救難飛行艇『US-2』の製造技術移転にメーカー間が合意、インド輸出に向けての動きが進む

 NHK によりますと、海上自衛隊が運用する救難飛行艇『US-2』のインド輸出に対し、メーカー間での技術合意が成立したとのことです。

画像:救難飛行艇『US-2』

 製造元である新明和工業が技術移転に納得しているのであれば、輸出に向けたハードルを1つ乗り越えたと言えるでしょう。日本以外にも顧客を持つことは良いことと言えるはずです。

 

 日本政府は防衛装備移転三原則に沿って、安全保障で協力関係にあるインドへ輸出するためインド政府との間で協議を続けていますが、インド側は一定数の機体をインド国内で生産することを条件に挙げ、技術移転を求めてきました。

 こうした中、インドの有力財閥「マヒンドラ」傘下の軍事装備品メーカー「マヒンドラ・ディフェンス」は、先週、インド南部で開かれた兵器の国際見本市で、「US-2」を製造している新明和工業と、機体の製造や組み立てなどで協力することで合意し、覚書を交わしたことを明らかにしました。

 (中略)

 今回、メーカーどうしが協力で合意したことでインド国内での製造に向けた基礎固めができたことになり、今後、USー2の輸出へ向けた両国政府の協議が大きく進展する可能性が出ています。

 

製造元が製造技術の移転に合意したことは大きい

 製造元である新昭和工業が製造技術の(部分的な)移転に納得しているのであれば、外野が騒ぐのは野暮なことです。

 『US-2』を運用(=購入)しているのは日本では海上自衛隊です。島国である日本が必要とする性能を持った救難飛行艇ですが、予算や運用可能機体数には限度があるため、メーカー側が “新しい市場” を求めることは自然の成り行きと言えるでしょう。

 一方、マヒンドラ・ディフェンス(やインド政府)は「雇用創出」を重視していたと思われます。

 アラビア海やベンガル湾に面するインドは日本と同じ海洋国であり、救難飛行艇のニーズが存在する状況でした。新昭和工業が自社利益を確保し、日本が国防上の不利益を被らないのであれば製造技術の移転を問題視する必要はないのです。

 

インド以外にも『US-2』の輸出先は存在する

 インドには「製造技術の移転」という形で輸出の合意に達しそうですが、理想は「日本で製造した飛行艇を輸出する」というものでしょう。その場合の輸出先がない訳ではないのです。

 安倍政権は日本・インド・オーストラリア・ハワイ(アメリカ)を頂点とする『セキュリティー・ダイヤモンド構想』を掲げています。つまり、これらの国はいずれも海洋国であり、救難飛行艇『US-2』の輸出先になり得る国なのです。

 オーストラリアやアメリカに『US-2』の売り込みをかける意味はあるでしょう。

 その際の注意点は「安易な技術移転には応じないこと」です。「オーストラリア側の技術移転要望に応じず、潜水艦の受注を逃す」という件がありましたが、この対応は間違いではありません。

 『US-2』についても、同じ姿勢で交渉をスタートさせる必要があると言えるでしょう。

 

 救難飛行艇『US-2』の輸出は「救助の自由度が向上」し、「日本の安全保障にも貢献する」という相乗効果が期待できるのです。製造メーカーの利益源である製造技術がきちんと守られているのであれば、輸出については応援する声が大きくなっても良いと言えるのではないでしょうか。