EV や HV の普及に官民が歩調を合わせることは良いが、肝心の発電方法はどうするのか?

 日経新聞によりますと、経産省と自動車メーカーによる『自動車新時代戦略会議』において「2050年までに世界で販売する日本製乗用車をすべて “電動車” にする」との目標を定めたとのことです。

 EV (電気自動車)や HV (ハイブリッド)にシフトすることはニーズもあるため、「将来を見越した経営判断」と言えるでしょう。しかし、肝心の「発電分野」が現状のままでは効果がないことを認識する必要があるはずです。

 

 経済産業省は24日、世界で販売する日本の乗用車を2050年までに全て電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの「電動車」にする目標を決めた。乗用車1台あたりの温暖化ガス排出量を10年比9割減らし、国際的な枠組み「パリ協定」の目標達成につなげる。達成に向け、次世代蓄電池の開発や車体軽量化などで官民が協力していくことも確認した。

 EV や HV はヨーロッパの自動車メーカーが「ディーゼル自動車の排ガス不正問題」を引き起こしたこともあり、追い風が強まることでしょう。

 そのため、車両が抱える課題を解決するために、官民が協調することは的確な判断と言えるはずです。ただ、EV や HV を普及するための課題は車両だけではないことを自覚しなければなりません。

 

火力発電が主体の現状では「温室効果ガス発生源の付け替え」に過ぎない

 “電動車” の割合が大きくなれば、車両から排出される温室効果ガスは減少することでしょう。しかし、ガソリンに代わる動力源である電気がどのような形で発電されているかによっては意味のないことが起きてしまうのです。

画像:電気自動車に対する風刺画

 上図はネットで話題となった風刺画ですが、EV や HV といった電動車の普及に対する強烈な皮肉が込められていると言えるでしょう。

 EV や HV の動力源である電気を火力発電所で発電すると、温室効果ガスの発生源を付け替えているという事態を招くだけなのです。温室効果ガスの排出量はそれほど変化しない訳ですから、発電方法の割合を見直さなければなりません。

 

「原子力発電所を再稼働させること」が『パリ協定』の目標達成には不可避

 『パリ協定』で定めた目標を正攻法で達成するには「原発の再稼働」は必須です。なぜなら、日本での発電方法の大部分は火力発電で担っているため、EV や HV の動力源を得るために温室効果ガスが排出されるという状況になるからです。

 ただ、再生可能エネルギーを推進する界隈やメディアが反発することが予想されます。そのため、反論する内容を用意しておく必要があります。

  • 再生エネ(太陽光・風力)で電力供給を賄うべき
    → 発電量の管理は不可能な上、蓄電池の開発にも目処が立っていない
  • ユーラシア大陸で発電した再生エネを送電網で日本に送るべき
    → 費用面と安全保障上の問題がある

 まず、再生可能エネルギーは “補助金ビジネス” であり、現時点で有力な発電方法ではありません。しかも、「蓄電池の容量」という点で基幹電源に名乗りを上げることは困難な状況です。

 孫正義氏が提唱する『アジア・スーパーグリッド構想』を応援する声もありますが、送電網の敷設費用に加え、エネルギー源を他国に握られることは安全保障における “致命的な弱点” となります。

 このような諸問題を踏まえると、『原発再稼働』は実行に移さなければならないことなのです。他に現実的で経済的な代替案がない訳ですから、止むを得ない状況と言えるでしょう。

 

 もっとも、この100年で地球温暖化によって上昇した気温差は1度にも達していません。ほとんどが都市化による『ヒートアイランド現象』なのです。

 そして、『パリ協定』を各国が着実に実行しても、下がる気温は 0.1 度にも達しないレベルです。まずは「効果が疑われる分野に大金をつぎ込むことに経済的合理性があるのか」というコンセンサスを得る必要があるはずです。

 「安定した電力供給をリーズナブルな価格で行う」ということをシビアに政策面に反映し、新電力の事業者にも要求することが経産省の役割と言えるのではないでしょうか。