東日本大震災、津波で被災した集落跡地に買い手や活用策が見当たらないのは仕方のないこと

 東日本大震災では津波による甚大な損害が発生しました。

 その後の対策の1つとして「被災した集落を内陸の高台に集団移転させる」という事業が進んでおり、跡地の活用策として(維持管理費がかかる)公園が目立っていると読売新聞が伝えています。

 現状では被災した地域の土地を新たに購入するメリットはありません。そのため、活用策が限定されることは止むを得ないと言えるでしょう。

 

 東日本大震災で被災した集落を内陸側へ集団移転させる事業で、岩手、宮城、福島3県の市町村が、被災者から買い取った沿岸部の土地2088ヘクタールのうち、約7割の活用策が固まったことが、読売新聞の調査でわかった。

 復興の仕上げ業務ともいえる移転跡地の利用にめどが立った反面、維持管理費がかかる公園などの用途も目立っており、将来にわたる負担ともなる。

 土地は “誰か” が管理していなければ、荒地になることは当たり前です。買い手が現れれば、土地の所有者が「地価を維持する」という意味でも一定の管理を行うことでしょう。

 しかし、「購入するだけの価値を見出せない」と判断されることになれば、売値すら付かない状況となるのです。

 

1:「跡地の有効策は限られている」という現状

 問題は「移転跡地の有効策が限られている」という点に集約されると言えるでしょう。

画像:津波による高台移転と跡地利用の問題点

 まず、住民は「津波で被災するリスク」を軽減させることを目的の1つに高台などへ移転しました。

 もちろん、有効な対策を予算の範囲内で講じることができれば、移転する必要はありません。しかし、堤防を増強するなど巨額の費用を計上する必要があるため、高台に移転する方が予算は少なくて済む可能性があるという状況にも目を向けなければなりません。

 また、住民が移転すると、住民向けにサービスを展開する事業者(例えば、飲食業やスーパー)も移転します。そのため、「人口減少の負のスパイラル」が加速しやすい状況にあるのです。

 

2:「津波で被災するリスク」を容認できる業種を誘致できれば理想的

 跡地が公園であることのマイナス面は「行政が維持管理費を拠出する責任がある」という点でしょう。そのため、公園維持費に予算が割かれるため、他の分野に影響が出ることは避けられないからです。

 民間が土地を所有すると、行政側は維持管理費を支出する必要がなくなる上、固定資産税を手にすることになります。

 ただ、その対象となる土地が「津波で被災したこと」を理由に住民が移転したため、買い手が現れる可能性は少なくて当然なのです。『津波の被災リスク』を容認できる業種を手がける企業を誘致できれば理想的ですが、現実には難しいでしょう。

  • 少ない従業員で事業が成り立つ
  • 高額な設備投資を必要としない

 避難する必要性があることを考慮すると、少ない従業員で事業が成立することは重要です。また、波で設備が全損するリスクもあるため、高額な設備投資が必要な企業が進出する見込みは低いと考えられます。

 

3:三重県の『なばなの里』が参考になるだろう

 三重県にあるナガシマリゾートには『なばなの里』という施設が存在します。“花まつり” や “イルミネーション” で知られており、このビジネスモデルを参考にすることは可能と言えるでしょう。

 季節に合った花畑を維持するには予算がかかりますが、観光客を呼び込む効果を得られます。「インスタ映え」との言葉もあるだけに “用地” を準備し、「日本屈指のエリア」となれば、マスコミ向けの宣伝にもなると考えられます。

 移転した跡地がまとまって存在するなら、養蜂業を誘致することもありでしょう。人家の隣接地で養蜂業を展開するハードルは高いのですが、集落が移転した跡地では参入しやすい状況です。

 「季節に合った花畑」から 1〜2km 離れた場所に巣箱を点在させれば、ビジネスになるはずです。また、海岸に近いエリアや海抜の低いエリアは頑丈なビルの屋上に巣箱を設置することで「津波による被災リスク」を極めて限定的にできる訳ですから、そうした取組を検討する価値はあると言えるでしょう。

 

 復興特別増税という形で予算を使った状態であるため、「復興のため、さらなる予算増額を」という主張は反感を招くことになるでしょう。

 そのため、保有している資産をどのように活用するのかが “腕の見せ所” となります。人を惹きつけるには独自色を打ち出すことが不可欠であり、復興においても地域の特色を出す必要があると言えるのではないでしょうか。