近鉄南大阪線の橋脚が傾き運行停止となるも、「傾き発覚後の対応」は評価できる

 毎日放送(MBS)によりますと、4月25日の午前に近鉄南大阪線の橋脚が傾き、運行停止が発生しているとのことです。

画像:橋脚が傾いた近鉄南大阪線の大和川橋梁(MBSより)

 復旧作業が進行中であり、早ければ数日中に運行再開となるでしょう。橋脚が傾いたことは残念な出来事ですが、「近鉄の傾きを気づいてからの対応は適切だった」と評価すべき点は評価する必要があると言えるでしょう。

 

 25日朝、近鉄南大阪線の大和川にかかる橋梁で橋脚が傾きました。一部区間では現在、運転の見合わせが続いています。

 近畿日本鉄道によりますと、午前7時半すぎ大阪市東住吉区と松原市の間の大和川にかかる南大阪線の橋梁で、橋脚の傾きを計測するセンサーが反応しました。担当者が実際に橋脚が傾いているのを確認したため、南大阪線は午前8時すぎから大阪阿部野橋駅と河内天美駅との間で運転を見合わせています。

 26日に大阪の毎日放送(MBS )が報じた内容によりますと、早ければ 26〜27 日中の復旧が可能とのこと。「安全対策を講じた」とアナウンスできることが重要になると言えるでしょう。

 

傾いた橋脚がある大和川橋梁は1923年に完成

 近鉄南大阪線は大阪・阿部野橋から大阪府の南東部(=南河内エリア)を通り、奈良南部の橿原神宮前を結ぶ路線です。代替路線が存在しない地域を結び、1日16万人が利用しているとのことです。

 今回、橋脚が傾いた大和川橋梁ですが、完成は1923年(大正12年)。関東大震災が起きた年に完成しているのです。

 現在の建築水準と比較すると、「橋脚部分を支える杭打ちの深さ」は緩い基準で建設されていた可能性があります。これは大和川橋梁に限った話ではなく、昔に建設された橋梁全体に対して言えることです。

 そのため、近鉄のように「傾きが発生したことを検知し、対応が採れる体制が構築されている」というのであれば、批判するトーンを弱めなければならないと言えるでしょう。

 

「4月25日」、「朝のラッシュ」、「関西」、「鉄道」から  “何か” を思い出しませんか?

 近鉄は「傾きを計測するセンサーの反応」を受け、担当者が確認に向かい、列車の運行を停止しました。この対応は「適切だった」と評価しなければなりません。

 なぜなら、絶対にそうしなければならない理由があったからです。

  • 4月25日
  • 朝のラッシュ時
  • 関西
  • 鉄道

 この4つの項目から、福知山線脱線事故を思い出さなければなりません。(福知山線の脱線事故は4月25日に起きている)

 JR 西日本の福知山線脱線事故では「安全運行よりも、時刻表が優先」されたことで発生しました。“安全装置” を切った状態で無理なダイヤ編成に合わせようとしたことが直接的な事故原因だったのです。

 もし、近鉄が「センサーの反応」を無視して運転を強行し、列車が事故を起こせば、福知山線の脱線事故から何も教訓を得ていないことになります。「教訓として社員に徹底できていたから、最悪の事態は回避できた」という点においては評価をする必要があると言えるでしょう。

 

“地域の大動脈” として欠かせないなら、沿線地域選出の国会議員が国交省に『架け替え予算捻出』の働きかけをしてはどうか

 近鉄は「私鉄」ですから、国が予算援助という点では有権者の理解を得にくいと言えるでしょう。ただ、公共インフラに限りなく近い鉄道網ですから、一定の条件を満たした場合に補助金という形で援助をする価値はあると思われます。

  • 完成から50年以上が経過した橋梁やトンネル
    (※ 地下鉄は除く)
  • 営業係数で黒字を計上している路線区間
  • 1日の輸送客数が1万人以上

 都市部に近いエリアのドル箱路線区間が「橋やトンネルの老朽化」で不通となった場合、経済へのマイナス面が大きくなり過ぎます。バスやタクシーは一時的な恩恵を享受できますが、交通渋滞の発生や時間ロスなどによる損害の方が大きくなるため、対策を講じる必要があります。

 そのため、完成から一定年数が経過した橋梁やトンネルを鉄道会社が改修・架け替えの実施を行う場合は補助金という形で予算を付ける仕組みがあっても良いのではないでしょうか。

 「費用の肩代わり」ではなく、「部分的な補助」という形であっても、鉄道会社はかなり助かるはずです。『ホームドアの設置』や『バリアフリー化』に比べて恩恵の実感が得にくい『インフラの老朽化対策』こそ、政治主導で筋道を作る必要のある案件と言えるでしょう。

 

 大阪を選挙地盤とする辻元清美議員(立憲民主党)は「カジノを経済政策に使うなどあり得ない」と啖呵を切っていましたが、カジノでの税収を鉄道の老朽化した橋梁やトンネルの改修費用に充てたり、福祉事業の予算源にすることも “政治家や政党の実現力次第” では可能なのです。

 近鉄の「橋梁の傾きが発覚してからの対応」は称賛されるべきですし、その後の根本的な対策が実行されやすいような環境面を整えるために動きを促すことが政治やマスコミには求められていると言えるのではないでしょうか。