員” は残業すればするほど、給与額が大きくなります。

 しかし、平均的に仕事ができる水準に達していれば、何の恩恵もありません。法定労働時間内に『成果』を残せることがほとんどですから、『成果給』ベースの賃金体系に変更されても、給与水準を維持することは容易と言えるでしょう。

 

3:「残業時間の上限規制」と「裁量労働制」で泣きを見るのは誰か

 今国会で議論されている『働き方改革』での主要議題は「残業時間の上限規制」と「裁量労働制」の2つでしょう。

 少なくとも、前者においては野党も賛成を示さなければなりません。ところが、後者(=裁量労働制)を1点批判するだけで、残量時間に対する法的な上限規制には乗り気ではないのです。

 労働時間を厳しく制約されると、評価体系は『時間給』ではなく『成果給』へとシフトすることでしょう。

 そうなると、仕事効率の悪い正社員ほど “風当たり” が強くなるのです。「他に手伝うことはありますか?」と仕事が終わったら聞くべきと主張する “先輩” がいますが、これは『時間給』ベースの考え方です。

 ですが、この指導は「まだ出せていない『自分の成果』を出すことに “あなたの労働力” を出せ」と言っていることと同じなのです。「仕事を割り振るマネジメント」か「担当者の能力」のどちらかが不足しているのですから、仕事のできる人材が後始末をしなければならない状況は是正すべきと言えるでしょう。

 

 その場にいることが重要な仕事は『時間給』をベースにした賃金体系であることは望ましいことは言うまでもありません。店舗や工場などシフト勤務や公共インフラがその典型です。

 多くのホワイトカラー(≒ オフィス勤務者)は「その場にいるだけでは価値を生み出せない仕事」に従事している訳ですから、『成果』によって賃金体系に差がする制度にシフトを促さなければなりません。そうした点でも、『働き方改革』は推進されるべきと言えるのではないでしょうか。