米中貿易摩擦が深刻化する状況があるのだから、安倍首相はトランプ大統領に「TPP 加入」を呼びかけるべき
NHK によりますと、アメリカ・トランプ大統領が知財侵害を行う中国に制裁措置を拡大すると検討している方針に対し、中国は報復措置を用意しているとのことです。
おそらく、米中両国ともに “返り血” を浴びる結果になることが濃厚です。日本経済もトバッチリを受ける可能性がありますが、政府の動き次第ではプラスの効果を得られる見込みがあるだけに安倍政権の動きが重要と言えるでしょう。
アメリカは、中国による知的財産の侵害の問題を受けて、通商法301条に基づく制裁措置を検討していて、3日、500億ドルの輸入品に関税を課す原案を発表したのに続き、5日には、この額をさらに1000億ドル積み増すことを検討すると明らかにしました。
これを受けて、中国商務省の高峰報道官は6日夜、緊急の記者会見を開き、「これは貿易の保護主義と自由貿易の間の闘争だ。自由貿易が脅かされるようであれば、世界経済全体の回復にとっても重大な脅威となる」と述べ、強く批判しました。
そのうえで、「アメリカが1000億ドルの課税リストを公表した場合、われわれはためらうことなく直ちに強力な反撃を行う」と述べ、報復措置を用意する構えがあることを強調しました。
中国が知的財産を侵害していることは揺るぎようのない事実
中国が「不公正な貿易」や「投資規制」という形で知的財産権を侵害していることは事実です。
電化製品のソースコード開示を要求したり、自動車メーカーに合弁企業の設立を強制したりしていることが実例です。本来であれば、WTO がこのような中国政府の姿勢に制裁を加えていなければならないことなのです。
しかし、『途上国待遇』という形の “特別待遇” をしており、ルールそのものが形骸化しているという問題点があるのです。
貿易摩擦は当事国が “返り血” を浴びる上、第三国にも “飛び火” する
アメリカと中国が互いに関税をかけ合う『貿易摩擦』が激しくなければ、双方が “返り血” を浴びることになります。「相手に損害を与えること」に目的を置いた措置を講じるのですから、当然の成り行きと言えるでしょう。
当事国だけの影響で留まるのであれば、好きなだけやれば良いことです。
ところが、グローバル化が当たり前となった現代では第三国にも “飛び火” する恐れがあります。例えば、中国への輸出が主力事業の1つとなっているアメリカ企業と取引関係がある日本企業は米中貿易摩擦の影響を受けることになります。
直接的な当事者でなくとも、工場用機械・農業用機械といった形で間接的に関わっているケースが想定できるだけに『貿易摩擦』が激しくなることは歓迎できることとは言い切れないのです。
安倍政権はトランプ政権に「TPP 復帰」を促すべき
トランプ政権は通商政策において、関税措置を活発化させることでしょう。ただ、中国など報復措置を敢行する政府も存在することが予想されるだけにアメリカが “返り血” を浴びることにもなるはずです。
そこで日本政府(=安倍政権)は首脳会談などの場でアメリカ政府に「TPP 復帰」を促すべきです。
麻生財務相・副総理は「日米二国間FTA交渉には応じない」と宣言しています。この路線を継続し、「貿易戦争で返り血を浴び続けるより、TPP に復帰し、(不公正な貿易で他国に損害を与える)中国にダメージを与えるべき」と呼びかけるべきなのです。
鉄鋼やアルミ製品での関税は痛いものがありますが、アメリカを TPP に加入させれば、マイナスは十分に取り戻すことができるでしょう。
北朝鮮情勢に加え、TPP など通商交渉も同時に並行してやるべき重要な案件と言えるのではないでしょうか。