テレビ朝日:女性記者に対する社内セクハラを黙認、財務次官に責任転嫁した上に人権侵害をも行う

 テレビ朝日の角南源五社長が4月24日に記者会見を行いました。

 その際、財務次官によるセクハラ疑惑に言及したのですが、「被害を受けたとされるテレビ朝日の女性記者に対する(上司などからの)社内セクハラなどテレビ朝日の内部で起きた問題はお咎めなし」との姿勢を見せています。

 これほど経営陣が開き直り見せる組織は大きな問題と言えるでしょう。

 

■ 角南源五社長の “財務次官セクハラ疑惑” に対する発言

 テレビ朝日の角南社長が会見で発言した内容は以下のものです。

  • 女性記者は取材目的で1年半ほど前から半年ほど1対1での会食
  • 会食の際にセクハラ発言があったので、身を守るために会話を録音していた
  • セクハラ被害を避けるため、上司との相談の上、夜の会合は1年ほど控えていた
  • デスクからの指示もあり、NHK が報じた森友問題の裏付け取材する目的で財務次官からの電話があったので会食取材を行った
  • その際もセクハラ発言があり、身を守るために録音した
  • 女性記者は報じるべきと上司に相談したが、いくつかの理由で難しいと上司は判断した
  • 上司に隠蔽の意図はない
  • 女性記者はセクハラが黙認されると思い、週刊新潮に連絡・取材を受けた
  • 公益目的からセクハラ被害を訴えたもので理解できる
  • 当社の取材活動で得た情報と録音が第三者に渡される結果となったことについては遺憾に思う

 少なくとも、テレビ朝日には「女性記者に対する社内セクハラ」を理由に懲戒処分を受けなければならない人物が複数存在しているのです。

 また、社長の発言内容にも矛盾点がありますし、財務次官からセクハラ被害を受けたとされる女性の行動にも疑問符が残る状況なのです。それらの点を指摘することにしましょう。

 

■ テレビ朝日・角南社長の会見で明らかになった問題点

1:テレビ朝日の内部で起きていた社内セクハラ

 テレビ朝日の社内で女性記者に対するセクハラが少なくとも2件は起きていたことが確認されました。

  1. セクハラ被害防止のために「夜の会食」を見合わせていた女性記者に取材を命じる
  2. セクハラ報道を希望した女性記者の意向を握りつぶす

 『女性記者の上司』は2件のセクハラおよびパワハラに直接関与しています。また、『女性記者に取材を命じた(とされる)デスク』もセクハラに関与したと認定される可能性のある行為をしています。

 デスクは「女性記者がセクハラを受けていたことを知らなかった」ということもあり得ます。その場合は “事情を知る女性記者の上司” が適切な措置を採る責務があるため、社内で本件に対する処分を見送るなどということは決してあってはならないことなのです。

 

2:「身を守るために録音をする女性記者」が『社内でのセクハラ』は録音していないという奇妙な点

 テレビ朝日は「女性記者はセクハラ被害から身を守るために録音していた」との説明に終始しています。この主張はすべて建前と言えるでしょう。

 なぜなら、女性記者がセクハラ被害から身を守るために録音などで証拠を残す習慣を持っているなら、『夜の会食』を見合わせていた記者に(上司らが)取材を命じた動かぬ証拠も残っているはずだからです。

 女性記者はデスクから指示を受けた当日に『夜の会食』に向かったのですから、手元に “会食時の発言を録音できる機器” を持っていたはずです。なぜ、その機器で証拠を押さえなかったのでしょうか。大きな疑問が残るところです。

 現時点で最も有力なのは「テレビ朝日はオフレコ取材をすべて無断録音している」というケースでしょう。

 オフレコ時の無断録音は “メディアの裏切り” と見なされ、テレビ朝日からの取材を受け付けてもらえなくなる可能性があります。そのため、「セクハラ被害から身を守るためだった」との苦しい言い逃れに終始しているのだと考えられるからです。

 

3:女性記者の公益通報先は「週刊誌」ではなく、「都道府県労働局」である

 また、テレビ朝日・角南社長は「公益通報から週刊誌にセクハラ被害を訴えたことは理解できる」などと意味不明な発言をしています。

 その理由はセクハラ問題での公益通報先は『週刊誌』ではなく、『都道府県労働局』だからです。テレビ朝日の女性記者の件では「週刊新潮」ではなく、「東京労働局」が公益通報先なのです。

 さて、『東京労働局』ですが、テレビ朝日などマスコミの方はどこかで聞いた覚えがあるでしょう。「是正勧告してあげても」という労働局長の発言にマスコミが猛反発した “あの東京労働局” です。

 「長時間労働を強いられている可能性を理由に調査に入られると、女性社員へのセクハラを強要していた実態が発覚する」という “笑えない現実” があったのです。

 女性記者が本来の公益通報先である都道府県労働局に駆け込まれると、「女性記者に対するセクハラ」でテレビ朝日は無傷で済まないことは明確です。そのため、「公益通報だったと思う」などと印象操作を行い、メディア・マスコミに批判が向かわないように仕向けているのでしょう。

 

4:「夜の会合を提案していない女性記者に財務次官からの電話があった」のなら、ストーカー案件になる

 テレビ朝日の主張で矛盾があるのは、女性記者が財務次官の取材に出かけた理由です。

 セクハラ被害があり、1年近くも『夜の会合』を控えていた女性記者に対し、NHK が森友問題を独自ニュースを報じた日の夜に「裏付け取材をしないか」と財務次官から連絡が来るでしょうか。あまりに「出来過ぎている」と言えるでしょう。

 もし、財務次官から頻繁にテレビ朝日の女性記者への “お誘い” があったのであれば、これはストーカー案件に該当する可能性があります。森友問題は継続していた訳ですし、1年近くも距離を置いている相手をその時に限って誘う可能性は極めて低いと考えられるからです。

 しかし、テレビ朝日や女性記者はストーカー行為に関するような告発を一切していません。

 そのため、女性記者が次官に「森友の件で話を聞きたい。時間があるなら折り返しの連絡が欲しい」と告げ、次官からの折り返しを受けて『夜の会合』に出席したということが実態なのでしょう。「仕事に “女” を使っていない」と主張するには無理のある説明となっているのです。

 

 財務次官は疑惑を否定していますが、その中でテレビ朝日は実名を出して攻撃しているのです。メディアを使った “私刑” を行っていることと変わりありませんし、人権侵害も甚だしいと言わざるを得ません。

 社内で起きていたセクハラ問題や取材情報の漏洩という問題に対し、調査・処分を行うための動きよりも批判の矛先を財務省など外部に求めるテレビ朝日の姿勢こそ厳しく批判されるべきと言えるのではないでしょうか。