EU 離脱方針の違いを理由にイギリスのボリス・ジョンソン外相が辞任、メイ政権の揺らぎが増す結果に

 NHK によりますと、イギリスのボリス・ジョンソン外相がブリグジットを巡る方針でメイ首相と対立したことを理由に辞任したとのことです。

 ジョンソン外相が辞任する前日にはデービス EU 離脱担当相も辞任しています。離脱強硬派の閣僚が2名辞任したことで、メイ政権の基盤が大きく揺らぐことは避けられないと言えるでしょう。

 

 イギリスのメイ首相は、先週、これまでの強硬な姿勢を修正し、EUとの協調を重視する「穏健な離脱」を目指す方針を打ち出しました。

 これに対し、メイ首相の方針に反発するデービスEU離脱担当相が8日に辞任したのに続き、9日、ジョンソン外相が辞任しました。

 ジョンソン外相は2016年に行われたEU離脱を問う国民投票の際に、離脱派の運動で中心的な役割を担った人物で、メイ首相に宛てた辞任の手紙の中で、「離脱は、希望に満ちたチャンスだったはずなのに、今ではその夢がついえつつある」と述べ、メイ首相の方針を批判しました。

 イギリスは「EU からの離脱」を掲げ、ブリグジットを実行しました。

 ところが、その後に行われた総選挙で与党・保守党は議席を大幅に減らす結果となり、メイ首相の政権基盤が盤石とは言えなくなりました。それにより、「親 EU」へと舵を切ったことで離脱強硬派の反発が起きたのです。

 イギリス政権の先行きに不透明感が増したと言えるでしょう。

 

親 EU へと日和ったことで、政権運営の迷走が始まる

 メイ首相は2017年に行った総選挙でブリグジットに向けた弾みを付けようとしたのでしょう。しかし、与党・保守党が議席を減らし、勢いを削がれる結果となりました。

 『離脱』の通告は行ったものの、メイ首相にとっては厳しい立場に置かれたことは否定できません。

  • 離脱を敢行:総選挙で支持を得たとは言えず、政権には逆風
  • 離脱条件を変化:「当初の方針と違う」との攻撃材料を与えてしまう

 メイ首相は離脱の従来方針を進めても、離脱条件を変更させても、批判を受けてしまう立場なのです。“レームダック” になりつつあると言えるでしょう。

 

離脱強硬派がメイ政権から抜け、“元の木網” に?

 8日と9日にメイ政権から離脱したのはデービス EU 離脱担当相とジョンソン外相です。両閣僚とも『EU からの離脱強硬派』であり、離脱に向けた動きが弱まることは避けられません。

 メイ首相は「離脱後も EU と強固な経済関係を維持する」との方針を示していますが、近すぎると「EU から離脱する意味はあったのか」と根本的な疑問が呈されることになります。

 EU の『規則』や『判例』がイギリスに導入されるようでは、離脱の意味がありません。また、単一市場において、EU 加入時と同じルールで運用しても同様です。

 そのため、ブリグジットに “グダグダ感” が漂い始めることは避けられないと言えるでしょう。

 

 EU は難民問題で緊張感が漂っていますし、ドイツも例外ではありません。イギリスはブリグジットで政権の屋台骨が揺らいでいるのです。

 「経済界寄り」の姿勢を強く示したことでメイ政権は与党・保守党からの突き上げを受けています。メイ首相が窮地を脱することができるのかに注目と言えるのではないでしょうか。