『中立な報道』という建前がなくなって困るのは偏向放送に手を染めている既存メディアだ
共同通信によりますと、安倍政権が放送制度改革として「政治的公平を求めた放送法の条文(=放送法4条)を撤廃する」など規制緩和に舵を切る方向で検討しているとのことです。
2年前まで「放送法4条に基づく停波処分はあり得ない」と主張してきたメディアが『放送法4条の撤廃』を懸念し、議論を呼ぶと述べているのです。あまりに “ご都合主義” だと言えるでしょう。
安倍政権が検討している放送制度改革の方針案が15日、明らかになった。テレビ、ラジオ番組の政治的公平を求めた放送法の条文を撤廃するなど、規制を緩和し自由な放送を可能にすることで、新規参入を促す構え。放送局が増えて、より多様な番組が流通することが期待される一方、党派色の強い局が登場する恐れもあり、論議を呼ぶのは必至だ。
“党派色の強い放送局” が存在することは問題ではありません。なぜなら、日本では『表現の自由』が保証されているため、特定の党派色による意見が地上波で流れることに対しては理解されるべきです。
しかし、誤報・捏造放送は別です。
“党派色の強い放送局” が政治的に支持する政党を応援する目的で誤報・捏造に基づくプロパガンダ放送を行うことが想定される訳ですから、訂正放送を行うためのプロセスやフローを定めておくことは必須と言えるでしょう。
1:誤報・捏造に対する検証をせずに済む現状が諸悪の根元
例えば、多くのテレビ局が『反原発』を掲げ、事実とは異なる内容の誤報・捏造に基づく放送で福島県に対する風評を与えて来ました。
既存放送局でこの状況なのです。「放送内容の正確性」と “党派色の強い・弱い” の比例関係は少ないと言えるでしょう。ただ、政治的に対立する政党に対する誤報・捏造放送が増加する懸念はあります。
そのため、次のような訂正放送の指針を法で定めておくべきです。
- 『番組A』で取り扱った「ニュース(1分間)」が誤報・捏造だった場合
- 『番組A』の中で「1分間の訂正放送」を行う
- 『番組A』の「1分間のCM広告料」を賠償金として支払う
上記のペナルティーでも軽いほどでしょう。現状は「先ほどのニュースに誤りがありました。正しくは〇〇です。お詫びして訂正します」と5秒ほどで終わってしまうのです。この点は是正しなければならない事項なのです。
2:『放送法4条』を空文化させることに熱心だったマスコミ業界
「安倍政権が放送法4条の撤廃を打ち出す見通しである」と報じられ、マスコミは『反対』の論調を展開しています。
しかし、この主張は欺瞞と言えるでしょう。なぜなら、わずか2年前には放送法4条を空文化させようとするキャンペーンを展開していたからです。例えば、朝日新聞が『「停波」発言 放送局の姿勢を見たい」と題した2016年3月7日の社説です。
様々に解釈できる「政治的公平」を定めた第4条を、停波という処分と結びつけるべきではない。番組が政治的に公平か否か、自身も政治家である大臣が判断することには矛盾がある。
(中略)
実際は萎縮していないとしても、視聴者が「政権の意に沿った放送だろう」と疑えば、テレビ報道は信頼を失う。高市氏の発言は結果として、こうした疑念を膨らませている。社会にとって大きな損失である。
在京キー局のトップはみな、記者会見で高市氏の発言について問われ、「放送は自主自律」と答えている。その覚悟を具体的に示してほしい。
「政治的に公平であるかは放送局が判断する」と主張し、「在京キー局はその覚悟を示せ」を呼びかけているのです。民放連もこの主張に同調しているのですから、安倍政権が放送法4条を撤廃する意向を示したことは歓迎すべきことと言えるでしょう。
3:『公平中立な放送』という建前が消滅するマスコミが文句を言っているだけ
マスコミが放送法4条の撤廃に文句を述べ、懸念を示しているのは「公平中立な放送である」との建前を失うからでしょう。
現行ルールではどれだけ偏向放送をしたとしても、『放送法4条』に基づく行政処分を受けない限り、「番組は公平中立な視点で作成・放送されている」と主張できるのです。
しかし、『放送法4条』が消滅すれば、「公平中立な放送である」という根拠がなくなるのです。これまでは「公平中立な放送」という建前を掲げ、偏った放送をすることができました。
それが視聴者からの「公平中立な放送とは何を根拠に述べているのか」という問いに対し、テレビ局自らが『公平中立な放送』であることを証明しなければならなくなったのです。“建前” が完全に使えなくなるのですから、中立の振りをしていたメディアが文句を言っているに過ぎません。
自由化に進むなら、メディア(テレビ)業界も電力会社のような自由化をすべきでしょう。
コンテンツ製作会社に “丸投げ” している訳ですから、在京キー局は様々な製作会社が提供するコンテンツを放送することに特化し、チャンネルを提供する形となっても良いはずです。
強大な影響力を好き勝手に行使できる状況が黙認され続けてきた業界に改革の波が押し寄せることは当然のことと言えるのではないでしょうか。