有効性と限界を示した膳所高校(滋賀)の超データ野球

 第90回選抜高校野球の大会2日目に『データ野球』に基づく守備陣系を採用する膳所高校(滋賀)が登場し、注目を集めました。

 試合は 10-0 で対戦相手の日本航空石川高校(石川)に軍配が上がりましたが、『データ野球』の有効性を示していました。ただ、それと同時に限界も見えた試合だったと言えるでしょう。

 

正しいデータ分析に基づく守備体系は極めて有効

 『データ野球』が機能するかは「正しいデータ分析ができているか」という点に集約されます。

 膳所高校の分析班は結果で「正しい分析力を有している」と示すことに成功しました。三遊間の真ん中にサードがいたり、右中間を襲った痛烈な当たりがセンターのほぼ正面を突いたりとデータ分析に基づく守備位置による効果を得ていました。

 「本来の守備位置にいれば、楽にアウトにできていた打球で出塁を許した」というケースがあまりなかったため、データ解析の波が高校野球界に押し寄せることになると言えるでしょう。

 ただ、『データ野球』の限界も見えた試合となりました。

 

『データ分析』では “個の能力” を完全に補完することはできない

 試合結果が大差となった理由は「膳所高校(滋賀)の守備力が出場校の中で劣っていたから」でしょう。

 良いポジショニングをしていましたが、野手の想像を上回る打球の速度に戸惑いが見え、本来のプレーができていなかったからです。外野陣が全国区の強豪校の打球スピードに慣れていれば、防げた得点もあっただけにこの点が課題と言えます。

 ただ、“高校球児の中ではトップクラスの打球” に慣れておくことは簡単ではありません。大学生や元プロ野球選手という人材が実際にボールを打つことが必要となりますので、さらなる解決策を講じることが求められていると言えるでしょう。

 

 膳所高校の現時点での実力では限界が見えた『超データ野球』ですが、「チーム力を上乗せする」という点で効果があると示すことに成功しました。

 データを上手く活用するノウハウを確立させた学校が『効率的なトレーニング』で選手を成長させ、データに基づく『的確な守備陣系』を駆使して、優勝候補本命に挙げられるような強豪校との差を大きく縮めることが可能になったと言えるでしょう。

 この点においても、膳所高校が残したインパクトは大きいですし、出場権が与えられるだけの価値は十分にあったと言えるのではないでしょうか。