「ハリルの遺産」と「運」でベスト16入りを果たしたサッカー日本代表を手放しで称賛することはマイナス面が大きすぎる

 ロシアW杯を戦っていたサッカー日本代表は決勝トーナメント1回戦でベルギー代表に 2-3 で逆転敗けを喫し、ベスト16で大会を去ることとなりました。

 過去最高に並ぶ成績であり、この結果は称えられるべきでしょう。しかし、実態は『ハリルホジッチ前監督の遺産』と『運』による部分が大きく、手放しで称賛するのは避けるべきと言えるはずです。

 

「1人少なくなったコロンビアにしか勝てなかった」という現実

 日本代表が直視しなければならないのは「1人少なくなったコロンビアにしか勝てなかった」という点です。

 ロシアW杯で日本代表が戦った4試合において、結果と内容が伴った試合は1つもありませんでした。勝利したコロンビア戦でC・サンチェス選手の軽率な対応がなければ、グループ敗退となっていても不思議ではなかったという現実を直視しなければなりません。

 また、日本が掲げる『自分たちのサッカー』は限界が露呈しました。

 『運』に恵まれた上、第3節での “ギャンブル” に勝っても、ベスト8入りは簡単ではないことが明らかになったのです。「実力でベスト8入り」を目指すのであれば、今大会で明らかになった反省点を謙虚に受け入れる必要があると言えるでしょう。

 

『ハリルホジッチのスタイル』が評価されたという皮肉

 ベルギーのロベルト・マルティネス監督は「日本は完璧な試合をした。堅実でスピードがありカウンターの精度が高かった」と試合後にコメントしています。

 ヨーロッパ屈指の強豪国から称賛された部分は素直に喜ぶべきでしょう。しかし、日本サッカー協会や(一部の)選手・マスコミが称賛してほしい「パスワーク」は脅威には映らなかったのです。

 得点パターンは “ハリルホジッチ前監督が要求したプレー” から生まれたものであり、その部分が高く評価されているという事実を受け入れることが重要です。

 日本より足元の技術に秀でたメキシコ代表でさえ、ブラジル戦では「普段のプレー」に支障を来している状態だったのです。パスワークを軽視する必要はありませんが、現状のように過剰評価すると、大きなマイナスになるという実態は理解しておくべきでしょう。

 

西野監督の “ポリバレント” を重視した選手選考とは何だったのか

 そして、西野監督による『選手選考』と『采配』も問題があります。

 「勝つための確率を 1% でも 2% でも上げる」と意気込みを語り、“ポリバレント” に重きを置いた選手選考を行いました。W杯本番で使用したシステムは(一貫して) 4-2-3-1 で、戦術における柔軟性は皆無の状況でした。

 特に、大会前の時点で「相手チームが高さ勝負」を挑む可能性があることを想定していなかったことは致命的と言えるでしょう。

 セネガルにはディウフ(185cm)とニアン(184cm)、ポーランドにはレバンドフスキ(185cm)とミリク(186cm)という高身長で実績のある FW が選出されていました。つまり、これら両選手を同時に起用したパワープレーで1点をもぎ取りに来た場合への対応策を用意しておくことが責務だったのです。

 高さ勝負のクロスが入れられた際は 5-4-1 で迎撃する。本当に “ポリバレント” が重視された選考が行われていたなら、柔軟な対処が可能であり、2点のリードを活かし切れたことでしょう。

 結局は「リードを守り切るためのノウハウもなく、そのために必要はプレーの指示もできなかった」のです。これが日本サッカー界の現実と言えるでしょう。

 

 「運頼み」になれば、ベスト16が “関の山” です。ベスト16の『実力』が備わることで、ベスト8が現実味を帯びる訳ですから、方向性とアプローチが重要になります。

 自分たちが強みと思っている日本代表のパスワーク(=後方からパスをつないで崩す遅攻スタイル)をW杯出場国は脅威には感じていないです。この現状を受け入れ、どのような解決策を構築するのかが問われていると言えるのではないでしょうか。