安倍政権の外交成果を絶対に認めない朝日新聞、「乏しい成果」との批判を行う

 朝日新聞・佐藤武嗣編集委員が4月19日付で「トランプ氏に押し切られ、出し抜かれ…首相、乏しい成果」とのタイトルの記事を書いています。

 「乏しい効果」とのことですが、朝日新聞は「安倍首相が今回の訪米でどのぐらいの成果を出すもの」と期待していたのでしょうか。その点を明確にした状態で論評しなければ、後付けで書き手が好きなように評価を下すことが可能になる実態を把握する必要があると言えるでしょう。

 

 米フロリダ州のトランプ米大統領の別荘地を訪問中の安倍晋三首相は18日(日本時間19日)、日米首脳会談の2日目に臨んだ。日本との貿易不均衡に不満を募らすトランプ氏が、二国間の自由貿易協定(FTA)の早期協議を強く迫り、首相も通商問題を二国間で協議する新たな枠組みを設置することで合意した。

 朝日新聞が報じた記事の論調は以下のものです。

  • 通商面
    • アメリカに TPP 復帰を促す考えも、トランプ大統領がツイッターで事前に否定
    • 二国間の貿易協議の場を設けることで押し切られる
    • 鉄鋼・アルミ関税撤廃の成果を得られず
  • 外交面(=北朝鮮情勢)
    • ポンペオ CIA 長官が極秘で北朝鮮を訪問
      → 安倍首相はトランプ大統領に出し抜かれた
    • 拉致問題の解決が “他国任せ” では道筋を描くこともおぼつかない
    • 日本の対北朝鮮政策が練り直しを迫られることは間違いない

 内容は「安倍政権を批判するため」という主張で成り立っており、記事そのものにも問題があるレベルと言えるでしょう。批判するために都合の良い出来事のみをピックアップしているからです。

 

通商交渉は「引き分け(=ドロー)」で終わった

 朝日新聞は「安倍政権が期待するアメリカの TPP 復帰はトランプ大統領が事前に否定した」との理由で、安倍政権を批判しています。しかし、日米 FTA を期待するアメリカも、「FTA 交渉には応じない」と麻生財務相に釘を刺されているのです。

 また、「二国間で貿易協議する新たな枠組みを設ける」との発表から押し切られたと結論づけていますが、内容を意図的に隠していることが問題です。

  • 日本名:自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議
  • 英語名:talks for free, fair and reciprocal trade deals

 読者に「『枠組み協議』に合意した」との印象を朝日新聞(や佐藤編集委員)は抱かせたいのでしょう。しかし、英語では "talks" であり、「意見交換の場を設ける」との意味合いが強いのです。

 日米の双方が期待する結果(日本は TPP、アメリカは FTA)を得ていないのですから、「押し切った」との評価は不適切です。朝日新聞は「安倍首相が今回の訪米でトランプ大統領に TPP 再加入を決断させること」が成果の判断基準としていたのでしょうか。評価基準を明記することもメディアの責務と言えるでしょう。

 

「北朝鮮情勢についての成果」は認められる

 次に、安倍首相の北朝鮮外交は「圧力と対話」という方針です。

 経済制裁を科す形で「圧力」を加え、米朝首脳会談という「対話」という形になったのです。朝日新聞は「圧力がなくても、北朝鮮は対話に応じた」と主張したいのでしょうか。その認識が間違いであることは北朝鮮が示してきた態度が示していると言えるでしょう。

 「日本は蚊帳の外に置かれた」と左派は主張したいのでしょうが、そもそもの認識に誤りがある状態です。中国が主導する AIIB (アジアインフラ投資銀行)の件と同じ轍を踏んでいることを思い出さなければなりません。

 ポンペオ CIA 長官が北朝鮮を極秘訪問したことで「トランプ大統領に出し抜かれた」と(朝日新聞が)言うなら、安倍首相だけでなくムン・ジェイン大統領(韓国)や習近平総書記(中国)も出し抜かれたことになります。

 北朝鮮情勢は “具体的な進展” を見せておらず、日本の対北朝鮮政策を急いで変更する必要性は現時点では皆無なのです。少なくとも、拉致問題が解決するまで国交正常化に向けた動きを本格化させる必要はありませんし、ましてや経済協力金の拠出など以ての外という姿勢を貫く必要があるのです。

 

 「アメリカとの通商交渉」にせよ、「北朝鮮情勢」にせよ、これからが本番なのです。『最終目標』と『(最終目標のために)現時点で取り組んでいる課題』を “一緒くた” にした状態で評価するなど論外であることを自覚しなければなりません。

 朝日新聞の論評は「今回の交渉で『最終目標』を達成できなかった安倍政権の成果は乏しい限り」と批判していることと同じという認識を持っておく必要があると言えるのではないでしょうか。