『バスク祖国と自由(ETA)』が解散、暴力を背景にした抗争手法では世間からの支持を得ることはできない

 AFP 通信によりますと、スペイン・バスク地方の分離独立を求めて活動を続けてきた『バスク祖国と自由(Euskadi Ta Askatasuna, ETA)』が解散を宣言したとのことです。

 “非合法武装組織” として「過激な手法」を採り続けてきましたが、時代の流れから取り残される結果となりました。「暴力を背景にした政治的な活動では世間からの支持を得ることはできない」という教訓は覚えておく必要があると言えるでしょう。

 

 スペイン北部とフランス南西部にまたがるバスク(Basque)地方の分離独立を求めて暴力的な抗争を続けてきた非合法武装組織「バスク祖国と自由(ETA)」が解散を宣言した。これにより、西欧最後の武装独立運動に終止符が打たれた。

 (中略)

 ETAは、スペインのオンライン新聞エル・ディアリオ(El Diario)に2日掲載された4月16日付の書簡で「自らの歴史の一時代と任務の終結を宣言し、その旅路に終止符を打つことを決意した」と表明。さらに「全組織を完全に解散し、政治活動の終結を宣言した」と述べた。

 ETA が発足したのはフランコ独裁時代であり、当時の時代背景では「ぎりぎり容認」と言えたでしょう。

 しかし、民主化が進むと「暴力を背景にした政治活動」は一気に衰退が進みます。近年はスペインおよびフランスの当局が取り締まりを強化したことで組織が弱体化していましたので、時代に終止符が打たれることになりました。

 

『バスク祖国と自由(ETA)』は極左武装組織

 『バスク祖国と自由(ETA)』は「バスク地方に社会主義独立国家を樹立することを目標として結成された分離主義過激組織」であると公安調査庁の公式ウェブサイト上でも紹介されています。

 “社会主義” を掲げる過激組織ですから、日本でいう中核派や革マル派といった『極左過激派』に似た組織と言えるでしょう。

 日本の『極左過激派』はテロ行為で世間から反感を買い、“内ゲバ” と言われる内部抗争で自壊しました。ETA は内部抗争を起こしたとのニュースはありませんが、テロ行為で地元住民の反感を買い、デモ活動で「NO」を表明されています。

 バスク地方の主力産業になっている観光業を「脅威」と評し、批判していた経緯もある訳ですから、支持者離れが起きることは当然と言えるでしょう。

 

テロ事件の被害者、家族、友人が「明確な不支持」の立場を表明する

 『暴力を背景にした政治的な活動』が支持を失っていく最大の理由は「明確な不支持の立場を採る人々が増え続ける」からです。

 テロ事件に巻き込まれた被害者自身は不支持に回るでしょう。身内が巻き添えになった被害者の家族も同様です。また、知人・友人が被害を受ければ、不支持の立場になる人もいるでしょう。

 つまり、組織の活動をアピールするために犯行声明を出すと、犯行による被害を受けた人とその周囲が「不支持の岩盤層」として固定化されてしまうのです。

 民主主義の根付いた国では「暴力以外にも自分たちの主張をアピールする方法」が複数存在します。それらの手法を使わず暴力に打って出たことで、最大多数の中間層が「不支持」に回ることでしょう。その結果、支持が伸びずに衰退が始まるという現実を覚えておかなければなりません。

 

『暴力的な政治活動』はいずれ衰退するが、「NO」を表明することで衰退のペースを上げることができる

 『暴力を背景にした政治的な活動』は世間からの支持を失い、衰退から逃れることはできないでしょう。

 「衰退することは確実」と言われていても、自分が “被害者” になることを受け入れる人は極めて少数派だと思われます。そのような悲劇を防ぐためには「暴力を背景にしたあらゆる政治的な活動にNO」を表明しておくことが重要です。

 該当組織や構成員を名指しする必要はありません。「暴力的な政治活動は支持できない」と表明することが重要なのです。

 そのような声を “骨のある本物のジャーナリスト” が取り上げ、記事という形で広く世間に訴えかける訳ですから、一般人がリスクを1人で背負いこむ必要はないのです。

 現在ではインターネットを通した意見表明も容易になった訳ですから、些細な意見表明であっても、社会貢献につながるという認識を持っておくべきと言えるのではないでしょうか。