立憲民主党・尾辻かな子議員らが「(人事院規則を無視して)財務次官に処分を下せ」と要求、問題解決を遠ざける行為を黙認する枝野幸男代表の責任は重い

 立憲民主党・尾辻かな子議員ら野党議員が財務省事務次官のセクハラ疑惑に対し、「本日中の処分と謝罪」を財務省に要求するしています。

 この主張は公務員の懲戒を定めた人事院規則に違反する内容です。立憲民主党を始めとする野党が掲げる『立憲主義』と完全に矛盾する主張であり、問題であることは明らかです。

 また、事実確認の調査すら否定しておきながら、一方的な主張を鵜呑みにせよとの要求も『立憲主義』を揺るがす大きな問題と言えるでしょう。

 

■ 尾辻かな子議員(立憲民主党)ら野党議員の主張内容

 立憲民主党・尾辻かな子議員ら野党議員が4月23日に財務省を訪れ、以下の要求をしたと TBS が報じています。

 財務省の福田事務次官のセクハラ発言疑惑をめぐり野党議員が財務省を訪れ、福田事務次官の本日中の処分と謝罪を求めました。

 「財務省は本日中に事務次官がセクシャルハラスメントを起こしたことを認め、謝罪し、事務次官を処分すること」(立憲民主党 尾辻かな子衆院議員)

 『立憲主義』を標榜する政党であれば、上記の要求をすることは自殺行為です。

 尾辻議員らの行為を黙認することは「セクハラ疑惑を使った『倒閣運動』をしている」と見なされることになるという危機感を本来は持たなければならないことなのです。

 

■ (維新を除く)野党6党の対応に含まれた問題点

1:国家公務員である財務次官の懲戒は人事院規則に準拠する

 まず、財務次官は国家公務員です。そのため、懲戒処分を科す根拠となるのは「人事院規則」が該当します。

 つまり、国家公務員関係法令等一覧に記載されている「職員の懲戒に対する運用ルール」に沿って処分を下さなければなりません。なお、該当する箇所には以下の記述があります。

  1. 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。
  2. 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。
  3. 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。

 週刊新潮が報じた “セクハラ疑惑” は人事院規則では『ウ』に該当する可能性があります。そのための処分を行うために必要なプロセスを採ることを追求する野党が認めないから、事態が混乱する結果を招くのです。

 

2:財務次官のセクハラ疑惑に対して、追求する政党が採るべきだった対応

 財務次官にセクハラ疑惑が持ち上がった際、追求する側の政党(≒ 野党)・政治家が採るべき対応は次のようなものでした。

  1. 『事実関係の確認』を財務省に要求
    → 「当事者が否定」+「録音データの編集」が指摘
  2. 被害者側に『事実関係確認のための協力』を依頼
  3. 協力が得れれば、財務省に『人事院規則』に基づく調査・処分を期日を区切って行動を促す
    → 協力が得られないなら、司法に任せてトーンダウン

 野党が判断を間違えたのは「セクハラ疑惑調査への協力要請」に対する反応です。ここで取り返しのできない反応をすることになりました。

 財務次官に処分を科すには「人事院規則に抵触している」との根拠が必須です。週刊誌の報道だけでは「根拠が脆弱」であり、被害女性の “協力” は欠かせません。

 本人が名乗り出なくでも、代理人弁護士を使うことで “協力” は可能なのです。財務省・テレビ朝日・週刊新潮の代理人弁護士でも、自らが依頼した弁護士を代理人にすることも選択肢として存在する訳ですし、疑惑だけで処分を要求する尾辻議員のような振る舞いは決して許してはならないことです。

 

 国家公務員を懲戒処分に科すなら、『人事院規則』を遵守しなければなりません。“真っ当な政治” を掲げる立憲民主党の所属議員が率先して「立憲主義」を無視しているのですから、救いようがないと言えるでしょう。

 人権の概念を持たない立憲民主党などの野党を野放しにすることは “人民裁判” を助長する結果を招き、法治国家とは真逆の事態を引き起こすことを自覚する必要があると言えるのではないでしょうか。