核保有を宣言した北朝鮮の「核実験およびICBM 発射実験凍結」に称賛を送ることは状況を理解できていない証拠

 NHK によりますと、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員が「4月21日から、核実験と ICBM (大陸間弾道ミサイル)の発射実験を中止する」と発表したとのことです。

 このニュースで見落としてならないのは「核の兵器化の完結が証明された」と北朝鮮が宣言している点です。核兵器を保有する(と自ら宣言している)国が「新たな核実験をしない」と宣言したことを褒め称える意味はないと言えるでしょう。

 

 キム委員長は「核開発と運搬攻撃手段の開発がすべて行われ、核の兵器化の完結が証明された状況で、いかなる核実験も、中長距離、大陸間弾道ミサイルの発射実験も必要なくなり、北部の核実験場も使命を終えた」と述べました。

 そして総会では、核実験とICBMの発射実験を21日から中止するとともに、「透明性を保証するため」として、北東部のハムギョン(咸鏡)北道プンゲリ(豊渓里)にある核実験場を廃棄することを決めました。

 核兵器を保有していない状況であるなら、「核実験の凍結」や「核実験の閉鎖」は評価されるべきでしょう。

 しかし、北朝鮮は「核の兵器化の完結が証明された」と述べているのです。つまり、核兵器を保有したので、“核実験” を新たに行う必要はないと宣言していることと同じです。この点は決して見落とすべきではないと言えるはずです。

 

「核兵器の廃絶」や「核施設への査察」に対する言及はゼロ

 まず、北朝鮮は核保有を宣言しています。そして、凍結を宣言したのは「核実験」であり、「核兵器の製造」は凍結の対象外なのです。

 このような姿勢を鮮明にした北朝鮮を称賛することは適切と言えるでしょうか。

 宣言した内容を北朝鮮が遵守しても、現時点で北朝鮮が保有する核兵器は減少することはありません。しかも、核兵器の保有数を新たに増やしたとしても、今回の宣言内容に反しないのです。

 また、各施設への査察などに対する言及もない訳ですから、北朝鮮の姿勢を手放しで称賛することはできないと言えるでしょう。

 

「中距離弾道ミサイル」と「核保有」が固定化されることは日本にとって国防上の大きなリスク

 北朝鮮は “国連決議に反する形” で核兵器・弾道ミサイルの開発を行って来ました。

 この点を無視し、「アメリカなど核保有国が北朝鮮の核開発を批判する資格はない」と主張する個人・組織は北朝鮮の核開発の片棒を担いでいることと同じです。『核兵器廃絶』を訴える一方、実際の言動・行動は『核兵器拡散』に大きな貢献をしているのですから、問題に拍車をかけている存在と言えるでしょう。

 国連決議を無視するような国と「問題を話し合いで解決すること」は実質的に不可能です。“話し合い” で何とかなるなら、『国連決議』が効果を示していることでしょう。

 つまり、「話し合い」とは別の方法を採らなければ、問題を解決する見通しはない状況なのです。「核保有を宣言した国が日本を射程距離に捉える弾道ミサイルを持っている」という現実から目を背けることはできません。

 国防リスクを取り除くには軍事力が必要不可欠です。国家ごとの価値観に基づく “正義” がぶつかり合う訳ですから、「話し合い」では解決しようのない問題が存在することを認める必要があると言えるでしょう。

 

 「国連決議違反を止めることと引き換えに経済援助を引き出せる」という前例ができれば、模倣犯を生み出す原因になるでしょう。このことを念頭に置き、北朝鮮問題に取り組まなければならないのです。

 同じ経済支援を行うのであれば、国連決議を平然と無視し続けてきた北朝鮮にではなく、“真っ当な国政運営” を継続している途上国を対象に援助を実施すべきと言えるのではないでしょうか。