法律違反の長時間残業を強いるテレビ局が “働き方改革” を批判するのは矛盾である

 『働き方改革関連法』が6月29日に参院で可決・成立しました。「残業時間の上限規制」や「高プロ制度」にメディアは反対キャンペーンを展開していましたが、その資格はなかったと言えるでしょう。

 なぜなら、民法キー局5社すべてが労働基準法違反で勧告を受けていた共同通信が報じているからです。

 

 社員らに上限を超える時間外労働(残業)をさせたなどとして、三田労働基準監督署が2013~17年、労働基準法違反で在京民放キー局全5社に計6回の是正勧告をしていたことが30日、関係者への取材で新たに分かった。この期間にテレビ朝日が3回の勧告を受けていたことは共同通信の取材で5月に明らかになっており、5社が受けた勧告は計9回となった。

 要するに、『働き方改革』を批判するマスコミの中で、違法な長時間残業が起きていたのです。

 これでは「長時間残業の引き金になる」との批判は説得力を欠く結果となります。マスコミが『働き方改革』を否定した理由は「自分たちの保身を図ること」が最大の理由であると言えるでしょう。

 

民放キー局5社が勧告を受けるという異常事態

 共同通信がまとめた「在京の民放キー局5社が労働基準法違反で是正勧告を受けた件数」は以下のとおりです。

画像:在京・民放キー局で労基法違反で是正勧告された数(共同通信より)

 5社とも、長時間労働が理由で是正勧告を受けているのです。『働き方改革』が成立する前は「残業時間の上限規制」はない状態でしたが、それでも民放キー局は「違法行為」に手を染め、勧告を受けるほどでした。

 そのような企業が「『働き方改革』に反対」と主張するのは “よほどの理由” があるからなのでしょう。

 

『残業の上限規制』を経営層が嫌い、『高プロ』はポンコツテレビマンが嫌う

 マスコミが『働き方改革』に反対した理由は「経営層と高級取りの中高年社員が嫌う法律変更が含まれていたから」です。そのため、マスコミが一体となって反対キャンペーンを展開したのです。

 まず、経営層が嫌ったのは『残業時間の上限規制』が設けられるからです。メディアは「夜討ち・朝駆け」という(ほとんど意味のない)取材体系を採り、記者を24時間体制で働かせています。

 これまでは労使協定を結ぶことで、残業時間を青天井にすることができました。しかし、『働き方改革』で上限が設けられると、現状の取材体制が法律違反になってしまいます。そのため、法案に反対する大きな理由がマスコミ上層部にはあったと言えるでしょう。

 また、高給取りのポンコツ社員にとっては『高度プロフェッショナル制度』は迷惑以外の何物でもありません。「残業時間ではなく、成果で給与が決まる制度」が導入されるとなれば、出来の悪い社員は拒絶するでしょう。

 民放キー局の平均年収は1000万円を超えていると予想されますし、平均値を引き上げているのは中高年の社員です。「 “新しい制度” が導入されれば、自らの年収がダウンする」と自覚するポンコツほど、熱心に『働き方改革』を叩く動機が存在しているのです。

 

 テレビ局の中で、儲かるコンテンツを作る人材は限られているでしょう。制作会社に丸投げした番組を放送したり、ネットで話題の動画をスタジオでタレントが見るだけのバラエティ番組が多い現状が「マスコミの凋落を示す根拠」となっています。

 インターネットとスマートフォンが一般化したことにより、個人の興味・関心に費やす時間が細分化される結果となりました。

 つまり、旧態依然の働き方で作り出されたコンテンツは時代遅れになってしまう傾向が強くなったのです。自分たちが得意とする分野の専門性を活かしたコンテンツを作り、そのために必要な労働体系が構築できていないから、民放キー局が軒並み労基法違反で是正勧告を受ける失態を招いていると言えるのではないでしょうか。