ラオスのダム崩壊事故:アメリカから「手抜き工事」の声が出る中、韓国メディアは「メコン川の水資源問題が原因」と責任転嫁を始める

 韓国企業が建設したダムが崩壊する事故が発生し、ダム崩壊の原因特定が待たれるところです。

 その中で、ニューヨークタイムスが「手抜き工事が原因ではないか」と指摘する専門家やラオスの担当閣僚の声を報じています。一方で韓国メディアは「メコン川の開発問題が背後にある」と責任転嫁を図っており、この姿勢は厳しい批判を受けるべきものでしょう。

 

 On Friday, the Lao News Agency quoted Khammany Inthirath, the minister of energy and mines, as saying that what the agency called the "collapse" of the dam was caused by "substandard construction."

 Richard Meehan, a former dam builder and former adjunct professor at Stanford University's School of Engineering, said that the dam failure sounded to him like a case of "failure by internal erosion" caused by construction defects like inadequate foundation preparation, bad grouting, and high-risk design configurations.

 "These are of course all the more likely when the project is deeply profit-driven, geographically remote, and managed by multiple entities with conflicting interests, poor communications, and zero patience for what they take to be fussy details or delays," Mr. Meehan said in an email.

 

ラオスの担当大臣とアメリカの有識者は「手抜き工事」を指摘

 ニューヨークタイムズの記事で「手抜き工事」を指摘しているのは以下の2名です。

  • カムマニー・インティラート氏
    • ラオスのエネルギー資源大臣
    • ラオ・ニュースエージェンシーに「ダムは “基準以下の建設” によって “崩壊” した」と述べる
  • リチャード・メーハン氏
    • 元ダム建築家で、スタンダード大エンジニアスクールの元非常勤教授
    • 不十分な基礎の準備、悪質なグラウト、ハイリスクな構造設計のような建設的な問題で “内部侵食による崩壊” が起きたのではないか
    • こうした問題は利益重視、遠隔地、利害衝突、コミュニケーション不足、納期厳守などがあると起きやすい

 両者とも、「ダムそのものに問題があった」と指摘しています。メーハン氏は建設上の問題で「内部侵食が起き、ダムが崩壊した可能性がある」と述べています。

 設計に問題がなく、設計指示書のとおりに建設されていれば、崩壊まではしなかったでしょう。そのため、建設に深く携わった SK 建設の責任問題は避けられないと言えるでしょう。

 

「ダム崩壊は『メコン川の開発問題』が背景にある」とハンギョレ紙(韓国)が主張

 韓国のハンギョレ紙は「『メコン川の開発問題』があり、SK 建設の手抜き工事疑惑の問題だけではない」と擁護しています。ただ、この主張はダム崩壊とは無関係です。

 SK建設のラオスのセピエン-セナムノイダムの決壊は、単なる建設会社の手抜き工事疑惑の問題だけではない。世界で12番目に長い川を共有した大国中国と、残りの開発途上国間の協力は不在だった。生態系保護と開発論理の調和もなかった。韓国政府も対外経済協力基金を提供し、SK建設を支援したが、メコン川の環境保護と川を巡って繰り広げられている6カ家間の摩擦というさらに大きな絵を見ることはできなかった。

 メコン川流域で『水資源問題』が発生していることは事実です。しかし、メコン川の上流に位置する中国による治水政策とラオスで発生したダム崩壊事故は無関係です。

 SK 建設がダム工事を始めた時点で、『水資源問題』は起きていたのです。そのため、「流入量の見通しができず、ダム崩壊を防ぐことはできなかった」との主張は成り立ちません。

 ラオス当局の責任が皆無ということはありませんが、SK 建設の責任を転嫁するために『水資源問題』を引っ張り出すことは論外と言えるでしょう。

 

 ダムの越水が起きたのであれば、ダム機能は今も残っているはずです。それが損なわれたのですから、韓国側の責任問題は避けられません。

 西日本各地を襲った豪雨災害で日本のマスコミはダムを悪者にする論調を展開したのです。その直後に起きたダム崩壊事故なのですから、問題の原因特定と解決策まで継続して報道する日本のメディアがあっても良いと言えるのではないでしょうか。