韓国がロシアとのガスパイプライン直結に向けた交渉を再開も、ルートや経由地問題を抱えたまま

 NHK によりますと、韓国が希望するロシアからの天然ガスのパイプライン敷設交渉を韓国ガス公社とガスプロム(ロシア)が再開させたとのことです。

 ムン・ジェイン政権は脱原発を掲げていますから、パイプラインの建設に前向きでしょう。また、経由地となる北朝鮮に奉公することもできますし、ネガティブな見解を述べる必要がないからです。

 

 天然ガスのパイプラインを、ロシア極東から北朝鮮を経由して韓国まで延ばす建設計画は、ガスプロムと韓国ガス公社との間で、2011年から交渉が始まっていましたが、北朝鮮の核・ミサイル開発などをめぐって、朝鮮半島情勢が緊迫化したことから中断されていました。

 これについて、マルケロフ副社長は「韓国側からの交渉再開の呼びかけに応じ、すでに連続した交渉が行われている。今後も続いていくだろう」と述べ、実現に向けた交渉を韓国側との間で再開したことを明らかにしました。

 ただ、パイプラインの具体的なルートや建設の時期など、交渉の詳細については明らかにしていません。

 ロシア側(=ガスプロム社)は「パイプラインを建設したい」という要求を拒絶するメリットはありません。

 サハリンで算出された天然ガスを独占に近い形で販売できるのですから、交渉の席には着くでしょう。ただ、韓国側には解決しなければならない諸問題があるのです。

 

パイプラインの建設ルートと費用はどうするのか

 韓国とロシアは陸続きですが、国境は面していません。そのため、ルート設定が最初のハードルとなります。サハリンで産出される天然ガスをパイプラインで韓国に持ち込むには以下の経路が主な候補となるでしょう。

  1. ウラジオストク近郊から陸路で北朝鮮を通過
  2. ウラジオストク近郊から日本海の海底を通過
  3. サハリンから日本列島を縦断し、プサンに接続

 韓国の建設費が最も安くなるのは『3』です。福岡・プサン間の海底パイプライン分だけで済む訳ですから、魅力的でしょう。しかし、日本国内に天然ガスのパイプラインを張り巡らせる計画がないため、計画の実現性が極めて乏しい状況です。

 そのため、ウラジオストク近郊から『陸上ルート』か『海底ルート』が現実的と言えるでしょう。どちらを選択するにしても、巨大プロジェクトになるため、費用をどうするのかが問題となります。

 

『ノルド・ストリーム』級の総工費は必要

 おそらく、韓国にロシアからの天然ガス用パイプラインを建設すると、総工費は『ノルド・ストリーム』と同じぐらいになるでしょう。

 ロシアとドイツをバルト海の海底で結ぶ天然ガス用のパイプライン『ノルド・ストリーム』に要した総工費は約1兆5000億円。海底部で費用が上がったという見方もありますが、『陸上ルート』では経由国が問題となることを見落としてはなりません。

  • 陸上ルート
    • 長所:建設費が安い
    • 短所:経由地の政治情勢で運用に影響が出る
  • 海底ルート
    • 長所:経由地の国内情勢に左右されない
    • 短所:建設費が高い

 韓国の場合、北朝鮮国内を通過する陸上ルートを選択すると、北朝鮮の動向に振り回される要因を作ってしまうことになるのです。

 「パイプラインを止める」、「ガスを盗む」という狼藉はウクライナで実際に起きています。そうした行為に嫌気がさしたドイツなどが『ノルド・ストリーム』を建設した訳ですから、「北朝鮮が通行料収入だけで満足する」と安易に決めつけない方が良いでしょう。

 

親北派のムン・ジェイン大統領にとって、非常に魅力的な巨大プロジェクト

 しかし、ムン・ジェイン大統領は『陸上ルート』を強く推すことでしょう。なぜなら、様々な理由が存在するからです。

  • 天然ガスのパイプラインがあれば、脱原発を進められる
  • 北朝鮮国内を通過することで、通行料収入をプレゼントできる
  • パイプライン網の整備で雇用創出が可能
  • 日本に「パイプラインを接続してやっても良い」との姿勢を打ち出せる

 問題はあるが、魅力的な案件と言えるでしょう。

 建設費がネックになりそうですが、「将来的には日本に接続してやっても良い」と発言すれば、日本国内の親韓派が「日本が金を出してパイプライン整備に協力すべき」と主張し始めると思われるため、資金集めは意外と苦労しないかもしれません。

 日本もエネルギー資源の購入先を多様化することを検討し、パイプラインの設置を考える時期に来ていると言えるのではないでしょうか。