世耕大臣、フランス出張で経済大臣としての職責を果たす

 マスコミが『報じない理由』を行使する対象にしている世耕大臣ですが、5月30日から6月2日にかけてフランス・パリで EU やアメリカなどと経済会合を行い、成果を残したことが経産省のウェブサイト上で報告されています。

 “やるべき仕事” をやり遂げている点は評価されるべきでしょう。TBS モスクワ支局長のメンツが潰された仇討ちをしたい気持ちは分からなくもないですが、報道として失格であることを自覚しなければなりません。

 

 3月に行われた第2回三極貿易大臣会合で合意した、第三国による市場歪曲的な措置の排除に向けた共同行動に関し、これまでの進捗や今後の方向性について議論し、全体の共同声明に加え3つの分野別、すなわち、強制技術移転に関する共同声明、市場志向条件に関する共同声明と産業補助金に関するスコーピングペーパーをとりまとめました。

 日本・EU・アメリカで「検討範囲の絞り込みに対する合意文書」を取りまとめたことが世耕大臣の渡仏による成果と言えるでしょう。三極貿易大臣の合意による共同声明(PDF)の内容は OECD 閣僚理事会にも反映されているからです。

 また、EU とアメリカ通商拡大法232条に対する懸念を表明する共同声明(PDF)を発表しており、「日本の国益」を重視した働きをしていると言えるはずです。

 

中国を念頭に置いた「第三国による市場歪曲的な措置の排除」は日米欧の共通認識

 日本・EU・アメリカは中国の姿勢に対する認識を共有しています。

  • 補助金で公的機関・国有企業が優遇されない透明性を確保
  • 技術移転や知財獲得を強いる政府慣行の禁止
  • 商業利益目的とする不正アクセス行為を支援する政府の行動を批難

 上記の項目が共同声明に含まれているのですが、中国が主要ターゲットであると言えるでしょう。また、補助金で政府の息がかかった企業が優遇されている韓国も同様と考えられます。

 ダンピング行為が黙認されると、ルールを遵守する企業(やそこで働く従業員など)が大きな損害を受けることになるのです。問題点を日米欧の三極で認識し、具体的なアプローチを模索するための入口に達したと合意したことは大きな成果と言えるはずです。

 

アメリカの鉄鋼・アルミへの課税強化には日欧で懸念を示す

 アメリカ・トランプ大統領は「1962年通商拡大法232条(国防条項)」を根拠に鉄鋼やアルミ製品の輸入制限を発動させました。この行為に対し、日本と EU は “強い牽制” を共同声明という形で発表したのです。

 このような声明が閣僚レベルで発表されること自体が異例なことです。

 ただ、日欧の首脳による共同声明が出されたとしても、トランプ大統領が方針転換する可能性は低いと思われます。そのため、『具体的な報復策』が存在し、「対抗措置を実施する準備が整っていること」を明確する必要があると言えるでしょう。

 トランプ大統領が翻意する “泣き所” を的確に突くことができるのかが問われているのです。

 

 日本政府は「中国」と「アメリカ」が掲げる自国経済優先主義を翻意させることが課題となっている状況です。

 “組むべき味方” は対象国によって異なりますし、現時点では適切なパートナーと歩調を合わせることができていると言えるでしょう。この点はマスコミも高く評価しなければなりません。

 トランプ大統領が鉄鋼・アルミ製品への関税撤回に応じないなら、『日欧 FTA 協定』や『TPP』を活性化に力を入れ、“自由で公平な市場” で主導権を握るという政策が現実味を帯びるのです。

 難解な話題が多い経済ニュースほど取材力が差となる訳ですから、ここが「マスコミの腕の見せ所」と言えるのではないでしょうか。