ドイツで政権発足が現実となるも、今度はイタリアに政権発足の暗雲が立ち込める

 連立交渉が続いていたドイツで政権発足が確実になったと NHK が伝えています。

 ドイツ議会第2党の社会民主党(SPD)が党員投票の結果、連立政権樹立が支持されたとのことです。これでヨーロッパが安定するかと思いきや、3月4日に行われた総選挙で今度はイタリアが政権発足の危機に瀕するという状況に陥っています。

 

 第2党で中道左派の社会民主党は4日、メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟との連立の是非を問う党員投票の結果、賛成が66%に達したと発表しました。

 これによりメルケル首相は、今月中旬にも開かれる連邦議会で首相に再選され、4期目の政権を発足させることになり、5か月を超えた政治空白がようやく解消されることになりました。

 欧州のリーダーであるドイツでは2017年秋に行われた議会総選挙後、連立交渉がまとまらず、政権発足ができない状況が続いていました。

 およそ半年にも及んだ交渉の末、議会第1党 CDU/CSU と議会第2党 SPD との間で大連立を継続することになりました。これで EU は安定へと向かうことでしょう。

 しかし、安心することはできません。なぜなら、3月4日にイタリアで行われた議会総選挙で今度はイタリアで政権発足に暗雲が立ち込める事態になりつつあるからです。

 

1:批判が大きかった選挙制度が変更になったイタリア

 イタリアでは「第1党となった政党連合が議会下院の過半数に達しなかった場合はボーナス議席を与え、340議席(定数630)とする」という規則があり、批判を招いていました。

 そのため、2013年に行われた前回の総選挙では『中道左派連合』が得票率 29.55% であったにもかかわらず、340議席を得るという事態が頻発していました。得票率の配分をすれば186議席なのですから、ゲタを履いていた状態と言えるでしょう。

 また、同じく比例選挙で選出される上院は選挙区の区割りが下院とは異なる上、ボーナス議席制度がなく、“ねじれ” が生じやすいという問題点もありました。

 それが今回2018年の選挙から撤廃されました。したがって、議会で過半数を超える議席を持つように政党間で連立政権を樹立させなければならない状況となったのです。

 

2:『5つ星運動』が政党としての最大得票率を記録

 議会で過半数を獲得することが必須となったイタリアですが、選挙結果を見ると困難が待ち受けていることは明らかと言えるでしょう。

  • 中道右派連合:37.05%
    • 同盟(旧・北部同盟):18.21%
    • フォルツァ・イタリア:13.84%
    • イタリアの同胞:4.31
    • ノイ・コン・イタリア:1.28
  • 5つ星運動:31.88%
  • イタリア・公共の利益(中道左派):23.48%
    • 民主党:19.17%
    • ピウ・ヨーロッパ:2.65%
    • インシエメ:0.57%
    • トレント自治運動:0.45%
  • 自由と平等:3.46%

 『5つ星運動』が 30% を超える議席を持っていますが、他の政党(や政党連合)は連立に否定的な姿勢を示しています。反 EU や地域政党が強い存在感を放っており、どのような連立政権が樹立するかが注目点と言えるでしょう。

 

 ヨーロッパでの比例選挙では “足切り” となる阻止条項が設けられています。それでも、少数政党が乱立し、政権発足するかどうかのゴタゴタが選挙後に発生しやすいという状況に置かれているのです。

 日本に与える影響はドイツと比較すると小さいはずですが、G7 の一員であるイタリアのゴタゴタはあまり歓迎すべきこととは言えないのではないでしょうか。