自民党・総裁選(2018)の仕組み

 自民党の規約が改正されたことで、総裁選での「三選」が可能になりました。

 2018年の9月頃に自民党総裁選挙が行われると予想されており、その仕組みを把握しておく意味はあると言えるでしょう。以下のプロセスで自民党の総裁は選出されます。

 

■ 自由民主党総裁選挙の仕組み

1:被選挙人(=総裁選に立候補する)資格

 まず、自民党の総裁となるためには立候補資格を満たさなければなりません。資格は自民党が公開している規約(PDF)で以下のように定められています。

  1. 自民党所属の国会議員であること
  2. 自民党所属の国会議員20人からの推薦を集めること
  3. 4期連続の総裁選挙ではないこと

 以前は「3選禁止」だったため、最大で2期連続でした。それが「3選まで可能」となったことで、3期連続で総裁を務めることが可能になりました。

2:投票形式

 次に投票形式ですが、「自民党の総裁を選出する選挙」ですので投票資格が存在します。具体的には自民党の国会議員と党員・党友に投票権が限定されています。

 この制約は『自決権』の点において妥当なものと言えるでしょう。なお、党員投票の権利を行使するには「過去2年間の党費・会費を納めていた20歳以上の日本国籍保有者であること」とのハードルが設けられています。

 「一時的に自民党の党員として登録し、特定の立候補者を応援する」という “妨害戦術” を使いづらくしていますので、ポピュリズム対策も講じられていると言えるはずです。

3:当選者(= 新総裁)の決定方法

 自民党・総裁選は「国会議員による議員投票」と「党員投票」の合算値で決定します。この票数配分も2015年に変更されており、以前とは条件が異なります。

表:自民党・総裁選の仕組み
2012年以前 2015年以降
国会議員
  • 1人1票
  • 1人1票
地方票
  • 300票(固定)
  • 各都道府県連の代表者が投票
  • 国会議員と同票
  • ドント式で配分
当選者
  • 『国会議員票』と『地方票』で過半数を獲得
  • 過半数を獲得した候補がいない場合、上位2名による決選投票

 扱いが変わったのは「党員投票」が反映される『地方票』です。2012年以前は「アメリカ大統領選挙のような選挙人による投票形式」だったのですが、これが「比例選挙で用いられるドント式」が採用されました。

 また、300票の固定数だったのが、国会議員と同数に変更されており、この変更も一定の影響を与えることになるでしょう。

 

■ 自民党総裁選(2018)の票読み

 では、上記の規則を踏まえ、2018年9月頃に行われると予想される自民党総裁選挙の票読みを行って見ることにしましょう。

 まず、自民党の国会議員数は407人(衆院:283人、参院:124人)です。『議員票』は407票となるため、『地方票』も407票となります。そのため、過半数は「議員数+1票」です。

  • 安倍 晋三
    • 細田派(94人)、麻生派(59人)、二階派(44人)が支持を表明
    • 自民党支持層でトップの支持率(31.7%)
  • 石破 茂
    • 石破派(20人)を率いる
    • 自民党支持層の支持率は2位(20.6%)
    • 額賀派(55人)の参院議員次第か
  • 野田 聖子
    • 総裁選に強い意欲を示す
    • 自民党支持層からの支持率は 4.1%
    • 宏池会(現・岸田派)の前トップ古賀誠氏が応援

 朝日新聞などは “安倍下ろし” の論説を張っていますが、自民党の支持層では「安倍首相の3選」を望む声が多い状況です。現状で安倍総裁支持を表明した3派閥で国会議員の約半数を占めており、他の候補が総裁選で逆転することは難しいでしょう。

 なぜなら、『地方票』のカウント形式が比例選で用いられる “ドント式” に変更されたのです。安倍首相を総裁選で退けるには「『地方票』で安倍首相の得票数に “水をあける” こと必須」なのですが、自民党支持層でも安倍首相がトップなのです。

 

 マスコミが「総裁選での波乱」を期待し、笛を吹き続けていますが、肝心の自民党支持層や党員が反応していない状況なのです。「安倍首相が3期目を務める可能性が現状では高い」と言えるのではないでしょうか。