『日中ハイレベル経済対話』が実施されるのは良いこと、日本の国益を確保するための交渉に注力すべき

 約8年ぶりとなる『日中ハイレベル経済対話』が東京都内で開催されたと NHK が報じています。

 中国の資源泥棒などで関係が良好とは言えない状況ですが、関係改善の糸口は残しておかなければなりません。日中両国でバランスの取れた経済関係を構築するための話し合いは必要と言えるはずです。

 

 「日中ハイレベル経済対話」は、沖縄県の尖閣諸島の国有化などの影響で、平成22年8月を最後に行われていませんでしたが、16日、およそ8年ぶりに東京都内で開催され、両国の経済関係の閣僚が出席しました。

 冒頭、日本側の議長を務める河野外務大臣は「世界の経済状況は大きく変化しており、日中両国が果たす役割も増し続けている。視点を新たに、協力と連携の在り方を考えていく必要がある」と述べ、経済分野での連携強化の必要性を強調しました。

 また、中国側の議長で国務委員をかねる王毅外相は「今回の対話が、両国関係の改善と発展に前向きな役割を果たし、経済協力にも新たな原動力を付け加えると確信している」と応じました。

 

“中国市場” は魅力的だが、“市場のルール” は魅力的ではない

 日本の10倍の人口を持つ中国市場が魅力的であることは間違いありません。言語についても、北京語が標準語という扱いですから、魅力的なマーケットだと言えるでしょう。

 しかし、中国市場のルールが魅力度を減少させているのです。

 合弁企業の設立を義務付けたり、技術移転やプログラムコードの強制開示など進出する企業が資産を損なうような要求をされている状況なのです。

 この部分を解消できなければ、日系企業が中国市場で収益を上げることは難しいでしょう。中国に対する “仕送り” を続けてきた時代とは一線を画す「日中の経済関係」の構築をすることができるかが試されているのです。

 

RCEP の内容をどれだけ TPP に近づけられるかがポイント

 中国との経済協定は RCEP (東アジア地域包括的経済連携)を通して交渉中です。

 TPP と比較するとニュースで取り上げられる機会は少ないのですが、TPP と似た経済協定の締結に日本政府が動いていることは知っておくべきでしょう。RCEP の交渉参加国には中国・インド・韓国などが含まれています。

 これらの国々は TPP に参加していません。また、自国産業保護などを強く要求する国もあり、交渉妥結への道筋が見えていないことが現状です。

 日本としては「RCEP での締結内容をどこまで TPP に近づけられるか」がポイントです。中国は「自由で開かれた経済」を求める声明を出していますので、それを活用し、RCEP を取りまとめるために中国にも “汗かき役” としての存在感を発揮させるべきと言えるでしょう。

 

『日中ハイレベル経済対話』を実施する中で、中国の資源泥棒に釘を刺す必要はある

 中国は過去に日本の海洋資源を無断採掘するなど、資源泥棒を働いてきた前科があります。『日中ハイレベル経済対話』をすることで、それらの行為が免罪される訳ではないのです。

 その点は中国側に伝達しておかなければなりません。

 “損害分の賠償” となる利益を確保することは必須ですし、「同様の行為が再発するようでは両国関係が良好になることはない」と事前に釘を刺しておくことが重要です。

 それでも、守られなかった場合は報復に出る必要があります。一辺倒となるほど依存するのではなく、「魅力的な国外輸出先市場の1つ」という形となるような経済関係を構築できるかが注目点となります。

 

 『日中ハイレベル経済対話』は再開の第1歩が踏み出されたばかりで、成果が出るのは少し先のことになるでしょう。“フェアな経済関係” が構築されることになるのかに注目と言えるのではないでしょうか。