『西野ジャパン』のロシアW杯メンバー23選手が発表、攻撃偏重の人選が明らかに

 日本サッカー協会の西野朗監督は 2018 ロシアW杯に臨む代表23選手を発表いたしました。

画像:2018ロシアW杯・日本代表23選手

 ハリルホジッチ前監督を解任した段階で「メンバー入りは確定」と予想された “ビッグ3” は順当に選出されています。選手された選手が本職とするポジションを見ると、攻撃偏重となっており、守備面での能力は二の次になっている可能性があると言えるでしょう。

 

表1:サッカー日本代表(2018ロシアW杯)
  選手名
GK 川島 永嗣、東口 順昭、中村 航輔
DF CB 槙野 智章、吉田 麻也、植田 直通、昌子 源
SB 酒井 宏樹、長友 佑都、酒井 高徳
MF DMF 長谷部 誠
CMF 遠藤 航、大島 僚太、柴崎 岳、山口 蛍
OMF 香川 真司、本田 圭佑
FW CF 岡崎 慎司、大迫 勇也、武藤 嘉紀
WG 乾 貴士、宇佐美 貴史、原口 元気

 ボランチが5選手である一方、ペナルティーエリア内で勝負する最前線の FW を本職とする選手が3選手も招集されています。

 W杯では格上の相手との対戦がほとんどで、日本は「相手に主導権を握られる時間」がどうしても多くなることでしょう。その時間を無失点で耐えなければ勝利は見えてこないため、守備での計算が立たない状況は避ける必要があるのです。

 

キャプテン・長谷部をどのポジションで起用するのか

 注目は「長谷部選手をどのポジションで起用するか」です。

 今シーズン、所属するフランクフルトで長谷部選手は “リベロ” として高い評価を得ました。これを活かすために3バックの導入が代表でも行われたのですが、3バックの一角としてプレーするなら、“ストッパー” としての能力が必須です。

 しかし、長谷部選手は対人守備は強くなく、“ストッパー” としては能力不足です。

 ガーナ戦の1失点目となった前半7分のプレーで、ガーナの DF が左サイド側からゴール正面に入れた浮き球パスをファーサイド(= 遠い方の位置)にいた槙野選手が無理なクリアを試み、ファールを与える結果となったのです。ファール地点はペナルティーアーク内でしたから、「長谷部選手がクリアしなければならないボールだった」と言えるでしょう。

 それができなかった訳ですから、守備に不安が残るのは当然です。

 

長谷部を4バックのアンカーに置きたいが、チームの守備力に不安が残る

 長谷部選手を活かすなら、フランクフルトのやり方を可能な限り再現することが近道です。ただ、以下の条件があると言えるでしょう。

  • 長谷部選手を除くストッパー2選手とWBで4バックとして機能する
  • インサイドハーフの2選手はダブルボランチとして計算が成り立つ
  • ウィンガーが 4-4-2 のブロックを構築できる走力を持っている

 要するに、「長谷部選手を除くフィールドプレーヤー9選手で守備の際に 4-4-1 のブロックを作り、守備が機能するか」という点が問われているのです。

 “リベロ” は DF や MF の位置を自由に動き回れるため、DF と MF の間で顔を出すハメス・ロドリゲス選手のようなタイプを抑えるポテンシャルを持っています。ただし、その能力が発揮されるには他の選手が守備で計算できるかに依存しています。

 

「DF 陣の盾」としての役割を誰に託すのか

 中でも、「DF の盾」として機能することが求められるボランチ(=中盤 MF)の組み合わせが大きな問題です。

 日本代表がボゼッションを志向しているため、大島選手や柴崎選手が重用されることになるでしょう。この両選手はボールを動かす能力に長けた反面、ボール奪取やフィジカルコンタクトに難があるタイプです。

 つまり、「ドリブルなどの走り込みに対する防波堤としての機能が限定的になる」という前提で守備網を構築しておく必要があるのです。ポジショニングに基づく駆け引きでインターセプトを狙うタイプの選手で中盤を固めると、カウンターを受けた際の対処は絶望的です。

 フィジカル勝負に持ち込まれた際やカウンターを受けた際に奮闘する “潰し屋” は欠かせないだけにどの選手にその役割を任せるかが大きな鍵と言えるでしょう。

 

 日本代表は “ポリバレント” との言葉を出し、選考を行いましたが、CF やトップ下を本職とする5選手は他のポジションでは輝けない選手ばかりです。明らかに攻撃偏重になっていると言えるでしょう。

 『特攻』を選択するなら、それも “あり” です。ただ、実力差を考慮すると返り討ちにあう可能性が極めて高いという現実を自覚しておく必要があると言えるのではないでしょうか。