毎日新聞、「憲法改正の国民投票は『絶対得票率』で実施すべき」と現行規則を無視した主張を展開する

 毎日新聞が2月28日付の記事で「憲法改正の国民投票は『絶対得票率』で実施すべき」と主張しています。

 しかし、毎日新聞が主張する方式は「憲法で定められた規定」とは異なります。そのため、提案された方式を採用するためには現行規則に基づく憲法改正が必要なことを完全に見落とした主張と言えるでしょう。

 

■ 毎日新聞が報じた内容

 毎日新聞は2月28日付の記事で次のように報じました。

 改憲が認められる条件は「国民投票で過半数の賛成」。投票率が低ければ「過半数」のハードルは当然下がる。投票率40%なら、全有権者の20%強の「賛成」で改憲が実現する。この仕組みのままでいいのだろうか。

 

 現行の改憲規定に疑問を呈し、『最低投票率』と『絶対得票率』の2つを対案として提示しています。

  • 『最低投票率』
    • 一定の得票率に達しなかった場合、投票自体を不成立とするもの
    • 短所:賛成(または反対)の割合が 90% 超でも、得票率が 0.1% でも達しなければ不成立となる
    • 短所:“ボイコット運動” が起きる可能性あり
  • 『絶対得票率』
    • 「過半数の賛成」と「有権者総数の〇%の賛成」の両方を満たすと成立するという方式

 その上で、毎日新聞は『絶対得票率』を導入すべきと主張しているのです。ただ、現行ルールを無視した主張内容であり、『絶対得票数』に基づく国民投票をするにも憲法改正が不可欠であることを見落としていることが致命的です。

 

■ 事実

1:改憲手順は日本国憲法で定められている

 改憲のプロセスは日本国憲法第96条で次のように規定されています。

第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

  1. 衆議院・参議院の総議員の三分の二以上が賛成すれば、国会が憲法改正を発議できる
  2. 発議された内容は国民の承認を得なければならない
  3. 承認は選挙の際に行われる投票において過半数の賛成を必要とする

 つまり、投票率に関係なく、国民投票で過半数の賛成を得ることができれば、憲法改正は成立するのです。毎日新聞が主張する『絶対得票率』に基づく方式を採用するにも、上述のプロセスで国民から承認されなければならないのです。

 

2:棄権は「確定結果に従う」という意思表示

 投票自体を棄権する(=権利を行使しない)人もいるでしょう。ただ、その行為は「確定結果に従う」という意思表示に過ぎません。

 「与党は有権者全体から見れば、〇% しか得票していない」との主張をする野党支持者もいます。そうした主張をする人物には「投票に行かなかった人はすべて自分たちの主張を支持している」と思い込む傾向があります。

 この “思い込み” が野党やマスコミの目を曇らせているのでしょう。

 投票を棄権した人は「確定判決に従う」との意思表示をしたのであり、特定の政治的主張を支持している訳ではないのです。潜在的な支持者と言うこともできますが、それは与野党に関係なく言えることであり、野党の潜在的支持者ばかりではないということに留意が必要です。

 

 「憲法を守れ」と主張しつつ、憲法で規定された「国民投票の規定」に注文を付ける。明らかに矛盾する内容であり、毎日新聞は護憲派のメディアとして知性が不足していると言わざるを得ないのではないでしょうか。