ドイツ車の “ディーゼルゲート”、アウディの会長が証拠隠滅の恐れで逮捕される
ドイツの車メーカーがディーゼル車に不正ソフトウェアを搭載し、排気ガス規制を逃れようとしていた問題でアウディのシュタドラー会長が証拠隠滅の疑いで逮捕されたと NHK が報じています。
「経営陣の関与」に対する捜査が現在行われていますが、どのような結論になっても責任は免れないでしょう。それだけ大きな問題であるからです。
フォルクスワーゲンが排ガス規制を逃れるために、ディーゼル車に不正なソフトウェアを搭載していた問題では、傘下にあるアウディについて、検察当局が去年、詐欺などの疑いで本社を捜索したほか、シュタドラー会長らの捜査を進めていました。
検察当局は、シュタドラー会長が、ヨーロッパ市場で販売されたディーゼル車に不正なソフトウエアが搭載されていたことを知りながら、販売を停止しなかった疑いがあるとみており、18日、証拠を隠すおそれがあるとして逮捕しました。
ドイツでは「証拠隠滅の恐れがある」との理由で検察当局が逮捕できるということは驚きです。
ただ、シュタドラー会長が関与しているなら、証拠の隠蔽は完了していることでしょう。企業トップという立場から「通常の業務命令」という形で隠滅の意図を感じさせずに証拠を隠すことができてしまうからです。
経営陣(=担当取締役)の責任は免れない
“ディーゼルゲート” と呼ばれる排ガス不正問題は「経営陣の責任」を問われることになるでしょう。なぜなら、関与の有無に関係なく、責任問題となるからです。
- 経営陣は排ガス不正に関与していた場合
- 不正行為を容認したことが問題
→ 経営陣全体の責任が問われる - 関与した経営幹部は懲戒対象
- 不正行為を容認したことが問題
- 経営陣が排ガス不正に関わっていない場合
- 現場の不正を見抜けてないことが問題
- 会社の統治体系に対する担当役員の責任が問われる
要するに、「会社ぐるみの不正行為」だったにせよ、「現場の偽装を見抜けなかった不正行為」であれ、経営陣の責任が問われることは避けられないのです。
どのような事実関係であっても、ドイツ車への逆風は吹き続ける
経営陣が不正行為を知っていた場合、組織ぐるみとなります。「経営陣の総取替え」を行った上で再スタートをすることは不可避と言えるでしょう。
『現場の暴走』だった場合、経営陣の責任は少しは軽くなります。ただ、「現場が会社の指示を無視して好き勝手やっている」という問題が新たに生じます。このガバナンス問題は経営陣が責任を負わなければならないものなのです。
「現場が不正に手を染めたのは排ガス問題だけ」という保証がないのです。
「他にも不正行為はあった」との認識を経営陣が持つ必要がありますし、その上でガバナンス体制を見直すことは避けられません。その上で信頼を取り戻すことが要求されているからです。
“再生” に向けた動きはすでに行われているでしょうが、現職の取締役が「証拠隠滅の恐れ」などの理由で逮捕されることはマイナスイメージをもたらす結果になる可能性があります。
日本でも「企業の不正行為」は大きな問題になっています。ドイツ企業の不正を反面教師にし、企業経営に活かす必要があると言えるのではないでしょうか。