「脱炭素に背を向けるな」と注文を付ける琉球新報、『脱炭素』に極めて消極的な沖縄電力は批判せず

 琉球新報が5月21日付の社説で日本政府のエネルギー基本計画に文句を付け、「脱炭素に背を向けるな」と主張しています。

 『脱炭素』に消極的な姿勢を批判するのであれば、まずは沖縄電力を批判しなければなりません。なぜなら、沖縄電力が『脱炭素』に最も非協力的であり、琉球新報はその沖縄電力から電気を購入しているからです。

 

 再生エネルギーの推進に消極的な政府の姿勢も透けて見える。再生エネ比率は今でも約15%まで伸びてきているが、「主力化」を打ち出すなら、もっと高めるべきだ。

 ここ数年、再生エネルギーのコストは劇的に下がり、新興国など各国で飛躍的に普及が進んでいる。

 (中略)

 再生エネ事業者への送電線開放が不十分なのも一因だ。後ろ向きの政策が産業の成長を阻んでいる。経済活性化の観点からも政策面での後押しが必要である。

 世界はいち早く「脱炭素社会」へかじを切っている。日本も目を覚ますべきだ。

 琉球新報の掲げる “志” は立派なものでしょう。しかし、琉球新報が本社を置く沖縄が『脱炭素社会』から最もかけ離れた電源構成になっているのです。

 この不都合な真実を棚に上げている限り、「日本政府のエネルギー基本計画に沖縄メディアが文句を言う資格はない」と言わざるを得ません。

 

沖縄電力の電源構成(平成28年度、2016年実績)

 沖縄電力が公表している平成28年度の電源構成(PDF)は以下のとおりです。

画像:沖縄電力の電源構成(平成28年度実績)
  • 火力発電:95%
    • 石炭火力:65%
    • LNG 火力:24%
    • 石油火力:6%
  • FIT (再エネ):5%

 琉球新報は「再生エネルギーの割合が 15% は低すぎる」と社説で批判していますが、沖縄電力が再エネで発電している割合は 5% に過ぎません。つまり、沖縄は全国水準の3分の1なのです。

 なぜ、本社の “お膝元” で再エネの普及が進んでいないことを嘆かないのでしょうか。しかも、二酸化炭素を大量に排出する石炭火力が 65% を占めており、『脱炭素』とは真逆の電源構成となっています。

 この点は批判しなければならないことですし、「沖縄を日本で最も環境に優しい発電を行っている地域にする」とキャンペーンを展開し、実際に行動に起こすことが必須です。それをしないのであれば、沖縄メディアに政府のエネルギー基本計画を批判する資格などないのです。

 

火力発電がほぼ 100% の沖縄電力の電気代が他社より安い理由

 沖縄電力の電気代は他社(既存の大手電力各社)よりも安いため、このことを理由に「原発がなくても、経済性に問題がないことが示されている」と主張する人が存在します。

 しかし、この主張は間違いです。なぜなら、沖縄電力は政府から他の大手電力会社が支払っている税金を免除されているからに過ぎません。

画像:税制優遇を受ける沖縄

 年間3000億円を超える振興予算を手にしている沖縄県(PDF)ですが、税制面でも数々の優遇措置を受けています。

 他の大手電力会社は火力発電の燃料となる LNG や石炭を輸入すると、石油石炭税の支払いが義務付けられています。これは電力消費者の利用代金に上乗せされるのですが、沖縄電力は税の支払いが免除されているため、その分の電気代が安くなっているだけのです。

 

「 “石炭火力頼りの沖縄” が詰んでいる」という現実と琉球新報は向き合うべき

 『脱炭素社会』に舵を切ることが世界的な潮流であるなら、二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電に依存している沖縄は厳しい現実が待ち受けていることを意味しています。

 「観光業が好調」という沖縄ですが、雇用情勢は芳しくありません。地域に大口雇用をもたらす製造業を誘致しようにも『脱炭素』の潮流をマスコミが後押ししているため、“環境にやさしくない発電” がメインとなっている沖縄は投資対象から外れることになるのです。

 少なくとも、沖縄の電源構成を『脱炭素』に向けて舵を切らないかぎり、投資を呼び込むことはできないと考えられます。

 消費量が少ない冬場の夜間でも 70万 kW の需要がある訳ですし、夏場は 100万kW がベースラインです。この部分を原発で担い、「安価な料金による電力の安定供給」をセールスポイントに鉄鋼所などの工場集積を推進すべきなのですが、“原発アレルギー” に罹患したメディアなどの反対で実現することはないと言えるでしょう。

 

 琉球新報は「再エネ 15% では少ない」と主張しているのですから、「沖縄は消費電力の 25% 超を再エネで構成する」と目標を定め、計画を実現すべきと言えるでしょう。

 「在日米軍から変換された土地の使い道がない」と嘆く自治体には「太陽光パネルを設置し、『脱炭素』に向けた動きをすべき」と諭さなければなりません。平地が多く、太陽光発電をしやすい環境である沖縄なのですから、再エネに “オールイン” をする魅力はあるはずです。

 ただ、そのような動きを地元紙ですら支援していないという現実をシビアに見ておく必要があると言えるのではないでしょうか。