藤田俊哉氏が提唱する「西野ジャパンの布陣」と「長谷部のリベロ起用」には大きな問題がある

 ハリルホジッチ監督を解任した日本サッカー協会(JFA)は後任に西野朗氏と使命しました。

 元日本代表の藤田俊哉氏は協会の方針を評価し、「西野ジャパンの理想的なスタメン」に言及しています。ただ、このシステムを採用しても、現実に結果を出すことはできないでしょう。なぜなら、戦術的な穴が存在するからです。

 

藤田俊哉氏が提案するシステム

 藤田氏が主張するシステムは以下のものです。

画像:藤田俊哉氏が提案する西野ジャパンのシステム

 4-1-4-1 が基本形となり、攻撃時には長谷部選手がセンターバックの間に下がって3バックを形成。香川・本田の両選手は中央(左右のトップ下)で攻撃に厚みを持たせようとする形と言えるでしょう。

  • 長谷部を「ボランチ」から「リベロ」にコンバートすべき
  • 活動量の多い選手がキープレーヤーになる
  • 失点したくないから、ウィンガーは置かない

 この3点が提案の骨子として言及されていることですが、戦術的な “穴” を容認する考えであり、デメリットの方が問題と言えるでしょう。

 

ウィンガーが守備をしないと、サイドで数的不利を作られる

 ウィンガーを起用すると、守備力は落ちるでしょう。ウィングで起用される選手は「攻撃が持ち味」であり、守備は得意ではないからです。

 しかし、「ウィンガーは守備をしなくて良い」という “特権” を有している選手は世界でも皆無です。

 ウィンガーが守備を怠れば、サイドバックが1人で対応することを余儀なくされます。「相手ウィンガーとオーバーラップしたサイドバック」を相手に1人で守りきれる DF はいないでしょう。

 サイドが突破されれば、深い位置から良質なクロスが中央に届けられることになります。デュエルが強いとは言えない日本代表としては避けるべき事態と言えるでしょう。

 

運動量の乏しい(=上下動の期待ができない)香川と本田に “どの位置での守備” を任せるのか

 藤田氏の提唱するシステムには「守備時の弱点が浮き彫りになる」という問題があります。特に、香川・本田といった知名度のある攻撃的選手の守備位置と役割でしょう。

  • 運動量の少ない香川と本田に 4-1-4-1 で起用すると、サイドの守備は期待できない
  • 長谷部をリベロの位置に下げると、ボランチの脇を(守備力が高いとは言えない)香川と本田が守ることになる

 まず、ワンボランチを使うチームがほとんどない理由は「ボランチの脇のスペースを相手チームに利用されるから」です。これはシステム上の問題であり、選手の能力だけで補うには無理があります。

 4-1-4-1 では “運動量のある選手” がカバーをすることでしょう。しかし、守備免除の特権を持つ香川・本田の両選手をサイドで起用すると、サイドの守備にも穴ができることになるため、守備に追われる時間が増えることが予想されます。

 また、日本がポゼッション時にボールロストをすると、中央を香川・本田という守備力の高くない選手が DF の盾として機能することが要求されることになるのです。これは守備のリスクが高すぎると言えるでしょう。

 

3-0 や 4-0 と勝負が決した試合の最終盤で1点を返すことが目標なのか?

 藤田氏は次のようにも言及しています。

 現体制のままワールドカップに臨んだとしても、おそらく1勝はおろか、勝点1、1ゴールすらも奪えずに大会を後にするだろうと見ていたのだ。

 「1点を取ること」が最重要なら、守備ではなく攻撃に比重を置く提案は理にかなっています。

 グループ突破を目標にするチームはセーフティーリードを手にすると、試合のペースを落とすでしょう。勝敗の行方が決した後に攻撃的な選手をピッチに多く立たせていれば、1点は取れる可能性が高いからです。

 「〇〇が意地の一発も、日本は敗れる」という見出しを作ることができれば、満足なのでしょうか

 前線の FW はパスコースを制限するなど “守備の1手目” という重要な役割を担うことがヨーロッパ最高峰の舞台である UEFA チャンピオンズリーグでは当たり前となっています。ポゼッションサッカーでは DF の足元の技術が要求されることと同様に、FW の守備力も要求されているのです。

 試合が決まった後に生まれたゴールにそれほどの価値はありません。中山雅史選手が初ゴールを決めた98年のフランスW杯の時とは時代情勢が大きく変化したことを自覚する必要があると言えるでしょう。

 

 「チームの勝利」よりも「選手が希望するプレースタイル」が優先されている状況ですから、散々な結果になる可能性が高いという現実を見る必要があると言えるのではないでしょうか。