イタリア議会の上下両院で議長が選出できず、政治の空白化が始まる

 NHK によりますと、3月上旬に行われた総選挙の結果を受けた議会が開かれたものの、上下両院で議長を選出することができなかったとのことです。

 イタリアの選挙で見落とせないのは「EU に懐疑的な政党の得票率が極めて高い点」です。そのため、どのような政権が発足するにせよ、EU を取り巻く火種が燻り続けることになるでしょう

 

 イタリアでは今月行われた議会選挙のあと、初めての議会が開かれましたが、上院、下院ともに今後の連立協議を進めるうえで重要とされる議長を選出できず、政治の空白が長期化する懸念も出ています。

 今月4日に行われたイタリアの議会選挙では、最大勢力となった「中道右派連合」のうち、厳しい移民規制を訴える右派政党の「同盟」が最も多く得票したほか、既成政治の打破を掲げる新興政党の「五つ星運動」が単独の政党としては議会第一党となりました。

 しかし、いずれも過半数の議席を獲得できず、この2つの政党を軸に連立協議が行われる見通しとなっています。

 

1:2018年・議会総選挙後の議席数

 2018年3月に行われた議会総選挙で、下院の議席数は下表のようになりました。

表:イタリア議会・下院の議席数(2018年総選挙後)
政党・会派 得票率 議席数



同盟(旧・北部同盟) 17.37% 124
フォルツァ・イタリア 14.01% 106
イタリアの同胞 4.35% 31
ノイ・コン・イタリア 1.30% 4
合計 37.0% 265
5つ星運動 32.7% 227



民主党 18.72% 112
ピウ・ヨーロッパ 2.55% 3
インシエメ 0.60% 1
シビカ・ポポラーレ 0.54% 2
トレント自治運動 0.41% 4
合計 22.9% 122
自由と平等 3.38% 14

 今回の選挙から評判の悪かった “ボーナス議席制度” が廃止されたため、得票率と議席数に大きな乖離が存在するような事態は解消されています。

 上院でも同様の議席配分となっており、政党別では『5つ星運動』が3割強の得票率を獲得。相応の議席数を得ることになりました。会派としては『中道右派』が『5つ星運動』を上回っており、4割弱の得票率となっています。

 

2:『EU に親和的な政権』がイタリアで誕生する可能性はゼロ

 イタリアの総選挙結果は EU にとって、頭痛の種となるでしょう。なぜなら、EU に懐疑的な政党である『5つ星運動』と『同盟(旧・北部同盟)』が大きな議席数を手にしたからです。

  • イタリア下院(議席数:630)
    • 同盟(旧・北部同盟):124
    • 5つ星運動:227
  • イタリア上院(議席数:315)
    • 同盟(旧・北部同盟):58
    • 5つ星運動:112

 『5つ星運動』と『同盟(旧・北部同盟)』が2018年の総選挙で獲得した議席数は上下両院とも 50% を超えるのです。これは EU に懐疑的な姿勢を採る政党を支持した有権者が過半数を超えていたことを意味しています。

 “EU の不安定要素” になることは既に確定しているのですから、「どれだけ安定させられるか」は EU 側の出方次第になっていることは自明なのです。

 

 イタリアがドイツと異なるのは「大連立の可能性」がすでに潰えていることでしょう。数字上は『中道右派』と『中道左派』の大連立は可能ですが、今まで与党だった『中道左派』が『中道右派』のための “数合わせ” になるとは考えられないからです。

 現状では「EU に懐疑的な政党による連立政権が発足する」という可能性が最も現実的です。難民が押し寄せることで南イタリアを中心に大きな影響が出ており、それにイタリア国民が NO を突きつけることとなりました。

 しばらくは混乱が続くと言えるのではないでしょうか。